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ふたりぼっち④

第四話 昨日のことなんて

次の日。

美月から、

『今日どこ行く?』

と連絡が来た。

昨日の夜のことが、ずっと頭に残っていた。

一緒にお酒を飲んだこと。

映画を見ながら手を繋いだこと。

そして、美月が言ったこと。

『あいなのこと、今夜だけ独占してもいい?』

あれは、どういう意味だったんだろう。

酔っていたから?

失恋したばかりで寂しかったから?

それとも、本当に私のことを少しでも特別に思ってくれているのか。

考えれば考えるほど、分からなくなる。

待ち合わせ場所に着く。

「おはよー!」

美月は、昨日のことなんて何もなかったみたいに笑っていた。

「おはよ……」

「どこ行く? お腹すいた〜」

いつも通りの美月。

私は少しだけ戸惑いながら、その隣を歩いた。

しばらくして、美月がスマホを見ながら言った。

「ねえ、昨日話してた子なんだけどさ」

「……うん」

「やっぱりめっちゃ可愛いんだよね」

美月は嬉しそうだった。

「写真見返してたら、やっぱ好きだなーって思っちゃった」

「……まだ好きなんだ」

「うん。めっちゃ好き」

昨日振られたばかりなのに。

その顔には、少しも嫌そうなところがない。

むしろ、好きな人の話をするのが嬉しくて仕方ないみたいだった。

私は笑って、

「そっか」

と返した。

胸の中では、全然笑えていなかった。

昨日、あんなに近くにいたのに。

手まで繋いだのに。

美月の頭の中にいるのは、別の女の子だった。

「でもさ〜」

美月が私を見る。

「昨日あいなと話してたら、なんか楽になったんだよね」

「……そう?」

「うん。あいなって話しやすい」

そう言って、美月は笑った。

その笑顔を見て、また少し嬉しくなる。

本当に、嫌になる。

私は昨日のことを何度も考えていたのに。

美月にとっては、ただの一晩だったのかもしれない。

「……美月」

「ん?」

「昨日のこと……」

聞きかけて、やめた。

何を聞けばいいのか分からない。

『あれってどういう意味?』

なんて聞いたら、もし「別に」と言われたら。

きっと私は耐えられない。

「……なんでもない」

「そ?」

美月は気にした様子もなく、また楽しそうに話し始めた。

私はその横で、昨日繋いだ手の感触を思い出していた。

――忘れたい。

そう思うのに。

忘れたくない。

その矛盾だけが、ずっと頭の中に残っていた。

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