ショートショート 「決戦」 #せりふ三題噺
カツン、カツン。
タラップを刻む金属音が、薄曇りの空に跳ね返る。
見上げると、巨大な豚型生体マシーンがそびえ立っていた。
「ついに…これに乗るのか…」
「ブヒ、ブヒッ、ブヒ…」湿り気を帯びた生温かい鼻息が吹き下ろしてくる。燃料のサンバルソースの酸味が、微細粒子となって僕の鼻腔を刺す。
地球外生命体の襲撃が始まってから数年。
奴らの正体は依然として霧の中だが、ひとつだけ確かなことがある。
―豚に対してだけは、警戒心を抱かない。
その奇妙な弱点を突くため、世界政府は生体型戦闘兵器《P.I.G.-01》を開発した。
目の前の巨体が、それだ。
ブー、ブー、ブー…
『《P.I.G.-01》がオーバーヒート気味です。急冷処置を開始します。周囲の方はご注意ください』
バコン!
上空の冷却ドローン群が展開し、ゴルフボール大の氷球を雨のように降らせた。氷はマシーンの皮膚に触れた瞬間、蒸気となって弾け飛ぶ。
「ブ、ブ、ブ、フ…フンガー」冷却が心地よいのか、豚マシーンは喉奥でくぐもった声を漏らした。
「さぁ、こちらが搭乗口です」スタッフの誘導に従い、僕は前へ進む。
目の前には、巨大な肛門がゆっくりと蠕動していた。
「ここ?」
「はい。生体インターフェースですので」
「これはきついって」
そう言いながら、僕は肛門に頭を突っ込んだ。
完
(本文543字)
あとがき
はらとけいさんの企画『せりふ三題噺』に参加させて頂きました。某アニメをイメージして書いてみました。色々ごめんなさい。ちょっと暴走しました。
▼今週のお題
■セリフ
「これはきついって」
■三題
・氷・サンバルソース・豚
#せりふ三題噺
#氷サンバルソース豚
#ショートショート
#豚型生体マシーン
#近未来SF
