the HIATUS - Back Into the Noise Tour 2026- 2日目を見た
『ハイエイタスの時は一番悪い自分でいられる』
ライブの中盤、細美武士は笑顔でそう話した。
2009年、前年に半ば空中分解に近い形で活動を停止したELLEGARDENに続いて(当初は)細美武士のソロプロジェクトとしてスタートしたthe HIATUS。
ハイエイタスはまるでエルレの幻影を振り切るように、細美武士の中にあるパンク以外の音楽、特にエレクトロニカやポストロックの影響を色濃く出したオルタナティブロックを志向し、闇の中で輝くメロディーに葛藤や悲哀をモチーフにした叫びのような歌詞が歌われる、美しくも儚い楽曲が多く存在した。
今回のライブ中でも触れられていたが、この頃の細美武士はメンタルに不調をきたしており観客も含めて全てが敵に見えるような状態であったらしい。そんな中で楽曲を生み出し、ステージで披露する彼らの姿は傷つきもがきながらもその先にあるゴールを探し求めているようでもあった。
その後、バンドは打ち込みやループを基調にしたミニマルな音楽にシフトして歌詞もより抽象的な世界観に変化、その後はBLUE NOTEをはじめとするジャズアレンジのツアーを行ったりしてきたが、いわゆるロックバンド編成のライブは長らく遠ざかることになる。
そして今回"Back Into the Noise"と銘打って久しぶりのバンド編成でのツアーである。
勿論Sold Outになっている会場には久々のバンド編成を見ようという往年のファンから、バンド編成でのライブを見たことがないという若いファンまで幅広い観客たちがものすごい熱量で彼らの登場を待っていた。
結果として、その全員が期待以上の体験ができたのではないかと思う。
セットリストは懐かしくも新鮮な楽曲で彩られつつ"轟音への回帰"の名にふさわしいものであったし、なによりバンドメンバーが非常に楽しそうに演奏をしている光景が広がっている。バンド編成としては5年ぶりにも関わらず5人の息はぴったりで、ギター音の隙間を縫うようにグルーヴを作っていくドラムとベース、美しい旋律でメロディーを作り上げていくキーボードにどこまでも伸びやかな細美武士の歌声はツアー2日目とは思えない仕上がりだった。
かつてのハイエイタスは苦しみながらもパンクとは違うアウトプットを生み出すことで細美武士のアーティストとしての安定を図ろうとしていたプロジェクトだったかもしれない。ただ、エルレの再開やMONOEYESでの無邪気な躍動があったからこそ初期の楽曲たちやメンバーにも改めて向き合うことで"ロックバンド"としてのthe HIATUSを受け入れてポジティブな気持ちでステージに立つことができるようになったのではないだろうか。
それくらいステージの上での細美武士は楽しそうに歌っていたし、そんな歌をより良いものに仕上げるためにバンドメンバーは楽しそうに演奏をし続けていた。
前述のようにオルタナ色の強いハイエイタスの楽曲たちは、エルレやモノアイズが鳴らすストレートでポップなパンク色とは違いないどこか暗い影を帯びている。でもそんな楽曲たちを受け入れて楽しそうに演奏できるようになったバンドは今、まさしく自分の中の悪い自分をステージ上で表現できる状態になっているのだろう。
細美武士はライブ終盤『行ってきます!』と大きな声で言った。「Back Into the Noise Tour」を引っ提げてハイエイタスはこれから全国を回っていく。全国ですごく強くて悪いバンドサウンドが鳴り響くと思うと楽しみだし、これからさらに仕上がっていくバンドの姿を見れる人たちが羨ましくて仕方がない。
願わくばもう一度、全国を回って更に一体感を増したバンドの姿を東京で見たいものだ。
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