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FAQページが読まれない会社は、何を間違えているのか|ゼロクリック 第37話


読まれないFAQページの原因は、質問が客のものではなく、会社のものになっていることである。
社内で「よく聞かれる」と思っている質問と、実際に聞かれている質問がずれているからだ。
この記事では、自社のFAQが誰のために書かれているかを判定する方法を渡す。

登場人物

灰島 律(はいじま りつ)
AI検索最適化の論客。経歴非公開、結果でしか喋らない。信条は「検索は死んでない。引用されていないだけだ」。

牧野 藤乃(まきの ふじの)
入社2年目。「AI検索対策室」で1年やってきた。実家は静岡の和菓子屋。和菓子屋・IT企業・代行会社・営業代行と、4つの業種を見てきた。

澁谷 美紗(しぶや みさ)
18歳。米国育ちのスタンフォード短期卒、18ヶ国語を話す元ホワイトハッカー。信じるのはエビデンスとロジックのみ。現場のことは、何も知らない。

福岡 三裕(ふくおか みつひろ)
レビュナビのオーナー。経営者・マーケター。LLMO/AIO/SEOの現場で日本トップクラスの相談数を持つ実践派。理論より現場、データより人の関係性を信じる。灰島と唯一対等に殴り合える男。

目次

  1. 「よくある質問」が、よくない質問で埋まっている

  2. 会社の質問と、客の質問はどこで分かれるのか

  3. FAQは何問あればいいのか

  4. 1ページにまとめるか、分けるか

「よくある質問」が、よくない質問で埋まっている

読まれないFAQには共通点がある。
質問が、会社が答えたいことになっている。
客が知りたいことではなく、会社が説明したいことが並んでいる。

【美紗】
「クライアント12社のFAQを分析しました」

【灰島】
「傾向は」

【美紗】
「上位3問が、ほぼ全社同じでした」

【藤乃】
「同じ?」

【美紗】
「1問目が『サービスの特長を教えてください』」

【美紗】
「2問目が『他社との違いは何ですか』」

【美紗】
「3問目が『導入の流れを教えてください』」

【灰島】
「………」

【福岡】
「あー」

【美紗】
「何か問題がありますか」

【灰島】
「3問とも、客は聞かない」

【美紗】
「え」

【灰島】
「『御社のサービスの特長を教えてください』と口で言う客が、何人いる」

【美紗】
「…………」

【灰島】
「客は『いくらですか』と聞く。『いつまでにできますか』と聞く。『これ、うちでも使えますか』と聞く」

【灰島】
「『特長を教えてください』は、営業資料の目次だ。質問ではない」

会社の質問と、客の質問はどこで分かれるのか

分かれ目は1つある。

その質問を、口に出して言うか。

言うなら、客の質問。
言わないなら、会社の質問。

  • 会社の質問:サービスの特長を教えてください 客の質問:これ、うちの規模でも使えますか

  • 会社の質問:他社との違いは何ですか 客の質問:A社と迷ってるんですが、何が違いますか

  • 会社の質問:導入の流れを教えてください 客の質問:申し込んでから、どれくらいで使えますか

  • 会社の質問:セキュリティについて 客の質問:社内の情報を入れても大丈夫ですか

  • 会社の質問:料金プランについて 客の質問:一番安いプランで、どこまでできますか

【藤乃】
「……右側の方が、聞かれてる感じがします」

【灰島】
「聞かれている。左側は、聞かれた気になっているだけだ」

【美紗】
「なぜ、会社は左側を書くんですか」

【灰島】
「そちらの方が、答えやすいからだ」

【美紗】
「…………」

【灰島】
「『特長を教えてください』なら、用意してある資料をそのまま貼れる」

【灰島】
「『うちの規模でも使えますか』は、その場で考えないと答えられない」

【福岡】
「これ、身も蓋もない話でね」

【福岡】
「FAQって、だいたい忙しい人が短時間で作るのよ」

【福岡】
「で、手元にある資料から作る。だから会社の言葉になる」

【美紗】
「…………」

【美紗】
「……作り方の問題ですね。中身の問題ではなく」

【灰島】
「そうだ。そして、作り方は変えられる」

読まれないFAQは、内容が悪いのではない。
手元の資料から作ったか、客の言葉から作ったか、その1点で分かれている。
そして前者は、社内では正しく見える。

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出典: 同社サイト(2026年8月に確認)

FAQは何問あればいいのか

【美紗】
「実務的な質問です。何問が適正ですか」

【灰島】
「答えられる質問の数だけだ」

【美紗】
「数の目安はありませんか」

【灰島】
「目安を作ると、埋めるために質問を作り始める」

【美紗】
「…………」

【灰島】
「『30問揃えましょう』と言われた会社は、25問目あたりから質問を発明する」

【灰島】
「そして発明された質問には、誰も答えを求めていない」

【福岡】
「あー、それ見たことある」

【福岡】
「『よくある質問』に『貴社の社名の由来は?』が入ってた会社」

【藤乃】
「聞かれます?」

【福岡】
「聞かれない」

【灰島】
「数を目標にするのが、お花畑だ」

では、どう決めるのか

決め方は1つ。

この3ヶ月に、実際に聞かれた質問だけを書く。

3ヶ月で5問しか出てこなければ、5問でいい。
30問出てくる会社は、30問書けばいい。

【藤乃】
「うち、63個ありました」

【美紗】
「60年ぶんですね」

【藤乃】
「はい。……でも、最初に公開したのは10問です」

【美紗】
「なぜ10問に絞ったんですか」

【藤乃】
「父が答えられる範囲を先に出したかったので」

【灰島】
「正しい判断だ」

【藤乃】
「え」

【灰島】
「答えの精度が落ちる質問を、数のために入れるな。1問でも精度が低いと、全体の信用が落ちる」

1ページにまとめるか、分けるか

これは、規模で答えが変わる。

10問以下 → 1ページにまとめる

探しやすい。分けるほどの量がない。

10〜30問 → カテゴリで分ける

「料金について」「導入について」「サポートについて」。
ただし1ページに全部載せて、リンクで飛ぶ形が使いやすい。

30問以上 → 1問1ページにする

AIから見ると、この形が一番切り取りやすい。
1ページに1つの質問と1つの答えだけがある状態は、塊として完成している。

【美紗】
「30問以上で1問1ページにするのは、なぜですか」

【灰島】
「1ページに30問あると、AIが見るときに、その中のどれが答えか判定する手間が増える」

【灰島】
「1問1ページなら、ページごと持っていける」

【美紗】
「……ただし、ページ数が増えて管理が重くなります」

【灰島】
「なる。だから30問以上、という線を引いた」

【福岡】
「これ、僕の意見はちょっと違ってて」

【灰島】
「言え」

【福岡】
「問数じゃなくて、更新頻度で決めた方がいいと思う」

【美紗】
「更新頻度」

【福岡】
「しょっちゅう変わる質問は、1問1ページ。価格とか、対応エリアとか」

【福岡】
「変わらない質問は、まとめていい。『どんな会社ですか』とか」

【福岡】
「分けると、直すのが楽になるの。まとめると、直すのが面倒になる」

【灰島】
「………」

【灰島】
「……その基準の方が実務的だ。訂正する」

【灰島】
「問数ではなく、更新頻度で分けろ」

【美紗】
「…………」

【美紗】
「あの、記録していいですか」

【灰島】
「好きにしろ」

【藤乃】
(美紗さん、灰島さんの訂正を集め始めてる……)

ここまでを、地の文で整理する

FAQが読まれないのは、質問の数が少ないからではない。
質問が、書き手の都合で選ばれているからになる。

会社が書きたい質問と、客が知りたい質問は、ほとんど重ならない。
会社は「どんな会社か」を書きたがるが、客が最初に知りたいのはいくらか・いつまでか・断られる条件はあるかの3つになる。
そして3つ目を書いている会社は、ほとんど無い。

AIが引用するのは、条件が書いてある答えのほうになる。
「対応可能です」は、どの会社でも書ける。
「従業員10名未満の場合は、月額の下限を下回るためお受けできません」は、その会社しか書けない。
そして質問には必ず条件が付く。条件を書いていない答えは、どの質問にも中途半端にしか合わず、結果としてどの質問でも選ばれない。

この構造は、FAQに限らない。
飲食なら「持ち帰りは何分もつか」。製造なら「最小ロットは何個か」。士業なら「初回相談は有料か」。
どれも、答えを持っているのに書いていないという点で同じになる。
書いていない理由も同じで、書くと断ることになるからだ。

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更新頻度で分ける、を手順にする

福岡の指摘を、そのまま作業に落とすと3段になる。

  1. FAQを全部書き出し、直近1年で内容が変わったものに印を付ける(30分)

  2. 印が付いたものを、1問1ページにする(価格・対応エリア・納期・在庫)

  3. 印が付かなかったものを、1ページにまとめる(会社の説明・理念・沿革)

1段目を飛ばすと、問数だけを見て機械的に分けることになる。
その結果、変わらない質問が30ページに散らばり、変わる質問が1ページに埋もれる。
直すのが面倒になり、半年後には古い価格が残る。

古い価格が残ったページは、AIから見て「更新されていない情報」になる。
そしてその判定は、そのページだけでなく、同じサイトの他のページにも及ぶ。

藤乃のポンコツ

【藤乃】
「あ、そういえば。私、クライアントさんのFAQ、40問書き出しました」

【美紗】
「早いですね」

【藤乃】
「はい。……でも、41問目で気づいて」

【灰島】
「何にだ」

【藤乃】
「11問目から先、去年うちの実家で書いたやつをそのままコピーしてました」

【美紗】
「…………」

【藤乃】
「その会社、建設会社です」

【福岡】
「豆大福の日持ちが入ってたの?」

【藤乃】
「入ってました」

【灰島】
「消せ」

【藤乃】
「消しました」

【福岡】
「灰島」

【灰島】
「なんだ」

【福岡】
「さっきの建設会社の話なんだけど」

【灰島】
「ああ」

【福岡】
「あれ、笑い話じゃないと思ってる」

【藤乃】
「え」

【福岡】
「豆大福が混ざってた理由、たぶん分かるんだよ」

【灰島】
「言え」

【福岡】
「FAQを作る担当が、途中で変わったんだと思う」

【藤乃】
「……あ」

【福岡】
「最初の人が作って、次の人が足して、その次の人がまた足す」

【福岡】
「誰も全部は読んでない」

【灰島】
「………」

【灰島】
「それは、あり得るな」

【福岡】
「うちが相談を受けるときも、だいたいそう」

【福岡】
「「このページ、誰が管理してますか」って聞くと、答えられない」

【藤乃】
「答えられないんですか」

【福岡】
「うん。作った人がもういない」

【灰島】
「福岡」

【福岡】
「ん」

【灰島】
「その話は、直し方まで含めて言え」

【福岡】
「分かった」

【福岡】
「最初にやるのは、消すことじゃない」

【灰島】
「では何だ」

【福岡】
「「この質問、誰が答えてる?」を1問ずつ聞く」

【福岡】
「答えられる人がいる質問は、残す」

【福岡】
「誰も答えられない質問は、そもそも来てない質問」

【藤乃】
「あ、それ分かりやすいです」

【灰島】
「………」

【灰島】
「その判定は使える」

FAQが荒れる会社には、たいてい共通の事情がある。

担当が入れ替わり、前の人が何を入れたかを誰も把握していないという形になる。だから消せない。消すと、何かが壊れるかもしれないと思うからになる。

そこで効くのが、福岡が出した「誰が答えているか」という判定になる。

社内に答えられる人がいる質問は、実際に来ている質問になる。答えられる人がいない質問は、誰も聞いていない質問になる。ページの外に判定基準を置くと、担当が変わっても同じ結論が出る。

【福岡】
「あと1個だけいい?」

【灰島】
「言え」

【福岡】
「消すときは、消した記録を残しておいたほうがいい」

【灰島】
「なぜだ」

【福岡】
「半年後に「あの質問どこ行った」って必ず言われるから」

【藤乃】
「………」

【藤乃】
「言われますね、それ」

今日の宿題

所要時間は20分。道具は自社サイトと、過去の記録。

  1. 自社のFAQを開いて、上から5問を書き出す。

  2. ★その5問を、声に出して読んでみる。★

「御社のサービスの特長を教えてください」——客が電話でそう言うか。

  1. 言わなそうな質問に、印をつける。

たいてい、上位ほど印がつく。

  1. 問い合わせの記録から、実際に聞かれた質問を3つ拾って、差し替え候補にする。

FAQは、社内で作ると社内の言葉になる。
客の言葉は、記録の中にしか残っていない。
そして、その記録は、たいてい誰も開いていない。


(次回: 38 質問はどこから集めるのか。何個必要なのか)


著者情報

福岡 三裕(ふくおか みつひろ)
口コミサポート(リアル&ネットなんでも)
AI SEO / LLMO(大規模言語モデル最適化)コンサルタント
連続起業家
株式会社レビュナビ オーナー

やっていること

  • 企業サイトのAI引用対策(ChatGPT / Gemini / Perplexity / Copilot)

  • AI SEOセミナー・企業研修の講師

  • note / Amebaブログ向けLLMO設計(◯◯記事以上の制作実績)

経歴

元プロボウラー(JPBA46期)。引退後、SEO黄金期からWeb集客に携わり、現在は「検索される」から「AIに引用される」への転換期に特化したコンサルティングを行う。日本・ドバイ・タイで約5社を経営。

このnoteについて

AI SEO・LLMOの実務知見を、3人の登場人物(灰島律・牧野藤乃・福岡三裕)によるマンガ風小説として連載中。作中に登場する「福岡三裕」のモデルは著者本人。物語で描かれる手法は、すべて実際のコンサルティング現場で使っているものです。

知識ゼロで読み始めて、読み終わる頃には実践できる設計。

毎日更新。朝7時30分・12時・18時に1話ずつ出ます。

物語ではなく実話を読みたい方は、実録マガジン「オフレコ。」へ。事業とお金と失敗の話を、毎日1本書いています。

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