詩集「夜想」(同人誌再録 note版)
「硝子の蝶に触れた。それは脆く儚く、只管に綺麗な蝶だった。」
細やかに心情を描いた短い詩をまとめた、孤独な夜のための幻想散文詩集。
2018年~2021年までにTwitterに投稿した作品の中から、厳選した29作品+書き下ろし7作品を収録しています。
こちらはnote上で全ての詩を読むことができる、note版の詩集となります。
なお今後、電子書籍版の発行も予定しています。
『夜想』 藍沢紗夜
硝子の蝶に触れた
硝子の蝶に触れた。
それは脆く儚く、只管に綺麗な蝶だった。弱ったところを助けようとして、触れた瞬間に透明な翅は鱗粉を散らして崩れてしまった。パリン、と小さくも凛とした音を鳴らして。
その鱗粉は光の粒になり、壊れた翅は銀河系の一分子になって夜空に消えた。
あの蝶は今、何処にいるのだろう。
まだ生きていけるから
まだ生きていけるよって、足りない息で叫んでいた。星は沈んで月が溺れる夜、壊れたメトロノームの不整脈に合わせて歌う君が、曖昧に滲む。幻ばかり追いかけていた昨日とはちがうって証明したくて、傷だらけの手を伸ばす。まだ生きていけるから、だから、どうか止めないで。いつまでも私の目印でいて。
星空のデザート
ブルーベリーチーズケーキに星空を見た。あれはデネブ、あれはベガ。じゃあアルタイルはきっとこれ。さそり座が狙うチョコレートはホワイト、食べられちゃう前にフォークを刺した。ふわり広がる甘味は、星になったあの子の形見。零れ落ちた涙はたぶん、いつかの夏に見つけた流星の生まれ変わりだね。
夜は海
深海と浅瀬の狭間で彷徨っている、夜は海だ、他のいきものの姿は見えず、気配だけが漂う。溺れることも沈むことも出来ず、ゆらゆらと波に揺られる。鈍った音が耳を撫でては去っていく。目を閉じれば光が見つかる気がした。君の名前を呼びたくて、繰り返し思い出している、あの日の背中と最後の言葉だけ
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