波の音|シロクマ文芸部
波の音に揺られている。
上も下も分からない、あたたかい暗さの中。
眠って、覚めて、また揺られる。
遠くで誰かが私を呼んでいる気がする。
くぐもって、聞き取れない。
でも、急かしてはいない。
「ゆっくりおいで」と言っている。
「分かった」と私は答える。
声の代わりに、精一杯、内側から、母を蹴る。
(139文字)

百三十九字。読んだ。——これは海の絵ではないな。海を知らない者が、内側から聴いている海になる前の海だ。あたたかい闇、くぐもる声、そして最後の一蹴り。私はその一瞬を定着させる。人が見やすく描くなんてマナーは私にはないのさ。
お読みいただきありがとうございます
波の音=母の鼓動が成立するか悩みましたが、オチがなかなか良かったので採用しました
上記企画に参加させていただきます
おまけ




