その文章は、誰のものだったのか①
これは、
AI副業で人生を変えようとした人たちの物語です。
AIを使えば、文章は早く書ける。
noteも、Xも、商品づくりも、昔よりずっと始めやすくなりました。
でも、始めやすくなったからこそ、見えてしまうものがあります。
・稼ぎたい気持ち。
・認められたい気持ち。
・誰かの成功を、素直に喜べない気持ち。
・家族のためと言いながら、本当は自分が救われたかった気持ち。
この小説は、AI副業の成功物語ではありません。
でも、AI副業を否定する物語でもありません。
うまくいく人がいます。
努力しても報われない人がいます。
誰かの不安を商品にする人がいます。
それでも、書き続けることで、自分の言葉を取り戻していく人がいます。
AIが書いた文章は、誰のものなのか。
そして、誰かの心を少しでも動かした文章は、もう書いた人だけのものではないのか。
そんなことを考えながら、書いていきます。
スマホで、
少しずつ読んでもらえたらうれしいです。
▼筆者紹介
第1章 月5万円なら、誰でも目指せます
*
給料明細は、いつも少しだけ冷たかった。
金額の問題だけではない。
いや、金額の問題でもある。
智也は毎月、
その二つを分けて考えようとして、結局いつも失敗した。
会社のパソコンで開いた給与明細のPDFには、先月とほとんど変わらない数字が並んでいた。

基本給。
役職手当。
通勤手当。
控除。
所得税。
住民税。
社会保険料。
どれも見慣れた言葉だった。
見慣れているのに、毎月少しだけ傷つく。
(今月も、こんなものか)
そう思ったあとで、智也はすぐにその言葉を打ち消した。
こんなもの、というほど悪くはない。
生活できないわけではない。
妻がいる。
娘がいる。
賃貸ではあるが、住む部屋もある。
仕事もある。
不幸ではない。
ただ、未来が少しずつ細くなっていく感じがした。
昼休みの事務所には、電子レンジの音が響いていた。
誰かが温めているコンビニ弁当の匂いが、コピー機の熱っぽいにおいと混ざっている。
智也は自分の席で、
アルミのふたを半分だけ開けたカップ味噌汁に湯を注いだ。
おにぎりは二つ。
鮭と昆布。
いつもと同じだった。
いつもと同じ、ということに安心している自分と、いつもと同じであることに少しずつ削られている自分がいた。
「またガソリン上がるらしいですよ」
隣の席の後輩が、スマホを見ながら言った。
智也は味噌汁のふたを押さえながら、軽く笑った。
「もう何でも上がるな」
「給料も上がってほしいっすね」
「ほんとそれ」
会話はそこで終わった。
それ以上深く話しても、
どうにもならないことを、二人とも知っていた。
物価が上がる。
税金が引かれる。
保険料も引かれる。
娘の習い事の月謝がある。
車検がある。
家電はいつか壊れる。
歯医者にも行かなければならない。
年に何度か、思っていたより大きな出費が来る。
そのたびに、智也は思う。
ちゃんと働いているのに。
ちゃんと働いているのに、なぜこんなに、先のことを考えるだけで息が詰まるのだろう。
給与明細のPDFを閉じる。
閉じたところで、数字が消えるわけではない。
頭の中に、手取り額だけが薄く残る。
まるで、誰かが鉛筆で書いた数字を、消しゴムで雑にこすった後のように。
完全には消えない。
*
その日の帰り道、智也はスーパーに寄った。
奈緒からLINEが来ていた。
牛乳
卵
食パン
できればヨーグルト
「できれば」と書かれているものほど、
買わなかったときに罪悪感が残る。
智也は店内の明るすぎる照明の下で、卵の値段を見た。
以前より高い。
高いことにはもう慣れたつもりだったのに、毎回ちゃんと驚いてしまう。
十個入りのパックを手に取って、少しだけ安い方に戻した。
牛乳をかごに入れる。
食パンを選ぶ。
ヨーグルトの前で少し迷って、結局入れた。
家族のため。
そう思うと、
かごの重さが少しだけ正しいものに変わった気がした。
帰宅すると、
娘の美優がリビングの床にランドセルを投げ出していた。
「ただいま」
「おかえりー」
美優はタブレットを見たまま言った。
小学五年生になってから、返事に少しだけ大人っぽい雑さが混ざるようになった。
奈緒はキッチンでフライパンを振っていた。
油の音がして、しょうが焼きの匂いがした。
「買ってきてくれた?」
「うん。ヨーグルトも買った」
「助かる」
奈緒は振り返らずに言った。
助かる。
その言葉は、会社で聞く「助かります」と似ているのに、少しだけ違った。
会社で言われるそれは、便利な人に渡される紙コップみたいに軽い。
奈緒の「助かる」には、生活の重さがあった。
智也は牛乳を冷蔵庫に入れた。
冷蔵庫の中は、思っていたより詰まっていなかった。
半分ほど使われた味噌。
タッパーに入った昨日の煮物。
娘の飲みかけのジュース。
値引きシールのついた鶏肉。
生活は、いつも冷蔵庫の中に出る。
そう思って、智也はすぐにその考えをやめた。
自分が急に小説家みたいなことを考えたのが、少し気持ち悪かった。
夕飯のとき、テレビでは値上げのニュースをやっていた。
ガソリン。
電気代。
食品。
外食チェーン。
学用品。
美優はしょうが焼きの端を箸で切りながら、学校であった話をしていた。
「今日さ、委員会でさ、六年生がめっちゃ怒ってて」
「何に?」
智也は聞いた。
聞いたつもりだった。
でもテレビから流れる「家計への影響」という言葉が、耳の端に残った。
家計。
その二文字は、いつも少しだけ人を黙らせる。
奈緒が味噌汁をよそいながら、画面を一度だけ見た。
何も言わなかった。
智也も何も言わなかった。
言わないことが、夫婦の会話を成立させる日もある。
食器を洗い終えたあと、智也はリビングのソファに座った。
美優は風呂に入っている。
奈緒は洗濯物を畳んでいる。
テレビはついたままだが、誰も真剣には見ていない。
智也はスマホを開いた。
ニュースアプリ。
X。
YouTube。
またX。
自分が何を見たいのかもわからないまま、親指だけが動いていく。
そのとき、
画面に短い動画が流れてきた。
AI副業で月5万円を目指す方法
白いテロップ。
明るいBGM。
少し早口の男性の声。
「今、会社員の方でも、主婦の方でも、AIを使って副業を始める人が増えています」
智也は一度、指を止めた。
怪しい。
最初に思ったのは、それだった。
怪しいと思えたことで、智也は少し安心した。
自分はまだ、こういうものをすぐに信じる側ではない。
そのまま、最後まで見た。
「文章が苦手でも大丈夫です」
「ChatGPTを使えば、記事作成の時間を大幅に短縮できます」
「noteやブログ、Xを組み合わせることで、初心者でも収益化を目指せます」
「まずは月5万円」
「月5万円あれば、家計の余裕はかなり変わります」
月5万円。
その言葉だけ、少し遅れて胸の中に残った。
月5万円あれば、何が変わるだろう。
娘の習い事を一つ増やせる。
外食のときに値段を見てから決める回数が減る。
奈緒がスーパーでヨーグルトに「できれば」と書かなくて済むかもしれない。
車検の月に、少しだけ呼吸がしやすくなるかもしれない。
たった5万円。
でも、毎月5万円。
智也は、動画のコメント欄を開いた。
私も始めます!
初月で収益出ました
会社員でもできるのありがたい
ChatGPTすごすぎる
もっと早く知りたかった
どれも本当かどうかわからない。
わからないのに、智也はそのコメントを一つずつ読んだ。
「何見てるの?」
奈緒が洗濯物を畳みながら聞いた。
智也は少しだけスマホを伏せた。
「いや、なんか、副業のやつ」
「副業?」
「AI使って、記事書いたりするらしい」
「へえ」
奈緒の「へえ」には、興味と警戒が半分ずつ入っていた。
智也は、すぐに説明しようとした。
怪しいものではない。
今はそういう時代らしい。
AIで文章を作って、noteとかに投稿して、そこから収益化できるらしい。
月5万円くらいなら、初心者でも目指せるらしい。
そう言いたかった。
でも、自分で口にすると、急に怪しく聞こえた。
だから智也は、
「まあ、見るだけ」
と言った。
奈緒は「ふうん」と言って、タオルの端を揃えた。
その夜、智也は布団の中でもう一度その動画を見た。
音量は最小にしていた。
奈緒は隣で寝ている。
部屋は暗く、スマホの光だけが智也の顔に当たっていた。
動画の男性は、
同じことを何度も言っていた。
「AIを使う側に回りましょう」
「行動した人から変わります」
「今ならまだ間に合います」
今ならまだ間に合います。
その言葉に、智也は少しだけ腹が立った。
何に間に合うのか。
誰が決めた締切なのか。
急かされているみたいで嫌だった。
それでも、保存した。
保存したあと、自分で少し恥ずかしくなった。
(別に、やるって決めたわけじゃない)
そう思いながら、関連動画をもう一本開いた。
その動画のタイトルは、さらに直接的だった。
普通の会社員がAI副業で月5万円を達成するまでにやったこと
普通の会社員。
その言葉が、智也のことを指しているように見えた。
もちろん、そんなわけはない。
動画を作った人は、智也のことなど知らない。
それでも、画面の向こうからまっすぐ呼ばれたような気がした。
普通の会社員。
月5万円。
AI副業。
その三つの言葉が、布団の中の暗さに、ぽつぽつと浮かんだ。
*
翌日、智也は会社で何度か「AI副業」と検索した。
検索窓にその言葉を打つだけで、誰かに見られているような気がした。
会社のパソコンではなく、自分のスマホで調べた。
「AI副業 初心者」
「ChatGPT note 収益化」
「note 有料記事 売れる」
「AI副業 怪しい」
怪しい、も検索した。
怪しいと検索することで、自分がまだ慎重な人間でいられる気がした。
昼休み、智也はコンビニのカフェラテを飲みながら、いくつかの記事を読んだ。
どの記事も似たようなことを書いていた。
まずはテーマを決める。
読者の悩みを考える。
AIに構成を出してもらう。
自分の体験を入れる。
noteやXで発信する。
継続する。
継続する。
その言葉は、いつも最後に出てくる。
智也は、継続が苦手だった。
いや、仕事は続いている。
結婚生活も続いている。
父親も続けている。
毎月の支払いも続けている。
でも、自分のために始めたものは、あまり続いた記憶がない。
英会話アプリ。
ランニング。
読書記録。
朝活。
家計簿。
資格の勉強。
最初の数日は、いつも少しだけ生まれ変わった気がする。
そのあと、元の自分に戻る。
戻るというより、落ちる。
でも、AI副業ならどうだろう。
文章をAIが書いてくれるなら。
時間が短くて済むなら。
自分のような普通の会社員でもできるなら。
(家族のために、何かできるかもしれない)
そう思うと、焦りに少しだけ名前がついた気がした。
午後の会議で、智也はほとんど話さなかった。
会議室の長机には、紙の資料とペットボトルのお茶が並んでいた。
上司が売上目標について話している。
誰かが相づちを打つ。
誰かがメモを取る。
智也もメモを取っているふりをしながら、ノートの端に小さく書いた。
AI
note
月5万円
その三つの言葉は、
会議の内容よりも少しだけ濃く見えた。
智也はすぐに、そのページをめくった。
誰にも見られていないのに、見られたような気がした。
その日の帰り、智也は駅前のドラッグストアでトイレットペーパーを買った。
十二ロール入り。
かさばる袋を片手に持ちながら、スマホでまたAI副業の記事を読んだ。
そこには、こんなことが書かれていた。
まずはChatGPTに「note記事を書いて」と頼んでみましょう。
完璧を目指す必要はありません。最初の一歩を踏み出すことが大切です。
最初の一歩。
便利な言葉だと思った。
便利すぎて、少し信用できなかった。
それでも、家に帰ったら一度だけ試してみようと思った。
一度だけ。
その言い方が、自分に対する言い訳としてちょうどよかった。
*
夜、家族が寝たあと、
智也はダイニングテーブルにノートパソコンを置いた。
食卓には、昼に娘が使った消しゴムのかすが少し残っていた。
奈緒が片づけ忘れた学校のプリント。
水筒のパッキン。
智也の会社のボールペン。
生活の上に、パソコンを開く。
それだけで、少し悪いことをしているような気がした。
ブラウザを開く。
検索窓に「ChatGPT」と打つ。

ページが開くまでの数秒、智也はなぜか背筋を伸ばしていた。
アカウントを作る。
ログインする。
白い画面が表示される。
入力欄がある。
何でも聞いてください、というような顔をしている。
智也は、そこに何を入れればいいのかわからなかった。
検索窓とは違う。
検索なら、言葉を投げれば結果が返ってくる。
でもこれは、誰かに頼む感じがした。
誰か。
いや、誰でもないもの。
智也は、キーボードに指を置いた。
「お願いします」と打ちそうになって、消した。
お願いします、は変だと思った。
相手は人間ではない。
でも、何もつけずに命令するのも、少し失礼な気がした。
智也はしばらく迷ってから、こう入力した。
AI副業について、note初心者向けの記事を書いてください。
会社員でも始めやすく、月5万円を目指せる内容にしてください。
送信する前に、もう一度読み返した。
月5万円。
その文字を見ると、少しだけ胸が熱くなった。
智也は、送信ボタンを押した。
数秒後、画面の中に文章が流れ始めた。
AI副業は、特別なスキルがなくても始められる新しい働き方です。
智也は、息を止めた。
文章は止まらなかった。
会社員として働きながらでも、スキマ時間を使ってnote記事を作成し、少しずつ収益化を目指すことができます。
見出しが出る。
本文が出る。
箇条書きが出る。
最後に、前向きなまとめまで出る。
智也が一時間かけても書けないような文章が、数十秒で並んでいった。
読みやすかった。
やさしかった。
整っていた。
そして、少し怖かった。
画面の中には、智也が言いたかったようなことが、智也が言えなかった速さで並んでいった。
すごい。
そう思った。
怖い。
そうも思った。
でも、その二つの感情のうち、先に手を伸ばしたのは「すごい」の方だった。
智也は、生成された文章を最初から読み返した。
何度も頷いた。
自分が書いたわけではない文章に、自分で納得していた。
読み終えたあと、智也はしばらく画面を見ていた。
その文章は、どこにも智也の生活を書いていなかった。
給料明細の冷たさも。
スーパーの卵の値段も。
奈緒の「できれば」も。
娘のランドセルも。
布団の中で動画を保存したときの恥ずかしさも。
何も入っていない。
でも、記事としては成立していた。
むしろ、その方が読みやすかった。
誰にも嫌われなさそうだった。
智也は、文章の冒頭をコピーした。
それから、noteのアカウント作成ページを開いた。
まだ、やると決めたわけではない。
そう思いながら、メールアドレスを入力した。
その夜、智也の中で何かが始まった。
大きな決意ではなかった。
人生を変える覚悟でもなかった。
熱い夢でもなかった。
ただ、画面の中に、自分にもできるかもしれない形をした文章があった。
それだけで、少しだけ眠るのが惜しくなった。
名前を決めるところで、
智也は思ったより長く止まった。
本名でやるつもりはなかった。
会社の人に見つかるかもしれない。
奈緒に見られるかもしれない。
娘の友達の親に見つかるかもしれない。
そんな可能性はほとんどないとわかっていても、一度考え始めると、どれも急に現実味を持った。
匿名にしたい。
でも、あまりにも匿名らしい名前にすると、自分が本気ではないような気もした。
「会社員トモ」
「AI副業チャレンジ」
「月5万円を目指すパパ」
どれも違う。
違う、というほど自分の中に正解があるわけでもないのに、どれも違った。
智也は何度か入力して、消した。
結局、名前はシンプルにした。
トモヤ|AI副業を始めた会社員
本名ではない。
でも、完全な嘘でもない。
その中途半端さが、今の智也にはちょうどよかった。
プロフィール欄には、最初こう書いた。
会社員をしながら、AI副業で月5万円を目指しています。
短い。
悪くはない。
でも、少し寂しい。
智也はChatGPTの画面に戻り、こう入力した。
noteのプロフィール文を作ってください。
普通の会社員がAI副業で月5万円を目指す内容です。
初心者にも親しみやすい感じでお願いします。
お願いします、は今度は消さなかった。
数秒後、返事が出た。
はじめまして。普通の会社員として働きながら、AIを活用した副業に挑戦しています。
このnoteでは、AI副業初心者が月5万円を目指すまでのリアルな過程を発信していきます。
失敗や気づきも含めて、同じように一歩踏み出したい方の参考になればうれしいです。
智也は、何度も読んだ。
よかった。
とてもよかった。
自分が思っているより、自分はちゃんとしている人間のように見えた。
そのことに、少し安心した。
けれど、同時に少しだけ居心地が悪かった。
リアルな過程。
失敗や気づき。
一歩踏み出したい方の参考。
まだ何もしていない。
何もしていないのに、すでに何かを乗り越えた人みたいな文章になっている。
智也は「月5万円を目指すまでのリアルな過程」を、少しだけ変えた。
月5万円を目指すまでの記録
それでも、まだ少し立派だった。
でも、これ以上どう直せばいいかわからなかった。
智也はプロフィールを保存した。
保存しました、という表示が出た。
それだけで、少しだけ自分の人生にタイトルがついたような気がした。
アイコン画像も必要だった。
初期アイコンのままだと、誰にも見つけてもらえない気がした。
かといって、自分の写真を使う気にはなれなかった。
智也は無料の画像サイトを見た。
パソコン。
ノート。
コーヒー。
観葉植物。
朝日。
デスク。
笑顔のビジネスマン。
どれも、どこかで見たことがあった。
どこかで見たことがあるものを選ぼうとしている自分が、少し嫌だった。
でも、どこかで見たことがあるものの方が安心できた。
結局、ノートパソコンとコーヒーが写った画像を選んだ。
明るい木目の机。
白いマグカップ。
きれいに整ったデスク。
智也の食卓には、娘の消しゴムのかすが残っている。
でも、アイコンの中の机はきれいだった。
それでいいと思った。
最初から全部を本当で始める必要はない。
そんな言葉を、誰に言われたわけでもないのに、智也は自分に許可のように渡した。
*
最初の記事のタイトルは、なかなか決まらなかった。
ChatGPTは、いくつも候補を出してくれた。
AI副業初心者が最初に知っておきたいこと
会社員でもできるAI副業の始め方
月5万円を目指すAI副業の第一歩
AI副業は本当に初心者でもできるのか
まずは小さく始めるAI副業
どれも悪くない。
悪くないのに、どれも少し弱い気がした。
智也は、YouTubeで見た言葉を思い出した。
月5万円。
普通の会社員。
誰でも目指せる。
その三つを組み合わせると、急に記事らしくなった。
タイトル欄に入力する。
月5万円なら、誰でも目指せます
少し強い。
言い切りすぎている。
智也はすぐに不安になった。
誰でも、は言いすぎではないか。
まだ自分は1円も稼いでいない。
目指せます、という言葉なら嘘ではないのか。
目指すだけなら、誰でもできる。
いや、それは言い逃れみたいだ。
智也はタイトルを見つめた。
消そうと思った。
でも、消さなかった。
このタイトルの方が読まれそうだった。
そう思った自分を、智也は少しだけ見ないふりをした。
本文は、AIが作った文章をもとにした。
見出しを整えた。
少しだけ言葉を変えた。
「会社員」を「普通の会社員」にした。
「副業初心者」を「これから始める人」にした。
自分の体験も入れようと思った。
でも、どこまで書けばいいのかわからなかった。
給料明細のこと。
スーパーで卵の値段を見たこと。
奈緒の「できれば」。
布団の中で動画を保存したときの恥ずかしさ。
それらを書こうとすると、急に文章が重くなる気がした。
AI副業の記事を読みに来る人は、そんな話を求めていないのではないか。
もっと前向きで、明るくて、役に立つことを求めているのではないか。
智也は、自分の生活の部分を消した。
代わりに、こう書いた。
物価高や将来への不安がある中で、会社員として働きながら収入の柱を増やしたいと考える人は多いと思います。
正しい。
とても正しい。
でも、正しすぎて、自分の体温が抜けたような気がした。
それでも記事としては、よくなった。
読みやすくなった。
誰にも嫌われなさそうになった。
記事の最後は、こう締めた。
AI副業は、特別な人だけのものではありません。
まずは小さく一歩を踏み出すことが大切です。
私も今日から、月5万円を目指して記録を続けていきます。
智也はその三行を読み返した。
きれいだった。
きれいすぎるくらいだった。
(私も今日から)
その言葉に、少しだけ胸が熱くなった。
今日から。
自分は今日から何かを始める人間になったのだ。
公開ボタンは、思っていたより青かった。
青いボタンの上に、白い文字で「公開」と書かれている。
押せば、世の中に出る。
世の中、と言っても、最初は誰も読まないかもしれない。
いや、たぶん読まない。
でも、読まれないとしても、公開するということは、非公開とは違う。
自分の部屋の中で思っているだけではなくなる。
智也は一度、トイレに行った。
用を足したかったわけではない。
トイレの鏡に、少し眠そうな自分の顔が映っていた。
三十五歳。
普通の会社員。
夫。
父親。
そして今日から、AI副業を始める人。
そう思った瞬間、自分で少し笑いそうになった。
恥ずかしかった。
でも、悪くなかった。
食卓に戻ると、パソコンの画面はそのままだった。
公開ボタンも、そのままだった。
当たり前なのに、少し安心した。
智也は椅子に座った。
深呼吸をした。
クリックした。
公開ボタンを押した瞬間、何かが始まると思っていた。
実際には、何も始まらなかった。
画面はさっきと同じ明るさで、部屋も、食卓も、洗濯機の音も、そのままだった。
記事が公開されました。
そう表示されただけだった。
智也は、自分の記事を開いた。
タイトルが表示されている。
月5万円なら、誰でも目指せます
その下に、自分の名前がある。
トモヤ|AI副業を始めた会社員
本文を読む。
読みやすい。
見出しも整っている。
一文も長すぎない。
最後まで、ちゃんと前向きだった。
智也は少しだけ安心した。
それから、誤字を一つ見つけた。
「収益化」が「収益か」になっていた。
慌てて編集画面に戻り、直した。
また公開した。
また読み返した。
今度は誤字がなかった。
反応は、なかった。
五分。
十分。
十五分。
何も起きない。
智也は記事を開いたり、閉じたりした。
自分で自分の記事を読んでいるだけなのに、アクセス数が増えたような気がして、少しむなしくなった。
そもそも、誰が読むのだろう。
フォロワーはゼロ。
記事も一本。
noteの世界に、いきなり放り込まれた小さな紙切れみたいなものだ。
智也はXにも投稿しようか迷った。
でも、Xのアカウントも本名寄りだった。
会社の人も少しつながっている。
そこに出す勇気はなかった。
noteのタグを見直した。
#AI副業
#ChatGPT
#note初心者
#副業
#会社員
タグをつけると、誰かに見つけてもらえる可能性があるらしい。
可能性。
この夜の智也は、その言葉だけでしばらく待てた。
奈緒が寝室から出てきた。
「まだ起きてるの?」
「うん。ちょっとだけ」
「明日も仕事でしょ」
「もう寝る」
智也はそう言いながら、画面を閉じなかった。
奈緒は食卓の上に置かれたパソコンを見て、それから智也を見た。
「記事、書いてるの?」
「うん。まあ、試しに」
「出したの?」
「出した」
奈緒は少しだけ目を丸くした。
「へえ。すごいじゃん」
その言葉は、軽かった。
でも智也には、思っていたより深く入ってきた。
すごいじゃん。
奈緒はたぶん、本当に深い意味では言っていない。
夜遅くまで何かをやって、公開までしたことに対して、軽くそう言っただけだ。
それでも智也は、その言葉を受け取った。
会社では誰も言わない言葉だった。
「まあ、まだ誰も読んでないけど」
智也は笑った。
「最初はそんなもんじゃない?」
奈緒はそう言って、水を一杯飲んだ。
「寝なよ」
「うん」
奈緒が寝室に戻ったあと、智也はまた画面を見た。
まだ反応はなかった。
それでも、さっきより少しだけ待てた。
*
最初のスキがついたのは、
公開してから四十二分後だった。
通知欄に、赤い丸がついていた。
智也は一瞬、何が起きたのかわからなかった。
画面の右上。
赤い丸。
数字は、1。
胸の奥が、ほんの少し跳ねた。
通知を開く。
知らない名前のアカウントが、記事にスキを押していた。
アイコンは花の写真だった。
プロフィールには、こう書いてあった。
AI勉強中|副業初心者|毎日少しずつ
智也は、そのプロフィールを三回読んだ。
知らない人だった。
知らない人なのに、自分と同じような言葉を持っていた。
AI。
副業。
初心者。
毎日少しずつ。
その人が、智也の記事にスキを押した。
ただそれだけのことだった。
それだけのことなのに、智也はしばらく画面を見ていた。
すぐに二つ目がついた。
次は、ビジネス系のアカウントだった。
プロフィールには「AI活用で自由な働き方」と書かれていた。
フォロワーは二千人以上いた。
智也はそのアカウントの記事を開いた。
たくさんの人に読まれていた。
有料記事もあった。
コメントもついていた。
自分とは違う世界の人のように見えた。
その人が、たぶん何気なく、智也の記事にスキを押した。
もしかしたら自動的に押しているのかもしれない。
営業目的かもしれない。
本当に読んでいないかもしれない。
それでも、数字は2になった。
智也は、素直に嬉しかった。
そのあと、スキはしばらく増えなかった。
智也は何度も画面を更新した。
更新しても変わらない。
トイレに行く前に見る。
歯を磨く前に見る。
寝室に入る前に見る。
奈緒はもう寝ていた。
美優も寝ていた。
部屋の明かりを消して、智也は布団に入った。
スマホを開く。

スキは、4になっていた。
いつの間にか増えていた。
智也は、暗い布団の中で小さく息を吐いた。
4。
たった4。
でも、ゼロではない。
ゼロではないということが、その夜は思ったより大きかった。
眠ろうとして、またスマホを開く。
スキは、5。
また閉じる。
三分後に開く。
5のまま。
また閉じる。
五分後に開く。
6。
智也は、布団の中で声を出さずに笑った。
自分でも少し気持ち悪いと思った。
でも、やめられなかった。
通知欄の赤い丸がつくたびに、胸の奥にある薄い板のようなものが、一枚ずつ補強されていく気がした。
会社で誰にも褒められなかった一日。
会議で何も発言しなかった一日。
給料明細を見て、少しだけ未来が細くなった一日。
その一日を、知らない誰かが少しだけ肯定してくれているような気がした。
もちろん、そんな大げさなものではない。
スキを押した人たちは、そこまで考えていない。
わかっている。
わかっていても、智也にはそう見えた。
夜中の一時前、スキは十二個で止まった。
十二。
智也はその数字を、何度も見た。
十でもなく、十一でもなく、十二。
何の意味もない数字なのに、その夜の智也には、妙にしっくりきた。
十二人が、自分の記事を見た。
いや、読んだかどうかはわからない。
でも、少なくとも画面には触れた。
自分の書いた文章に。
自分の名前がついた文章に。
智也は、自分の記事をもう一度開いた。
月5万円なら、誰でも目指せます
タイトルは、やはり少し強かった。
でも、悪くない。
本文を読む。
AI副業は、特別な人だけのものではありません。
まずは小さく一歩を踏み出すことが大切です。
私も今日から、月5万円を目指して記録を続けていきます。
読みやすかった。
やさしかった。
前向きだった。
誰にも嫌われない文章だった。
そして、自分が書いたものではないような気がした。
智也は、スマホを胸の上に置いた。
天井は暗く、何も見えなかった。
奈緒の寝息が、隣から静かに聞こえていた。
記事を書いた。
公開した。
スキがついた。
たったそれだけのことだった。
月5万円には、もちろん届いていない。
収益はゼロ。
フォロワーもほとんどいない。
明日になれば、この高揚感も少し薄れるのかもしれない。
それでも、智也はその夜、少しだけよく眠れた。
自分の人生が大きく変わったわけではない。
ただ、変わるかもしれないと思える場所が、画面の中にひとつできた。
そのことが、思っていたよりもずっと、智也を眠らせた。
▼筆者紹介
▼有料記事
▼第2章 成功している人は、ちゃんと見ている
このコラムはGPT-5.5で書きました【執筆時間:8分50秒】
◾️アトカのプロフィール記事
-AI活用し、時間を掛けずに記事を書く、稼ぐ。-
このnoteでは毎月50〜200記事、最終的には10,000記事をChatGPTで書き、収益化し、そのノウハウを紹介していきます。誰でも(小学生でも)AIを活用して、お小遣いを稼ぎ、副業が成功するよう、情報発信していきます。↓↓私も執筆協力した一冊はこちら↓↓
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AI×noteで“無理なく続く副業”のコツを発信しています。noteだけでは書ききれない「共感したツイート」「リアルな気づき」「10分の積み上げログ」なども更新中です。フォローしてもらえると嬉しいです。
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はじめまして、アトカです✍️
— アトカ|AI副業×noteライター (@aicolumnwriter) August 26, 2025
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