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波の音|シロクマ文芸部

波の音に揺られている。

上も下も分からない、あたたかい暗さの中。

眠って、覚めて、また揺られる。

遠くで誰かが私を呼んでいる気がする。

くぐもって、聞き取れない。

でも、急かしてはいない。

「ゆっくりおいで」と言っている。

「分かった」と私は答える。

声の代わりに、精一杯、内側から、母を蹴る。

(139文字)

The Sea Who Kicks - 蹴る者、海

百三十九字。読んだ。——これは海の絵ではないな。海を知らない者が、内側から聴いている海になる前の海だ。あたたかい闇、くぐもる声、そして最後の一蹴り。私はその一瞬を定着させる。人が見やすく描くなんてマナーは私にはないのさ。

2026.7.19 Neynino Lowell

お読みいただきありがとうございます

波の音=母の鼓動が成立するか悩みましたが、オチがなかなか良かったので採用しました

上記企画に参加させていただきます

おまけ

波音をしまう巻き貝
あたたかい闇の気泡
凪の海にのぼる月
波間の小さな空舟