ショートショート 「七夕の歩幅」 #毎週ショートショートnote
一年ぶりに並んで歩き出したとき、彼との歩幅がわずかにずれていることに気づいた。
差を埋めようと歩調を速めると、胸の奥で息がひとつつまずく。
気配を察したのか、彼は歩幅を細かく刻んだ。
だがその瞬間、ふたりの時間は星の軌道のように微かに逸れ、互いの重力が拒み合った。
「やっと会えたな」と彼は言う。その声は、かつての夏より遠かった。
私は歩みを止めず告げる。「話があるの」
「何だ」
「これで最後にしようと思う」
彼の表情がひと呼吸だけ静止した。
「年に一度しか会えない罰の理由、覚えてる?」胸の奥で星の破片のような光が散る。
「天帝の呪いが解けないのは、あなたが今もしっかり働いていないからよ」
変わらない彼を愛し、同時に失望していた。
濁った天の川を渡り続けることはもうできなかった。
「さようなら」その言葉を置いた瞬間、運命の引力は静かに、私たちを引き離していく。
「これは…恋の超新星爆発や〜」去り際に彦星は叫ぶ。
私は躊躇なく歩幅を広げた。
完
(本文409字)
あとがき
田原にかさんの企画『毎週ショートショートnote』に参加させて頂きました。
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