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橘家圓太郎師匠の「火焔太鼓」

出会い

コロナ禍を機に約40年ぶりに落語リスナーに復活し、最初期にファンになったのが橘家圓太郎師匠、BS TBSテレビの「落語研究会」で見たのが最初かもしれません。
ジャージーを着せたら、高校の柔道部顧問先生のような威厳ある容貌。
経歴を検索すると、高校ではラグビー部、落語家になってからもトライアスロンやフルマラソンなど、協会芸人紹介のPR欄に「落語は体力勝負です。」と書くだけのことはあります。
後に小朝師匠の惣領弟子だと知ったのですが、二人並らんだら師匠より貫禄あるかも。重厚感ある語り口で、すっかりファンになりました。
その後、テレビ出演があれば見逃さないようにチェックしてました。

芸歴など

これは落語協会の芸人紹介欄の記載を参考にしたものですが、
・1982年1月 春風亭小朝師匠に入門 前座名「あさり」
・1987年 二つ目昇進
・1997年 真打昇進 八代目「橘家圓太郎」襲名 
・1997年 平成8年度国立演芸場花形演芸大賞 大賞 受賞
実力ある名演芸人お墨付きと同義語の大賞受賞、真打昇進直前の実績で受賞されているのですから、大したものです。
弟子入りしたのは小朝師匠が人気沸騰の頃と思いますが、師匠と違いタレント落語家方向に進まないで落語一本に専念。立派な了見だと思います。
後輩の弟子はどちらかというとタレント系の才能も発揮してるようですが…

これまで聴いて面白かった噺

テレビや動画配信で見た中で、とりわけ印象に残ってるのが、

操競女学校(みさおくらべおんながっこう) お里の伝

明治時代、流行作家でもあった三遊亭圓朝が短編連載新聞小説「操競女学校」として書いた作品から、江戸時代を舞台に娘が剣の修行をして不業の死を遂げた両親の仇討ちを遂げる、「お里の伝」を落語化した作品です。
BS TBS「落語研究会」で初めて聴きましたが、人情噺とも違う、どちらかというと講談の台本になりそうな物語ですが、長尺の噺を飽きさせることなく聴く者を納得させる見事な語り口、感心して聴いていました。
大ウケ狙える噺じゃないし、落語研究会のようなコアな落語ファンが集まる落語会か師匠の大ネタを期待してファンが集う独演会とかじゃないと掛けられないような、落語家ウチでいう「稼げない噺」だとは思いますが、そういう噺を自分のレパートリーにして、後世に引き継ぐ姿勢に敬服します。

化け物使い

多くの噺家が手がける人気の噺で、噺家の個性(クスグリ)を盛り込みやすく時間調整もし易い作品だと思いますが、圓太郎師匠の聴きどころは、やはり化け物をコキ使うことろの圧のすごさ!これじゃ化け物でも「辞めさせてもらいます」と言い出すのも当然。
いろいろな落語家の名演が残ってますが、ご存命の落語家で一番好きなのが圓太郎師匠の化け物使いです。

池袋演芸場


2026年(令和8年)5月16日、山陽地方旅行の帰路に東京で1泊し、最終日は夕方までフリー。落語会か寄席に行こうと思い検索すると、池袋演芸場昼の部のトリ(主任)が橘家圓太郎師匠と知り、池袋に向かいました。
乗り換え利用は何度かありますが、池袋の街を歩くのは何十年かぶり。西口前もすっかりキレイになって、駅前だけ見ると昔の猥雑さがウソのよう。
池袋演芸場は初めての訪問、西口の赤羽寄り出口から3分程と便利な場所。飲食店の密集する繁華街に埋もれるようにあり、ちょっとびっくり。
テケツ売り場最初判らず探したら、表題写真の左側にありました。
最初の橘家文吾さん以外の落語家は全て真打。この日は馬生師匠を筆頭にベテラン揃い。柳朝師匠は今年5月、札幌で開催された「だるま寄席:一朝・柳朝・一花の会」で真田小僧を聴いてます。池袋演芸場に初めて入場して感じたのが、他の演芸場と較べ演者一人の持ち時間がやや長く、寄席にありがちな慌ただしさをあまり感じません。他の演芸場のように、大ベテラン師匠が漫談で中途半端な持ち時間を消化するということも少ないのでしょう。
プログラムを見ると、日にもよるのでしょうが、この日は昼夜入れ替えなしというのを初めて知りました。夜の部の主任は雲助師匠二番弟子で硬軟オールラウンドプレイヤーの隅田川馬石師匠、他に一朝、一之輔、花緑師匠など豪華な顔ぶれ斉揃い。時間があれば夜の部まで居残りしたかったのですが、20時のフライトで新千歳に戻るので泣く泣く断念。
この時代、金 参千圓で7時間程楽しめる娯楽なんて、寄席くらいでしょう。
因みに65歳以上は証明書提示で500円引き、お心遣いありがとうござます

当日の番組表です

太神楽 鏡味仙志郎・仙成

印象に残ったのが、鏡味仙志郎・仙成先生による太神楽。太神楽は駒込の日本庭園「六義園」のイベントでちょっと見たことがありますが、寄席では初めて。北海道で開催される落語会に色物芸人さんが来ることありますが、太神楽の芸人さんって来るあるんだろうか?
和傘で鞠や桝を回す芸、額の上で棒を支えて茶碗などいろいろものを高く積み上げバランスを取る芸など、芸が決まる度に場内に「ホー」っと感嘆の声が上がります。神事が起源の芸だけあり、なんだか有り難みある芸でした。

漫才 「ロケット団」

ロケット団は落語協会と漫才協会に所属する漫才師で、協会の中では一番好きな漫才師です。客の少なさが落語家のマクラの自虐ネタに使われる池袋演芸場ですが、仲入り後には場内ほぼ満員。ロケット団目当てのお客さんも多かったと思います。時事ネタや自虐ネタなど、テンポのよい話術に場内爆笑の渦。個性的な外見で、いかにも「漫才師してます」という漫才師も多い中、ロケット団は二人ともお洒落なスーツ姿で話術のみで勝負です。
吉本系の漫才師はテレビタレントになるのを目的にしてる人が多いように感じますが、ロケット団は漫才一本で勝負してると感じました。

圓太郎囃子

師匠である小朝師匠の元の細君(「ご高名」な某落語家一族の次女様で、このお嬢様も何かと有名な方ですね。)が作曲したお囃子として有名で、リズミカルなリフの繰り返し、半音でスケール(音階)を下降してくるところなど、どことなく洋楽の雰囲気漂う唯一無二の傑作お囃子だと思います。これだけでも小朝師に弟子入りした甲斐があったかもしれませんね。
この日のお囃子さん、半音で下降してくるところで、2本の弦を合わせて弾くような奏法(正式名称不明ですいません)で、2音同時に鳴らして下降してくるテクニックを披露してくれました。

火焔太鼓

五街道雲助師匠がCD収録(人情版火焔太鼓という傑作!別の機会に触れたいと思います)のマクラで、「火焔太鼓は古今亭一門の門外不出の噺だっけど、今じゃ誰でも掛けている」と噺しています。
志ん朝師匠について書かれた本には、他の一門の噺家が古今亭一門の者に教えを請わないで高座に上げるのを非常に嫌っていたと書いていました。
それだけ、この噺を大事にしてた証なのでしょう。
志ん生師匠が大枠を創り、志ん朝師匠によって完成の域に達した噺で、演者によって大きく手を加えられるところが少なく、完成された噺の力で誰でもそこそこまではウケを狙えると思いますが、逆に印象に残る噺にするには相当の実力が必要だと思います。

圓太郎師匠の火焔太鼓

マクラが面白いと評判の圓太郎師匠ですが、この日はロケット団をイジったり軽く流して噺に。
圓太郎師匠の火焔太鼓を聴くのは、動画配信を含めて今回が初めて。好きな噺なので、火焔太鼓と判り思わず「ラッキー!」。
「基本に沿ってオーソドックスに進んでるな」と思っていると、次第に熱を帯びてきてオカミさんが亭主を脅かす場面で、松に吊るされる情景がどんどんサディステックにエスカレートしていき、場内大爆笑。とにかくアツいオカミさん。
圓太郎師匠の火焔太鼓を聴きながら、圓太郎版火焔太鼓の主人公は、甚兵衛さんではなくオカミさんだな、って感じてました。
最後までダレることなく場内が笑いに包まれ、大団円。
大満足で旅のエンディングを迎えることができました。圓太郎師匠に感謝!


実力では既にトップクラスの圓太郎師匠、これで一般的な人気というものが追いついてきたら、鬼に金棒だと思います。もっとも、圓太郎師匠は人気取りなんてこれっぽちも考えてないのかもしれませんが。
次は独演会などで長講に浸ってみたいと思います。

       池袋演芸場を訪問した時の旅行記です




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