コップを持てない母が「飲めますね」と言われた日。介護認定で感じた違和感
介護をしていると、何度も「制度」と向き合う場面があります。
その中でも、私が特に戸惑ったのが、要介護認定でした。
要介護認定は、介護保険サービスを使うためにとても大切なものです。認定結果によって、使えるサービスの量や内容も変わります。
だからこそ、家族にとっては本当に切実です。
でも、実際に母の介護認定を何度も受けてきて感じたのは、
「これは、思っていた以上に分かりにくい」
ということでした。
我が家の介護認定は、
要支援2
↓
要介護1
↓
要介護3
↓
要介護1
↓
要介護4
という、正直とても分かりにくい経過をたどっています。
「要介護3だった人が、どうしたら要介護1になるのか」
当時は、認定結果を見るたびに戸惑いと疑問が募りました。
状態が良くなった実感はありませんでした。
むしろ、日々の介護負担は増えているように感じていました。
それなのに、認定結果だけが軽く出てしまう。
家族としては、納得しようとしても、なかなか気持ちが追いつきませんでした。
要介護認定は、サービスにつながる大切な入口
介護保険サービスを使うには、まず要介護認定を受ける必要があります。
私の運営する「あかるく介護」でも、要介護認定から介護サービス利用開始までの流れをまとめています。
大まかな流れとしては、市区町村の介護保険課への相談から始まり、要介護認定の申請、認定調査、認定結果の受け取りへと進みます。
その後、ケアプランを作成し、サービス事業所との契約を経て、実際のサービス利用が始まります。
また、認定区分によって使えるサービスも変わります。
要支援1・2では介護予防サービスが中心になり、要介護1以上になると、居宅サービスや施設サービスなど、利用できる支援の幅も広がっていきます。
つまり、要介護認定は、ただの書類上の区分ではありません。
どんなサービスを、どのくらい使えるのか。
家族の介護負担を、どこまで外の力で支えられるのか。
本人が自宅で暮らし続けるために、どんな支援につながるのか。
そこに関わってくる、とても重要な判断です。
だからこそ、家族はその結果に大きく揺さぶられます。
そして我が家の場合、この要介護認定への向き合い方は、ケアマネジャーさんが変わったことで大きく変わりました。
ケアマネジャーさんが変わったら、すべてが変わった
母の介護認定で、私にとって大きな転機になったのが、ケアマネジャーさんが変わったことでした。
正直に言うと、それまでは、こちらが困っていることを伝えているつもりでも、どこかうまく届いていないような感覚がありました。
母の状態は、本当にこの認定で合っているのか。
日々の介護負担は、きちんと伝わっているのか。
家族がどれだけ見守り、手を貸しているのか。
そういうところが、認定結果に反映されているようには感じられませんでした。
でも、制度のことは分からないことばかりです。
どこまで言っていいのか。
誰に相談すればいいのか。
認定結果に疑問があっても、家族が声を上げていいのか。
当時の私は、そんなこともよく分かっていませんでした。
ところが、ケアマネジャーさんが変わってから、見える景色が変わりました。
同じ母の状態を見ていても、何を問題として拾い上げるのか。
どこを主治医に伝えるのか。
認定調査の前に、どんな困りごとを整理しておくのか。
その視点が、まったく違ったのです。
普段の生活の中で、母が何に困っているのか。
一瞬だけできるように見えても、その前後にどれだけ家族の支えがあるのか。
転倒の危険や、食事、水分補給、排泄、入浴の不安がどれほどあるのか。
そうしたことを、ひとつひとつ丁寧に聞いてくれました。
そして、
「これは、きちんと伝えた方がいいです」
と、家族だけでは言葉にしきれなかった部分を整理してくれたのです。
このとき私は、ケアマネジャーさんによって、こんなにも違うのかと感じました。
もちろん、どのケアマネジャーさんにも、それぞれの考え方や経験があります。
でも、在宅介護では、本人の状態だけでなく、家族の限界や日々の負担まで見てくれる人に出会えるかどうかで、本当に大きく変わります。
主治医の先生に何を伝えるべきか。
認定調査のときに、どんな困りごとをメモしておくべきか。
今の状態に合わない認定だと感じたとき、どう動けばいいのか。
そうしたことを一緒に考えてもらえたことで、私はずいぶん心強くなりました。
「ケアマネジャーさんが変わったら、すべてが変わった」
少し大げさに聞こえるかもしれません。
でも、当時の私の実感としては、本当にそのくらい大きな変化でした。
「コップを持てますか?」と聞かれたときのこと
今でも忘れられない認定調査の場面があります。
調査員の方から、
「コップを自分で持てますか?」
と聞かれました。
私は、「持てません」と答えました。
実際、母はコップを手でしっかり持って、自分の力で口元まで運ぶことができませんでした。
ところがそのとき、母がテーブルに置いてあるコップを、両手首で挟むようにして動かそうとしました。
持ち上げるというより、なんとか手首で支えているような状態です。
そして、コップを口元まで持っていくのではなく、自分の顔をコップの方へ近づけて飲もうとしました。
それを見た調査員の方が、
「飲めますね」
と言ったのです。
私は、正直、呆れてしまいました。
いや、これは「飲める」と言っていい状態なのだろうか。
コップを手で持てない。
口元まで運べない。
こぼす危険もある。
見守りも介助も必要。
それでも、その一瞬だけを見て「できる」と判断されてしまうのか。
そのとき私は、思わず文句を言いました。
すると、調査員の方は、
「介護認定基準では、これは飲めると判断します」
と、きっぱり言い切ったのです。
えー。
そうなの。
呆れて、言葉が出ませんでした。
家族から見れば、毎日の生活の中で、どれほどできないかを知っています。
でも、調査の場面では、本人が頑張ってしまうことがあります。
できないことを、できるように見せようとしてしまうこともあります。
たまたまその瞬間だけ、いつもより動けるように見えることもあります。
コップを持てなくても。
持ち上げられなくても。
手首で押さえて、口を近づけられる。
その一場面だけで「飲める」と判断されることの怖さを、私は強く感じました。
本人は、調査のときに頑張ってしまう
高齢の親は、認定調査のときに普段以上に頑張ってしまうことがあります。
「できません」と言いたくない。
人前では、ちゃんとしていたい。
家族に迷惑をかけていると思われたくない。
自分はまだ大丈夫だと思いたい。
そんな気持ちがあるのだと思います。
母もそうでした。
普段はできないことでも、調査員さんの前では何とかやろうとする。
無理をしてでも、できるように見せようとする。
その気持ちは、母の尊厳でもあります。
だから、責めることはできません。
でも、家族としては複雑です。
普段の生活では、歩けない。
立ち上がりにも介助が必要。
移動にも不安がある。
食事や水分補給にも見守りがいる。
入浴も排泄も、家族の手が必要。
それなのに、調査の日の数分だけを見て、
「できますね」
と判断されてしまうと、日々の介護の現実が伝わらないのです。
介護認定は、家族の困りごとまで見えにくい
介護認定では、本人の状態を確認します。
もちろん、それは必要なことです。
でも、在宅介護の大変さは、本人の動作だけでは測れない部分があります。
夜中に何度も起きる。
転ばないように見守る。
食事量や水分量を気にする。
排泄の失敗に対応する。
薬を飲み忘れないように確認する。
入浴のたびに家族が緊張する。
急な体調変化に備えて、常に気が休まらない。
こうした負担は、調査の短い時間では見えにくいです。
本人が少しできるように見えたとしても、実際にはその前後に家族の準備や見守り、声かけ、後片づけがあります。
介護は、「できたか、できないか」だけではありません。
できるように見えるために、家族がどれだけ支えているか。
その支えがなければ、安全に暮らせないのか。
そこまで見てもらえないと、実態に合わない認定になってしまうことがあります。
認定結果に納得できないときは、伝え直していい
我が家は、認定結果に納得できず、何度も再申請をお願いしました。
主治医の先生にも、意見書を書いていただきました。
時間も気力も必要でした。
「また説明しなければいけないのか」
「こちらの大変さは、どうしたら伝わるのだろう」
そう思ったこともあります。
でも、今振り返ると、あのとき諦めなくてよかったと思います。
母の状態に合わない認定のままでは、必要なサービスにつながりにくくなります。
そしてそのしわ寄せは、結局、本人と家族に来ます。
介護認定は、一度決まったら終わりではありません。
その時々の状態をきちんと伝え、必要に応じて見直していくものです。
「今の状態に合っていない」と感じたら、ケアマネジャーさんや主治医の先生に相談していいのだと思います。
調査の前に、家族が準備しておきたいこと
認定調査のときに大切なのは、普段の困りごとをメモしておくことです。
その場でうまく話そうとしても、なかなか全部は伝えられません。
特に、本人の前では言いにくいこともあります。
だから、事前にメモを作っておくと安心です。
たとえば、
食事でどんな介助が必要か。
水分を自分で安全に飲めるか。
トイレやおむつ交換の状況。
入浴でどこまで介助が必要か。
夜間の様子。
転倒しそうになった場面。
薬の管理。
認知面で困っていること。
家族がどのくらい見守っているか。
こうしたことを、できるだけ具体的に書いておきます。
「できません」だけではなく、
「何が、どの場面で、どのくらい難しいのか」を書くことが大切です。
コップの例でいえば、
「コップを手で持って口元まで運ぶことはできません」
「両手首で挟むようにして支えることはありますが、こぼす危険があります」
「水分を飲むときは、家族の見守りや介助が必要です」
ここまで言葉にしておく。
そうしないと、調査の場面だけを見て「できる」と受け取られてしまうことがあります。
家族が声を上げることは、わがままではない
介護認定の結果に疑問を持つと、「こちらがわがままを言っているのだろうか」と思ってしまうことがあります。
でも、私はそうではないと思います。
必要以上に重く見てほしいわけではありません。
ただ、今の状態を正しく見てほしい。
家族だけでは支えきれない現実を知ってほしい。
本人に必要なサービスにつなげてほしい。
それだけなのです。
介護者が声を上げることは、わがままではありません。
むしろ、本人を守るためにも、家族が倒れないためにも、必要なことだと思います。
そして、もし今のケアマネジャーさんに話しづらい、伝えても届いていない気がする、介護の大変さを分かってもらえていないと感じるなら、ひとりで抱え込まなくてもいいと思います。
地域包括支援センターや市区町村の窓口に相談してみることも、ひとつの方法です。
ケアマネジャーさんを変えることは、悪いことではありません。
家族にとっても、本人にとっても、必要な支援につながるための大切な選択になることがあります。
最後に
要介護認定は、制度として必要なものです。
でも、実際に受ける家族にとっては、分かりにくく、納得できないこともあります。
我が家のように、
要支援2から要介護1へ。
要介護3になったと思ったら、また要介護1へ。
そして最終的に要介護4へ。
そんなふうに、認定結果に振り回されることもあります。
そのたびに、家族は考えます。
この結果で本当に合っているのだろうか。
今の暮らしの大変さは伝わっているのだろうか。
このまま受け入れていいのだろうか。
もし、認定結果に違和感があるなら、ひとりで抱え込まなくていいと思います。
ケアマネジャーさんに相談する。
主治医の先生に普段の状態を伝える。
困りごとをメモに残す。
必要なら見直しや再申請を考える。
今の支援体制に違和感があるなら、相談先を変えることも考える。
介護認定は、家族を試すものではなく、本人と家族が必要な支援につながるためのもののはずです。
だからこそ、現実と違うと感じたときには、きちんと声を上げていい。
そして、その声を一緒に整理してくれる人に出会えるかどうかで、介護は本当に変わります。
私は、母の介護認定を通して、そう強く感じました。
介護認定や介護度の違い関係記事はあかるく介護WEBサイトにまとめてありますのでよろしかったら見てください。
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