買う予定のシャンプーより、予定になかった銀鮭のほうが高かった|Amazonスマイルセール最終日の話
かごを開いたら、二つ入っていました。
シャンプーとコンディショナーのセットが2,180円。銀鮭の切り身が1キロで2,990円。
買いに行ったのは、シャンプーだけです。
順番が逆になっていた
シャンプーは、なくなりかけていました。だから探して、値段を見て、かごへ入れた。
必要が先にあって、商品が後から来ています。
銀鮭は違います。
一覧を見ているときに、半額の表示が目に入りました。1キロで約10切れ。冷凍。そこで、これは要るのではないか、と思っています。
値段が先にあって、必要が後から来ました。
同じかごの中に、順番の違う買い物が二つ並んでいます。そして、あとから入れたほうが810円高い。

セール最終日に起きるのは、たぶんこういうことです。
欲しいものを安く買うために開いた画面で、安くなっているものの中から、欲しいものを探し始める。
なぜ、食べ物だったのか
自分でも少し不思議でした。同じ画面には、ほかにも割引の商品が並んでいます。
服も、家電も、雑貨もあった。それらは指で流して、鮭のところだけ商品ページを開いています。
考えてみると、食べ物はいちばん言い訳をしなくて済みます。
いつか使う、を証明しなくていい。服なら「着る機会があるか」を考えます。家電なら「今のは壊れていないな」と気づく。
鮭には、その手続きが要りませんでした。
食べる予定は毎日あります。冷凍なら腐らない。10切れなら、10回分の夕食です。
用途が最初から決まっているように見えるので、買う理由を探す作業が省略されます。
安いものの一覧から用途を探す、という手間さえかからない。だから、いちばん早くかごに入りました。
締切は、「買わない」にも理由を求めてくる
今回のセールは、8月28日午前9時から9月3日午後11時59分まででした。
定価の商品なら、今日決めなくても構いません。迷ったら明日に回せる。来週もう一度見てもいい。必要になってから買えばいい。
セールには、終わりがあります。
その時刻を過ぎたら、この価格では買えないかもしれない。そう思うと、保留がしにくくなります。
買う理由だけでなく、買わない理由まで考え始めるからです。
本当にいらないのか。あとで必要になったら損ではないか。今買わず、来月もっと高い値段で買ったら後悔しないか。
商品を持っていないことが、損失のように見えてきます。
まだ一円も使っていないのに、買わないことで失う金額を計算している。
1万円という線
今回のポイントアップ企画は、事前に登録したうえで、期間中の購入額が合計1万円以上になることが条件でした。プライム会員の上乗せは1万円以上で0.5%、2万5,000円以上で1.5%、3万円以上で2.0%と段階が分かれています。還元の計算は、割引後の価格で行われます。
こういう条件があると、一つひとつの商品ではなく、かご全体を見るようになります。
必要なものを7,800円分選んだ。あと2,200円で1万円になる。
そこから、もう一度探し始めます。タオルなら使う。電池も腐らない。お菓子なら食べる。日用品なら無駄ではない。
2,200円を追加で使う理由が、「欲しいから」ではなく、「ここまで選んだ7,800円を無駄にしないため」に変わります。
ポイントを得るために支出を増やし、その結果を得だと受け取る。
増えたのはポイントだけではありません。支払った金額も増えています。
画面には、獲得予定のポイントが大きく出ます。追加で使った金額より、戻ってくる数字のほうが目に残る。
かごが、買い物かごではなく、条件達成までの進捗表になります。
私は今回、1万円には届きませんでした。届かなかったというより、そこを目指す前に画面を閉じた、というほうが近い。もう少し見ていたら、三つ目が入っていたと思います。
買っているのは、商品だけではない
セールで使うのは、お金だけではありません。
商品を探す時間があります。
評価を読む。ほかの店と比べる。容量違いを計算する。本当に安いのか、普段の価格を調べる。似た商品を開いて、また戻る。
1,000円安く買うために、一時間探すこともあります。
その一時間を楽しんでいるなら、問題はありません。宝探しのような面白さがあるのは分かります。
ただ、焦りながら画面を行き来しているなら、安く買うために、時間と注意をかなり使っています。
締切が近づくほど、比較をやめにくくなります。ここまで探したのだから、何か一つくらい買わないと、使った時間まで無駄になる気がするからです。
商品の値段を判断する材料に、検索へ使った時間が加わってくる。
残り時間が短くなっても、商品は変わらない
残り時間が減っても、鮭の質は変わりません。1キロは1キロのままです。
変わるのは、判断に使える時間のほうです。
一週間考えれば買わなかったものを、残り二時間なら買う。明日の朝には忘れている商品を、今夜のうちに注文する。
これを、意思が弱いからだとは思いません。
いつでもやめられる買い物と、今決めなければ条件が消える買い物では、判断の難しさが違います。
セールの終了時刻は、店が勝手に言っているのではなく、本当に決まっている締切です。だからこそ効きます。
今日を逃したら終わる。その事実だけで、決めなくてもよかったものが、今日の判断に変わります。
値上げ前の買い置きとは、家計への入り方が違う
先月、値上げの前に買い置きをしました。あのとき増やしたのは、いずれ使うと分かっているものです。来月払う予定だったお金を、今月へ移した買い物でした。
今日の鮭は、その手前にあります。
使うものが決まっていないところへ、安い一覧から用途を持ってきている。
来月の支出を今月へ動かしたのではなく、もともと予定になかった支出を、今日の中に作りました。
似た形に見えて、家計への入り方が違います。
とはいえ、鮭が無駄になったとも思っていません。10切れは食べ切れる量です。半額なら、普段より安く買えている。
そこは、素直に良い買い物でした。
気になっているのは、金額でも品物でもありません。買うと決めた順番のほうです。
終わるのは、割引の期間だけ
安く買える機会を使うこと自体は、悪くないと思います。
前から必要だった家電が安くなっている。いつも買う日用品が下がっている。買う時期を少し前へ動かす。
そういう買い物なら、セールは家計の助けになります。
気をつけたいのは、何を買うか決まっていないまま、今日までという理由だけでページを歩き続けているときです。
欲しかったものが安いのか。安いものを欲しくなったのか。
画面を閉じる前に、その順番だけ確かめる。私は今回、確かめたのが会計のあとでした。
今日の午後11時59分になれば、セールは終わります。
終わるのは、割引の期間です。
必要なものを考える時間まで、そこで終わるわけではありません。
かごが空のままだったとしても、それは機会を逃した記録ではない。
探してみたけれど、今日買うものはなかった。ただ、それだけの結果です。
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考えすぎる猫に、そっとお茶を出す場所です。