ショートショート 「踏切オーディション」 #毎週ショートショートnote
「東武日光線157号踏切、やります」
男は舞台の中央に立つ。腕をゆっくりと縦へ伸ばす。目は遠くを見ている。呼吸は浅い。
静寂が支配する。
そして、唐突に—
「カン、カン、カン、カン…」
甲高く、正確なリズムで鳴き始める。
やがて、彼の腕が降り始める。
「ウィ〜〜ン…」
ウェイトレス遮断器特有の、コイルを巻き上げるモーター音が響く。揺れながら、遮断桿と化した腕が水平へと近づく。完璧な水平ではない。指先は重力に引かれ、わずかに垂れ下がっている。
そしてまた唐突に、遮断桿は風圧と振動を感じて揺れた。見えるはずのない電車が、確かに通り過ぎていく。
「ブラーボー!」監督は拍手喝采。
「カン、カン、カン…」と鳴き終えると、バネの反動を受けて遮断桿を上げきる。
「ありがとうございました」彼は深く一礼した。
「今、通ったのはN100系かな?」監督は目を輝かせ尋ねる。
「ザッツライト! スペーシアX」
そして二人は抱き合った。
完
(本文395字)
あとがき
田原にかさんの企画『毎週ショートショートnote』お題「踏切オーディション」に参加させて頂きました。ド直球で書いてみた。どストレート。ちなみに私は鉄ちゃんではありません。
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