名古屋の家・雨とおばあちゃん
小学校2年生のある朝。 登校した時はまだ曇り空だったのに、 2時間目の頃には教室が少し薄暗くなり、 肌寒い雨がしとしと降り始めた。
その時、 教室のドアを「コンコンコン」と叩く音。 先生が廊下へ向かい、戻ってきて私の名前を呼んだ。
「灯りさん、お家の人が来ていますよ。」
胸がドキドキしながら廊下に出ると、 そこには おばあちゃんが静かに微笑んで立っていた。
「雨が降ってきたし、寒いでしょう?」 そう言って、 傘とカーディガンをそっと差し出してくれた。 「はい、これ着てね。勉強頑張って。」
その一瞬だけ学校の中で家族に会えた喜び。 胸の奥がふわっと温かくなった。
あとで知ったけれど、 おばあちゃんは姉のところにも 同じように傘とカーディガンを届けていた。
帰宅して姉に 「おばあちゃん来てくれたね、嬉しかったなぁ」 と言うと、
姉は照れ隠しのように 「大した雨じゃないのに、授業中に呼ばれて恥ずかしかった」 とぶっきらぼうに言った。 でも私は知っていた。 おばあちゃんにとって、 私たち3人の孫は 世界の中心 だったことを。
今の私は、 娘や孫に同じようにできているだろうか。 愛はあるけれど、 あの日のような“過保護な優しさ”は まだ持てていない気がする。
それでも、 あの日のカーディガンの温度は 今も私の中に残っている。
あれは、愛そのものだった。
#創作大賞2026
#エッセイ部門
#雨の日の記憶
#おばあちゃん
#家族の物語
#幼い日のこと
#原風景
#静かな時間
