ショートショート 「熱帯夜」 #シロクマ文芸部
熱帯夜を、雷鳴が切り裂いた。
ぽつぽつと降り始めた雨は、たちまち夜気を叩きつける猛打へと変わる。
轟音のなかに時折、悲鳴のような音が混じる。
居座り続けた熱気は失われ、濃密な雨の香りが満ちた。熱帯夜はボッコボコにされて音を上げたようだ。
すると、あれほど荒れ狂っていた雨は、嘘のようにピタリと止んだ。
さすがの雷神様も、連日の暑さにとうとうブチギレたのだろう。
室内に、静寂が戻る。
そのとき—窓枠の隙間から、湿った鉄臭さがそっと漏れてきた。
完
(本文217字)
あとがき
小牧幸助さんの企画『お題で書きはじめるnote』お題「熱帯夜」に参加させて頂きました。この前熱帯夜をテーマに書いたばかりだったので一瞬躊躇ったけど、神様も寝苦しいのだろうか?と思ってみたら話は降ってきた。アイデアはゲリラ豪雨に似ているのかもしれない。
