見出し画像

ゼラニウム団子耳「気合い入れてこ!」 | せりふ三題噺

入学式の朝も、失恋の夜も、手術室へ向かう廊下でも、祖母は同じ言葉で私の背中を叩いた。

小さな掌なのに、痛いくらいだった。

その声が春に消えた。

初めての面接の朝。線香の匂いの残る鏡の前、うまく笑えない。

深く息を吸い、自分の背中に手を回す。

届かない分は、声で叩く。

「気合い入れてこ!」

(138文字)

お読みいただきありがとうございます

いいおばあちゃんだったんですね。祖母の記憶はあまり残ってないな…

上記企画に参加させていただきました
※セリフのみでの参加となります

おまけ

一筋の煙、まっすぐに
朝の光を映す鏡
花びらと新しいパンプス
誰もいない縁側