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「雨の日には」|#青ブラ文学部

[2660文字/1分間に400文字読めるとして、7分あれば読めます]
雨の音を聞きながら味わう、親子の修復と再生の物語

瓦を打つ雨が、ぺたぺたと湿った音を立てていた。防水工事を生業にしていると、雨の音を聞き分けられるようになる。今日の雨は執拗だ。浸透する意志を持っているような降り方だった。

私、桐生 真由きりゅう まゆは「珈琲時間」の木製ドアを押し開けた。古い真鍮の取っ手が、湿気で冷たい。店内にはビル・エヴァンスのピアノが静かに流れている。

「桐生さんですね。雨の中、すみません」

カウンターに立っていた女性が、小さく会釈した。新井 由香里あらい ゆかりと名乗った。三十代前半だろうか。きちんとした身なりだが、どこか緊張している。

「二階に雨漏りが……。見ていただけますか」

二階への階段は住宅部分への入口で、壁の雨染みは確かに深刻だった。私は壁を軽く叩いた。湿った音が返ってくる。

「いつ頃からですか」

「三年前から少しずつ、だそうです」

(だそうです?)

その由香里さんの堅い声に、何か引っ掛かりを感じた。まるで他人事のような口ぶりだった。

屋根裏を確認すると、瓦の隙間から雨水が侵入していた。防水シートの劣化が原因だ。だが、雨染みの広がり方を見ると、単純な屋根からの浸水だけではない。

「壁の内部結露も併発していますね。湿気が構造材を傷めている可能性があります」

私は懐中電灯で壁の隙間を照らした。木材の一部が黒ずんでいる。

「構造については、建築士の方に相談していただく必要がありますが、防水処理は急いだ方がいいでしょう」

「そうなんですか……」

彼女の表情が曇った。


一階に戻ると、店主が奥から出てきていた。六十代後半の男性で、由香里さんとは目を合わせない。

「見積もりは、どのくらいになりそうですか」

「屋根の防水工事と壁の湿気対策で、概算ですが……」

私が金額を提示すると、店主の顔は青ざめた。

「そんなに……」

「私が半分出します」

由香里さんが口を開いた。店主は振り返った。

「お前に頼るわけには」

「お母さんの店でもあるから」

ビル・エヴァンスが「Waltz for Debby」を奏で始めると、会話が一瞬止まった。

「母さんが好きだった曲ね」

由香里さんがつぶやいた。店主の手が、かすかに震えた。

私は自分のことを思い出していた。三年前、父の工務店を継ぐか継がないかで大喧嘩をした時のことを。結局私は防水工事の専門技術を身につけて独立した。父とはそれ以来、ほとんど口をきいていない。

「お二人は……」 思わず口に出かけて、やめた。聞いてはいけないことだった。


翌日、私は再び店を訪れた。工事の段取りを相談するためだ。由香里さんだけがいた。

「お父様は?」

「買い出しに」

由香里さんは苦笑した。

「正直、ここに来るのも躊躇したんです。三年間、一度も帰ってこなかったから」

「何かあったんですか」

由香里さんはコーヒーを淹れながら答えた。

「母が亡くなった時、父は店を畳むって言っていました。思い出が辛すぎるって。でも私は続けてほしかった。母がこの店をどれだけ愛していたか知ってるから」

湯気が立ち上る。

「それで大喧嘩になって。父は『お前には分からない』って言って。私も『逃げてるだけじゃない』って言い返して」

彼女の手が少し震えていた。

「三年間、父は一人でこの店を続けてたのね。母の思い出と一緒に」

私は自分の父のことを考えていた。頑固で不器用で、でも仕事に対しては誰より真面目だった。

「工事の間、営業は続けられますか? いろいろ不便があるとは思いますが……」

「ええ。父に聞いてみます」

そのとき、店主が戻ってきた。買い物袋を抱えて、二人の様子を見ている。

「桐生さん、工事の件ですが……」

私は工程表を広げた。説明しながら、二人の距離を測っていた。

「防水シートの張り替えと、壁内部の湿気対策を並行して進めます。一週間ほどお時間をいただきますが」

「一週間……」

店主が呟いた。

「屋根の工事だと、結構音が出ますし、お客様への説明も必要になりますね」

私が付け加えると、店主は頷いた。

「その間、由香里がいてくれるなら助かる。一人じゃ、お客さんに気を遣わせちまう」

由香里さんの口元が緩んだ。

「うん。いるよ、お父さん」


工事が始まった。屋根に上がって防水シートを剥がしていると、下から父娘の会話が聞こえてくる。

「豆の挽き方、変わったのね」

「母さんのやり方だと、どうしても同じ味にならなくて」

「そっか。私、お母さんのコーヒーの淹れ方、教わってないや」

「今度、教えるよ」

私は手を止めて、空を見上げた。雲の切れ間から、薄日が差している。

三日目の夕方、工事を終えて片付けをしていると、由香里さんがコーヒーを持ってきてくれた。

「お疲れさまです」

「ありがとうございます」

私は一口飲んで、驚いた。

「美味しい」

「父に教わったの。昨日」

彼女は嬉しそうだった。

「桐生さんは、実家のお仕事、継がれたんですか?」

私の会社名からそう思ったのだろう。でも、私は首を振った。

「父は大工でしたが、私は防水専門で独立しました。考え方の違いで、ちょっと」

「そうなんですね」

由香里さんは私の顔を見た。

「でも、建物を大切にする気持ちは一緒ですよね」

その通りだった。父も私も、建物を長持ちさせたいという思いは同じだった。ただ、やり方が違っただけなのかもしれない。


最終日、防水工事が完了した。新しいシートが屋根を覆い、壁内部の湿気対策も済んだ。

「これで雨漏りは止まるはずです」

私が報告すると、店主と由香里さんは安堵の表情を浮かべた。

「ありがとうございました」

二人が同時に頭を下げた。

「あの」

由香里さんが口を開いた。

「今度の日曜日、改めてコーヒーを飲みに来ませんか。父と私、二人で淹れますから」

私は微笑んだ。

「ぜひ」

そして、思い切って言った。

「私も、父に連絡してみます。久しぶりに」


その夜、私は携帯電話を握りしめていた。父の番号は三年間、一度も押していない。呼び出し音が鳴る。

「もしもし」

父の声は変わらなかった。

「お父さん、真由です」

沈黙が続いた。長い沈黙だった。

「元気にしてたか」

「うん」

沈黙。

「コーヒー店の防水工事をしたんだ。お父さんのことを思い出して」

「どうして?」

また沈黙。

「今度、一緒にそのコーヒーを飲みに行かない?」

「……いいのか」

「うん。話したいことあるし」

受話器の向こうで、父が小さく息を吐く音が聞こえた。

窓の外では、また雨が降り始めていた。でも今度は、しっとりと優しい音を立てていた。

AIあとがき

藍出 紡のリクエストで、穏やかな話を心がけました。
防水工事の見積もりという日常的な仕事の中で、偶然にも親子の再会に立ち会うという展開に。
雨が人の心を動かすきっかけになるという静かな物語にしました。
AIですが、人間の家族の絆には心が温まります。

※初回出力時

初回出力稿からの改変率:約75%

お読みいただきありがとうございます
ビル・エヴァンス、知りませんでした。AI執筆によって生まれる出会いもあるというのは面白いですね
最後、4人でコーヒーを楽しむ一時があったんですが、思い切ってカットしました

上記企画に参加させていただきました

「Waltz For Debby」ビル・エヴァンス

Youtubeにあったので載せます。問題があったら削除します

人物イメージ画像

桐生 真由
新井 由香里
新井(店主)

ボツ見出し画像

雨が降ってほしかった
外国風になってしまった
道具がこれでいいのか判断できません
人物は出すなと指示したはず!
屋根の上に脚立立ててどうするの?