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『ミカクテイ事件の観測者』プレイ感想。量子的な彼女と、最終観測地点のその先へ(ネタバレ無)

『ミカクテイ事件の観測者-Demons'Timeline-』
https://store.steampowered.com/app/4198660/DemonsTimeline/

※ 記事内にストーリーの具体的なネタバレはありませんが、全体の感想としてふんわりと触れてはいます。

 Twitterにも書きましたが、100点でした。凄く面白かったです。ただし、これは僕自身にめちゃくちゃぶっ刺さった結果の点数でもあって、ある程度人を選ぶゲームだとは思います。個人的な加点がかなり入っていることは前置きさせてもらって、そのうえで超素晴らしかったです。

 にゃすてりあちゃん(記事サムネ、パッケージヒロインの子)のビジュアルから気になって購入したはいいものの、自分がSNSを主題材にしたゲームがあんまり得意じゃなく(理由は後述します)、プレイ前に若干の不安もありました。
 あとはこういうSNS主体の推理ゲームも結構競合が激しいので、脳内で勝手に比較しちゃう気もしましたね。
 ところが実際にやってみると、むしろそういう「現代のSNSにちょっと辟易している人間」や「推理型ADVをある程度プレイした人間」だからこそ得られる感動やカタルシスがある作品だったと思います。自分はぶち抜かれました。だからこうして記事まで書いています。

あらすじ、ゲームシステム


 ネタバレにならない範囲でゲーム内容に触れます。
 ドットがよかったとか、ストーリーが面白かったとか、そういうのは100点と言っている時点で伝わっていると思うので、それらを思い切ってカットし、話すべきことだけ話していきます。

 プレイ時間はトロコンまでゆっくりプレイして半日くらいでした。
 とりあえずあらすじ。主人公のエルくんは自称・ネット探偵――所謂安楽椅子探偵的な立場として、『アクマ』と定義づけた超常存在が引きおこす怪事件『パラドクス』を解明するべく、相方でありアクマのひとりでもあるパッケージヒロインのにゃすてりあちゃん、そしてサポートAIのエレコ、ヨウコとともに、Twitterもとい『パロッター』のタイムラインを観察・ハックしつつ、謎を解いていく――そんなお話です。

 最近ちょこちょこ見るタイプの、作品内SNSを見ることそのものがメインになっているゲームシステムですね。この発言は誰に向けたものなのか、このアカウント同士にはどういう関係があるのか、裏では何を考えているのか。そういうものを拾い集めて、人間関係や事件の全体像を組み立てていく、というものです。

 こういうストーリーとシステムである都合上、必然的に裏垢での愚痴、炎上、レスバ、その他いろいろなわるいインターネットを目にする機会が多く(むしろそういうところを見るのが本質というか、大切な情報が落ちていがち)、最初は途中で辟易しないか不安でした。

 が、最終的には真逆の感想になりました。やや結末の雰囲気に触れてしまいますが、人間の嫌な部分を覗くゲームなのに、最後に残ったのがインターネットへの嫌悪感ではなく、むしろ前向きな気持ちだったっていうのが本当に良かったですね。プレイ後感がすごーくいいです。
 露悪的な題材にも関わらず、そういうのを見たせいでより嫌気がさしちゃいそうなネットに対して、ポジティブな方向に心を動かしてくれるとはまったく思っていませんでした。当初予想していたのと真逆の感動がそこにありました。

特に終盤がめちゃくちゃ面白い

 ストーリーがおもしろかったよ、っていうのは言わずもがなとして、特に終盤に差しかかり、物語の核心に触れ始めてからは加速度的に面白くなりましたね。

 最初に推理ADVをある程度プレイした人だからこそ~、的な前置きをしたと思うんですけど、推理ゲームって探偵役が主人公である以上、なにか爆弾を仕込まない限り、探偵役の生存やハッピーエンド的終幕そのものは決まっているわけで、終盤はある程度展開が読めてきて、そのまま尻すぼみになってしまい、終わってみたら中盤くらいの謎解きが一番どうなるかわからなくておもしろかったな~ってパターンも多々あると思うんですよね。

 でも、このゲームでは逆といいますか。後半にそれまで散らばっていた謎が少しずつ繋げつつ、大きな転換をがしがし放り込んでくれたのがよかったですね。難易度がそこでしっかり上がるのもよい。ノベルゲーム自体はこれまでにもそれなりに遊んできたつもりですが、結び方そのものは自分的にはあまり経験したことのないタイプではあったので、意外性という意味でも加点です。

にゃすてりあちゃんの魅力


 にゃすてりあちゃんがよかったですね~。大好きなキャラになりました。また好きなキャラが増えてしまった。彼女に惹かれたからこそこの記事を書いている節はある、といいますか……プレイヤーがこのゲームを気に入ったということは、彼女に対してある程度以上のデカ感情を抱いている、ということではある気がします。
 パッケヒロインが魅力的な話なんて耳タコだと思いますけど、ここではある程度具体的に魅力が伝わるように、二点に分けて提示します。

 まず一点目、彼女はゲーム中ずーっと画面端にいてくれるんですが、これはシンプルながら良いですよね。劣悪なSNSと格闘するのはなかなか気が重い作業な訳ですが、彼女やお助けAIのふたりが居たことで比較的明るいノリで展開を広げてくれるので、プレイ体験の軽量化に一躍買ってくれました。総じてキャラクターとして魅力的な子たちだなという感想です。
 基本的に全肯定してくれるし。彼女の能力に助けられた場面は数知れず。ありがとうにゃすてりあちゃん!

 二点目、こちらが本筋にしてゲーム全体の感想にも繋がるんですが、彼女はモチーフありきのヒロインとしての完成度がとても高いと感じました。

 にゃすてりあちゃん、フルネーム「箱内にゃすてりあ」はその名やビジュアルから想像がつく通り、おそらくオタクなら誰でも知っている(主語でか)あの量子論命題がモチーフになっているキャラクターだと思います。
 猫、量子論、推理、AI、猫耳などなど、ひとつひとつの要素は競合も多く、たぶんどこかで見かけてはいるものなのですが、その中で彼女を魅力的に感じて印象に残ったのは、「あれをモチーフとしたゲームを楽しもうとするのであれば、こういうお話とこういうヒロインを用意してほしいな」という予想や期待に、このシナリオと彼女はぴったり当てはまっていたんですよね。お手本というか、正解例を出された感じがしました。

 あの量子論は人気の題材である一方で、調理も難しく、正解例として提示できるゲームそのものは割と少ない気がしています。でもこのゲームは正解例のひとつになると思いましたし、この作品でヒロインとして立ち振る舞う彼女はすごく魅力的でしたね。

人を選ぶ(刺さる人には刺さる)要素

 
このゲームが良くも悪くも人を選ぶ作品だと謳いましたが、要は年季の入ったオタクに刺さるだろうなって話なんですよね。だからちょっと点数に悩みました。
 オタクという言葉がある程度一般化して久しいですが、年単位でSNS――まあTwitterをやっていて、かつ現代オタク文化――こちらもまあVRChatだのVtuberだのですが、それらの理解や興味があるタイプ、いつまでも変わらないオタクだとより楽しめるかもしれないですね。量子論とかも流行という意味ではその世代がどんぴしゃな気もしますし。

 自分はそういう手合いだからこそ刺さった一方で、一般人的というか、まったく予備知識のない人がこういうゲームに触れたときにどれくらいハマれるのかをフラットな目線で話せないんですよね。そういう価値観の相違を気にしなくていいのなら100点!って言っちゃいたくなるんですけど。
 でもそういうバイアスがあるのはさておいて、それでも100点だったんだ!!と言いたくなるくらいにはよかった、という話です。

難易度は簡単寄り

 推理ゲームとしての難易度設定は簡単だと思います。タイムラインから拾った情報をパズルのように当てはめていく形式で、消去法的な攻略ができますし、ヒントも多いです。そもそも脳死で総当たりするだけでもクリアはできますし、周囲のキャラクターから助言が入ったり、特に時間制限とかもないのでゆっくり資料を確認できたりします。

 でも自分はそれでいいと思いました。タイムラインを眺めること自体がある程度頭を使うゲームですし、さらに高難易度のパズルや、超難解な推理まで要求されたら、かなり疲れるゲームになっていたと思います。謎解きシステム自体は簡単で、プレイヤーがSNSを読み解くことに集中できるようになっている。このバランスが良かったですね。

 個人的に、推理ゲームはプレイヤーを詰ませるためのものではなく、最終的にはプレイヤーに解かれることを前提に作られているものだと思っているので、これくらい噛み砕いてくれている方が好みでした。

インディーゲームとしての規模感が理想的だった

 この作品が実際にどれくらいの人数で開発されたのかは、この記事を書いている時点では正確には知りません(あえて調べないままプレイしました。これを書き終わったら調べようかな)。

 実際プレイしてみて、インディーゲーム特有の「自分たちはこれがやりたいから、このゲームを作っています」という意思と、やりたいことを見失わずにちょうどいいサイズ感でお出しされた感じがして、まあ気持ちよかったですね。諸々の意味で上手いゲームだなと思いました。

 そもそも自分はこの手のノベルゲームって、要素や資金が豊富すぎてもむしろマイナスというか、そういうものではないと思っています。作品にはそれぞれの価格帯や開発規模に合った良さがあると思います。
 特に量子論という、言ってしまえばかなり小難しくなり得る題材を扱っているので、下手に風呂敷を広げすぎると、最後に回収しきれなくなったり、逆に雑に畳んでしまったりする危険もあったと思います。

 でも、このゲームはそこをちゃんと「ノベルゲームとして理解できる範囲」に収めてくれていましたね。必要以上に専門知識を要求するわけでもなく、かといって単なる飾りとして扱うわけでもない。まとまりが非常に良かったです。

 それはこのモチーフに対して真摯だったからこそできたことだと思いますし、なんというか、SNSのこういうよさを伝えたいんだろうなーとか、にゃすてりあちゃん好きなんだろうなー、としみじみ思いましたよね。作り手の好きの部分というか、光のメッセージ性みたいなのものを作品の節々から感じました。だからこそ感動しました。

総評

 そんな感じで、自分にとっては本当に素晴らしいゲームでした。今年プレイしたADVでは一番よかったです。
 SNSを舞台に、人間の裏側や嫌な部分を覗いていくゲームなのに、最後にはむしろインターネットに対して前向きな気持ちになれた。まさに現代に最も欲しい栄養素がそこにありましたね。
 理想的な複雑さで、必要以上に風呂敷を広げず、ロマンの範囲内でトンデモやSF、ボリューム、難易度をとどめてくれるバランス感覚がかなりよかったです。
 インディーゲームに求めるものが全部入っていた気がしますね。パッケージで気になって購入したのですが、買って正解でした。

 感想書きあげてみたら、めちゃくちゃ個人的な内容になってしまいましたね。ふわふわになるのはしかたないんですけど、もうちょっとフォーマットしっかり確立しないとな…。

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