王様になれ、pillowsニワカには苦痛な114分
王様になれ、アマプラにて視聴。
3.0/10

さほど面白くなかったわね。
分かりにくい。
まったく親切ではない。
pillows(ピロウズ)が制作に携わって出演もしているだけあって、音楽は超良かったわね。
pillowsのヴォーカルの方(山中さわお)が原案。
同バンド30周年記念として作られた映画。

音楽伝記映画、
・名もなき者
・ボヘミアン・ラプソディ
でおなじみの、「pillowsのバンド結成からさかのぼって…」みたいなことをやらない。

完全なフィクションの、
・主人公=貧乏カメラマン
・ヒロイン=悪性腫瘍持ちのpillowガチファン
をメインに据え、彼らと2019年当時のpillowsとの関わりによって生じる人間ドラマを描く。
現実とフィクションのミックスモノ。

立て付けはけっこういい感じなんだけど。
細部が、相当なコアなpillowsファン向けなのよね。
少なくとも自分向きでは絶対にない。
自分は完全なにわかで、
・ミスチルカバーのストレンジカメレオン
・SKET DANCEカバーのファニーバニー
くらいしか分からない。

よっておそらく、散りばめられた無数の細々とした小ネタがほぼ全部分からないのよね。
分からないっていうより、むしろノイズにさえなっている。
なんかねえ、観ていていちいち細かい違和感が生じ続けるのよ。
「なんか聞き取りにくいセリフ言ってたな、今。
なんだったんだ…?
あ、あれか、内輪ネタみたいなやつだったんかな…」と。
なんかよく分からないものが、説明を省略してとにかくたくさん良く出てくる。内輪の笑い。
ライブなら周囲の観客が笑ったりしてくれるはずで、笑いどころも分かるが…
サブスクで一人で観る環境が居心地の悪さを助長している。
小学生のときに、昭和ネタで教師や父母が笑ってたときに空気読んで合わせ笑いするみたいな。
そういう何とも言えないタスク処理感が観ていてつきまとう。

プロットは以下。
・売れないカメラマンの主人公
・伯父さんのラーメン屋で長年バイト
・pillows狂いの女性客(ヒロイン)が来店
・ヒロインに一目ぼれ
・主人公、ストレンジカメレオンくらいしか知らないにわか
・話を合わせるためにpillowsを聴き込む
・そのうちに自分もファンになる
・ヒロインとの関係も深まる
・が、ヒロインは悪性腫瘍で…
みたいな流れ。

ヒロインとの出会いで、ストレイテナーってバンドだかの、クマみたいなロゴのバンドTシャツを着ているのよね。
で、主人公より邦ロックに詳しい伯父さんが、
「それ、ストレイテナー!」
つって。
それがきっかけで主人公とも出会い、みたいな。
ちょっとさ、なんもわかんなさすぎて。
ストレイテナー、まず名前だけ聞いたことあるくらいで…
「そのバンドとpillowsとが、なんらかの音楽的なつながりがある」
と素直に読解していいのよね…?
そこまでは察せられるけど、例によって説明はゼロで。
どういう文脈と意味があるか、もし知ってる方おられたら、解説切望するわね…

あとは、ヒロインの悪性腫瘍ね。
正直要らんと思う、いや、もっと言うと、できれば入れないでほしかったわね。
個人的に、「泣かせるためだけに雑に入れられる難病」が映画でいちばん嫌いな要素であり、ここの記述は私情が大きく入ってしまうわね。
・何癌なのか
・いつからどのように発症した
・ステージングはこれくらい
・予後予測はこんなもん
・今の臨床症状としてはこれで苦しんでいる
くらいの設定があると、とてもいい。
これらを劇中で説明した場合、1、2分程度の尺で、たぶんテンポを損なわない。
また説明しないパターンもある。
背景情報だけ作り込んでおいて、設定と矛盾のないかたちで撮れるなら、たぶんそっちの方が全然いい。
この映画の癌、ほんとにひどくて。
まず何ガンかはおろか、癌かどうかさえ観ていてよくわからない。
担当医も兄貴も本人も、誰も何も説明しない。
腹部エコーの肝臓らしき臓器がおもむろに映されて、
主治医「ここがデカくなってまして…」
ヒロイン「ってことは、オペなんですか?」
主治医「ええ、そうなりますね…」
みたいなカスみたいなIC(病状説明)がなされる。
たぶん原案のヴォーカルの人(山中さわお)も、それを受けて脚本を練った人(オクイシュージ)も、何も考えずに雑に作っている。
最近観た難病モノだと…
はたらく細胞のヒロインをむしばむ白血病とかは考証がマジで神がかっててよかったけど…

あそこまで要求しないとしても、よく分かってないうえに分かろうとする気もないものを、作劇の都合で乱暴に入れるの、やめてほしいわね。
あとこれに関連して、クライマックスの流れもちょっと意味不明で。
画面が突然、左右二分割される。
左半分は、pillowsのライブと、それを撮る主人公が。
右半分には、手術に向かうヒロインの顔のアップが映される。
ヒロインがリザーバーマスクをつけられ目を閉じ、真っ暗な病院の廊下で、ストレッチャーで運ばれている。
大きくなったらしい腫瘍の摘出手術。
十中八九予定手術だから、普通は朝10時など、日中の入室が多い。
夜!!!
ライブと時間軸を合わせる必要性からだとは思うけど…そのあたりも雑で…

やりたいことは分かるよ。
「pillowsの音楽は、病気で苦しむ人をはじめ、受験や仕事で頑張る人たちを素朴に応援し続けてきた。
このヒロインの頭のなかでも、麻酔で意識が飛ぶ瞬間まで、間違いなくpillowsが鳴っている。
それがオペに臨む勇気となっている。
そんな感じの、なんでもない人たちをエンパワーするさまを撮りたかった」
って。
わかるけどさあ…たぶんそもそもヒロインを癌っぽい大病にしなくたって、この映画はいい地点に着地したはずだよ。

あとは、いっさい映画と関係ないんだけど、pillowsがちょうど35年目の今年に解散しちゃってて、その辺も、
「この映画の存在って、一体…(チーン,ちびまるこ的な鐘の音)」
感を強めてしまうわね。
あ!あとそもそも観た理由なんだけど、主演の岡山天音さんに惹かれてだったわね。
笑いのカイブツでファンになったため。

本作よりも笑いのカイブツの方が断然好みだし、作品としての出来も良いと評価するわね。

