【創作大賞2026】お前の人生を俺にくれ
脚本 お前の人生を俺にくれ
【あらすじ】
お笑い好きの高校生、佐久光也は同じクラスの原崎達規のセンスに惚れ、コンビを組もうと誘うが、光也に恋心を抱いていた達規に断られる。
大学でも断られ、二人の関係は完全に拗れてしまい、光也は自分は面白くないと自信を失ってしまう。
そんな時に後の相方になる真壁と出会い、救われる光也だったが、達規をライバルとしても、憧れとしてもみるうちに大事なものを見失ってしまうことになる……。
BL✕芸人✕青春、笑いを取るか愛を取るかの少し笑えて熱いストーリー。
【人物関係表】
佐久光也(29) 「奇人凡人」ツッコミ担当。
原崎達規(29) 「タイパニー」ボケ担当。光也の幼馴染
真壁直也(29) 「奇人凡人」ボケ担当。
山岸凌(29) 「タイパニー」ツッコミ担当。
光也の友達(17)高校時代の友人
サークルメンバーA(20)光也の仮コンビ相手男性A(30代)マッチングアプリで知り合った男性
芸人A(27) 光也と同期の芸人
〇東京の劇場 舞台(夕方)
お笑いコンビ、タイパニーの東京進出記念
ライブ。
出囃子と共に、舞台にタイパニーの原崎達
規(29)と山岸凌(29)が出てくる。山岸「どうもー」
達規「すー」
山岸は客席を見渡して。
山岸「いやーありがたいことに立ち見までぎっし
りですね」
達規「財布がいーっぱい!」
山岸、達規の肩を叩く。
山岸「最っっ悪な始め方すなよ!」
客席から笑い声。
山岸「あはは、ちゃうで」
客席から賞レース優勝の祝いの声がかか
る。
客A「優勝おめでとうー」
他の客数名からも祝いの声。
山岸「ありがとうございますー」
達規「この客入りは賞のおかげもあるんかな」
山岸「な、東京所属になっての初イベントで……こ
んなねぇ」
達規「売れたんちゃう?」
山岸「(笑って)自分で言うな!」
達規「そんな俺らにたかる蝿みたいな奴らが、今
日はきてまして」
山岸「おこぼれにたかる奴等ですね」
達規「こいつらでーす!蝿〜」
呼ばれ、出囃子と共にお笑いコンビ奇人凡
人の佐久光也(29)と真壁直也(29)、
他二組のコンビが出てくる。
真壁「誰が蠅なぁあん!」
芸人A「ゲストや、ゲスト!」
光也はツカツカと無言で達規に近づくと
達規の頭をガバッ!と持ち唐突にキス。
客席からファンの叫び声、舞台上の出演者
も驚く。
達規は目を皿のようにして光也を見つめ
る。唇と手を離した光也は軽く微笑んで。
光也「おめでとうな」
〇(回想)高校 教室
T「12年前」
休み時間を楽しむ生徒達。
友達とふざける光也(17)。
光也「ちょお待っててや、めっちゃおもろいのあ
るから」
光也、後方にある棚に鞄を取りに行く途
中、達規(17)がペンを走らせるノート
に目を止める。ノートには奇妙な猫の絵。光也「何書いてんの?おもろい顔の猫やな」
達規「あ?大喜利に使う絵や」
光也「え?!俺、大喜利番組見るん大好きやね
ん!お題なん?」
達規「ん?このラーメン屋呪われてるな、なんで
そう思った?ってお題があって、俺やったらこ
う答えるなーって書いてん」
光也「すご!なんて答えなん?」
達規「笑い死ぬで」
光也、大声で笑う。
達規、隠すように絵を描き仕上げる。
達規「よし、いくな。このラーメン屋呪われてる
な、なんでそう思った?えー看板猫が『マシ……
マシマシ』って鳴いてるから」
達規、吹き出しのついた猫の絵を披露。
光也、ガハハと笑って。
光也「おっもろ!ようこんなん思いつくなぁ」
達規、嬉しそうにニヤついて。
達規「……せやろ」
教室前方から光也に声がかかる
光也の友達「おーい、まだかー?」
光也「行くー!」
達規、慌てて光也の袖を引く。
達規「俺、学校でキチンレースとかもしててさ、
全部メモしてんねんけど……後で見る?」
光也、一瞬驚いたあと高らかに笑って
光也「お前めっちゃ変な奴やったんやな!最高やわ」
達規、光也の笑顔を見て驚く。
光也「じゃあ放課後な!いける?見してな!」
光也、去っていく。
光也の後ろ姿を呆然と見る達規。
達規「おう……」
〇(回想)公園(夕方)
光也と達規は椅子に座りノートを見てい
る。光也はお腹を抱えて笑う。
光也N「達のセンスはこの頃から異常やった。好
みど真ん中の笑いで俺はすぐに夢中になった」
達規「そんな?めっちゃ笑うな」
光也、笑い疲れて目尻の涙を拭きながら。光也「どうやったらこんなん思いつくん?天才や
な」
達規は、ニヤつき黙っている。
光也N「みっちゃんも面白いなぁとか言って欲し
かったけど、この頃から全然言わんかった」
光也「芸人なんの?」
達規「うーん、俺は変な事さえできたら会社員で
もなんでもええねんけどな」
光也「なれや!勿体ない!」
達規「……そうか?」
光也、少し恥ずかしそうに声をひそめ。
光也「俺はさ……芸人になりたいなって思ってんね
ん」
達規「へー」
光也「学校で言わんといてな、本気やったんやと
かって茶化されるん嫌やから」
達規「分かった、言わん(間)あれか?養成所に
入んのか?」
光也「いや、色々調べてんけどな、大学行ってお
笑いサークルに入ろうかなって。で、腕磨いて
オーディションとか受けたり大会でたりするね
ん」
達規「ふーん、その方法やったら親も何も言わん
な」
光也「せやねん、脱法や」
達規「ストレートに芸人なんのは違法なんや」
二人は笑う。光也、少し緊張して。
光也「俺ら相性ええなぁって思うんやけど」
達規、ドキッとして目が泳ぐ。
光也「コンビ組まへん?漫才とかの」
達規「あっ……コンビ……」
光也「嫌か?一緒にネタ考えたりせん?」
達規「いや、ちょっとコンビ組むんは想像つかん
かな」
光也N「これが初めて達にフラレた時」
光也「そっか……」
達規「でも、漫才のネタとかは考えてみたいな。
やろうぜ」
光也「ほんま!?日決めようや!めっちゃ楽し
み」
笑顔を交わす二人。
〇(回想)光也の実家 光也の部屋
畳に寝そべり、ノートにかき込む達規と光
也。
光也「聞いた事ないわ!!ほんならお前、レンチ
ンしたら何でも良うなるんか!」
達規、分からないくらい少しだけ笑う。
達規「いいやん。みっちゃんツッコミの方がええ
で」
光也「えー俺ボケたいけどなぁ」
光也、思いついたように立ち上がる。
光也「腹減った、おやつ食おう。達もいる?」
達規「おやつ?」
〇(回想)光也の実家 キッチン
炊飯器から、ご飯を丼にうつす光也。達規
は隣で見ている。
光也「めちゃくちゃ食うたろ」
達規「親に怒られへんの?」
光也「大丈夫やろ」
光也、おにぎりの準備をして握る。
光也「俺のおにぎり旨いでー……うっし!でき
た!」
特大のおにぎりを見せる、光也。
達規「でっかぁー」
光也、一口食べる。
光也「うまい!!!次、お前の分な。同じ大きさ
でいい?」
達規「いや……それがいい」
光也「えっ?」
達規「かじったやつ」
光也「はぁ?なにそれ、キっモいボケやな」
達規、口角を引きつらせて。
達規「そう……あ……キモいのが持ち味やから」
光也、ガハハと笑う、達規は大きく息を吐
く。
〇(回想)大学 お笑いサークル部屋
十数名のサークルメンバーが座り、大喜利
大会をしている。手にはホワイトボード。
光也(18)、達規(18)は隣同士で座っ
ている。
光也N「大学のお笑いサークルに入ってすぐ、俺
はめちゃくちゃに焦ってた。おもろい先輩がい
っぱいおったんもあるし、自分がおもんないっ
て事実を突きつけられたんもある」
達規、手を挙げ前に出て回答する。
司会「イケメンなのにモテない変田くん、その理
由は?」
達規「キスをチッス、セックスをロマンスと呼ん
でいる」
達規ホワイトボードを返して、回答を見せ
る。
キモいぞーなどヤジを飛ばして笑うサーク
ルメンバー達。
光也N「達の才能が皆にバレた、これが1番焦っ
たことやった」
達規、光也の隣に戻ると新しい回答を書き
だす。
横目に見る光也。
光也N「このおもろい人間、この才能は、俺だけ
のもんやのにって思った」
〇(回想)居酒屋(夜)
サークルの飲み会。
達規と光也は隣に座る。
達規「みんなアツいな」
光也「な!漫才論とか勉強なるわ」
光也、達規をちらっと見る。
光也「なぁ、誰かとコンビ組みたいとかできた?」達規「いまんとこないな」
光也は嬉しげ。
光也「そうか」
達規「みっちゃんは?」
光也「俺もないな……達とは勿論やりたいけど」
達規「あー……俺はまだピンでええわ。大喜利もピ
ンのコントも楽しいし」
光也、明らかに落胆。
光也「そっか……」
光也N「これが2回目にフラれた時」
達規、一瞬困ったようにした後、飲み物を
飲み切り替える。
達規「なぁ、好きなタイプってある?」
光也「恋バナ?達がぁ?どうしたん大学デビュー
すんの?」
達規「違うわ。なんとなく!」
光也「せやなぁ……好きなタイプ……俺より面白い
子かな?」
達規「(小声)面白い……」
光也「なに?」
達規「や、なんもない。ぼちぼち頑張ろうかなっ
て」
飲物を飲み干す達規。
光也、達規を睨みながら飲み物を飲む。
光也「俺も頑張るわ」
光也N「誰にも盗られへんようにするには、達か
ら組みたいって言うほど俺が面白くなるしかな
い……そう思ってた」
〇(回想)大学 キャンパス
T「1年後」
大学の敷地内、学生が行き交う様子。
光也N「ここからが最悪やった。俺はサークルの
奴と仮のコンビを組んでて、達はピンでどんど
んキモおもろくなっていってた。でもコンビの
勧誘はどうにかなるって高を括ってしまって
た」
爽やかな風貌の山岸凌(19)が建物を見
上げている。
〇(回想)大学 サークル 部屋
達規と光也は隣同士で座る。部長が皆の前
で立ち、新1年生を紹介。
部長の隣には山岸が立っている。
山岸「山岸凌です。高校から学生お笑いしてま
す、宜しくお願いします」
それを普通の表情で見る、光也と達規。
〇(回想)大学 お笑いサークル部屋
山岸、前に出て、Tシャツ、ブリーフにサ
ングラスでピンネタを披露している。
山岸「急いては事を仕損ずる!!落ち着いてもう
1枚!脱ぎます!」
光也N「山岸のネタは結構面白かった」
光也、隣で1人ゲラゲラ笑う達規を盗み見
る。
光也N「達の好みど真ん中……俺にはない……笑い
のセンス」
ネタが終わり山岸が座ると、達規が急いで
山岸に話しかけに行く。
光也はその後ろ姿を悔しそう見る。
〇(回想)駅前(夜)
光也、壁に背中を預け、イライラとした様
子。
光也「(小声)くそ!」
マッチングアプリで知り合った男性Aがや
ってきて、光也に話しかける。
男性A「みつくんかな?」
光也「あっ、はい……ショーゴさんですか?」
男性A「うん……ええやん。写真で見るより可愛い
な」
光也「あ……どうも……」
男性A「行こうか」
二人は歩き出す、その後ろ姿を遠くから偶
然見つける達規。
〇(回想)ラブホテルの前(夜)
光也と男性Aがホテルに入っていく。
それを呆然度見る達規。
〇(回想)ラブホテル内パネルの前(夜)
男性A、慣れた様子で部屋を選ぶ。
男性A「ホテルもはじめてなんだよね?普通の部
屋にしとく?」
光也、ボーっとして答える。
光也「あ…はい」
光也M「達はなんで俺で笑ってくれんねやろ……俺
そんなおもんないんかな」
〈フラッシュバック〉
達規と山岸が爆笑しながら話す様子。
◯(回想)ラブホテル エレベーター(夜)
光也と男性A、エレベーターに乗る。
男性A、光也の腰に手を回す。
〈フラッシュバック〉
達規の光也への眼差し。
光也、拳をぎゅっと握り、泣きそうな顔。 光也M「(泣き声)俺のもんにならんくせに……こ
んな時に出てくんな」
◯(回想)ラブホテル 部屋(夜)
ベッドで裸の光也の上に、裸の男性Aが覆
いかぶさっている。男性Aは少し笑って。
男性A「君、ネコの才能あるやん」
光也、ショックを受けたように目を見開く
と、静かに涙を溢す。
光也「(小さな声)そんな才能いるか……」
〇(回想)大学
大学の敷地内を早歩きで歩く光也。
光也M「まだ分からん、いけるかもしらん、俺も
だいぶネタ書けるようなった!……と思う……山
岸と勝負できるかもしれん……できるわけないけ
ど……いやアカン……達にちゃんと言おう」
光也、達規の後ろ姿を見つける。
達規の隣には、山岸がいる。
光也、呼吸を整えて。
光也M「大丈夫……大丈夫……同級生やん。うん、
コンビ組んだら、同級生コンビ言うてやってい
ける……俺にはあいつが必要や……俺はだっ
て……」
光也、二人に早歩きで近寄る。
光也「達!」
達規と山岸は立ち止まり振り返る。
達規の表情が曇る。
達規「……おう」
山岸「おはようございます」
光也「(山岸に)あぁ、おはよう。(達規に)ちょ
っといい?話したいことあんねんけど」
達規「無理」
光也「なんで?」
達規「話したい気分ちゃうから」
光也「いや俺……諦めたくなくて」
達規「な……」
光也、ばっと頭を下げる。
光也「(遮って)俺とコンビ組んでほしい!!今は
あんまり面白くないかも知れんけど、絶対俺
も、もっと面白くなる!!!めっちゃ努力す
る!お前が欲しい!(混乱しながら)あ……面白
いから……ずっとおもろいから、お前が一番面白
くて……やから……お願い」
達規、光也の頭を見ながら。
達規「……わるい、俺、こいつと組むねん」
光也、顔をあげる。
光也「(震えた声)なんで……?コンビ組むのは想
像つかん言うてたやん……そう言って、ずっ
と…俺のこと断ってきたやろ!!」
達規、黙っている。
光也「俺がそいつより才能ないからか?!俺がお
もんないからか!!なぁ!!
達規「違う」
光也「何が違うねん!!」
光也、達規に詰め寄る。山岸が間へ。
山岸「やめましょう、ここ大学やし」
山岸、光也をしっかりと見て。
山岸「コンビは僕が誘ったんです、すいません」
光也、山岸の目を見たまま涙を零すと、達
規を一瞥しその場を去る。
光也N「これが最後にフラれた時」
達規、光也の背中を眺める。
山岸「ほんまに俺で良かったん?」
達規「お前ほどおもろい奴おらんやん。他はない
から……」
山岸「そっか……ありがとう」
達規、溜息をつくとわざとふざけるよう
に。
達規「さっきの泣き顔見た?エロかったなぁー」
山岸、引きながら。
山岸「あー……ネタ以外もキモいんやな」
〇(回想)光也の一人暮らしの部屋(夕方)
光也、ベッドで仰向けになっている。
スマホを手に取り漫才の動画を開こうとす
るもやめる。
光也「勉強……もうええか」
インターホンが鳴り玄関に向かう光也。
光也「はい」
ドアを開けると達規が立っている。
光也、閉めようとするが、達規は慌てて中
に入る。
光也「何しにきてんねん」
達規「ちゃんと言わなって思って」
光也「何をや」
達規「なんで組まれへんか」
光也「聞きたないわそんなん!!」
達規「聞いてくれへんかったら、明日から毎日く
るからな」
光也「(溜息)キモいねんて……もう何?」
達規「好きや」
光也「は?」
達規「みっちゃんが好きやねん」
光也「……」
達規「コンビ組んだら、付き合われへんから」
光也「(鼻で笑う)そんな理由で?」
達規「は?そんな?」
光也、達規の襟首を掴む。
光也「そんなや!!たかがそんな理由で断ったん
かって意味や!!!」
達規「俺かてめっちゃ悩んだわ!!でも無理やっ
た!!お前以外アカンねん!ずーっと好きやね
ん!!」
光也「(大声)そんなん知ってるわボケーー!!!」
光也は乱暴に手を離す。
達規「え……」
光也「知ってた……お前俺のこといっつもエロい目
で見てたやん、知ってるよ……俺だって悩んだ……
でもお前と付き合うんじゃなくて、一緒にお笑
いがしかたった……」
光也、背中を向けながら。
光也「でていけ」
達規「もう付き合われへんの?」
光也「ああ」
達規「セックスもアカン?」
光也「キショいねん一人でしとけ」
達規「知らんおっさんとはしてたやん」
光也「な?!は、はよ帰れや!!!」
達規、帰らない。
光也、威勢のない声で。
光也「お願い。帰って……」
達規、光也を何度も見つつ出ていく。
扉が閉まる。
光也、涙を流し壁を一発叩く。
〇(回想)光也のマンション エレベーター
達規、エレベーターに乗る。
階数のボタンを押す手が震える。
閉ボタンを押すと同時に涙が止まらなくな
る。
達規「わからん……!!」
〇(回想)京都のライブハウス 舞台
T「1年後」
光也(20)とサークルメンバーAが、ま
ばらな客の前で漫才を披露する様子。
光也N「あの後もなんとなくお笑いサークルは続
けた……達とは話さんくなったけど」
〈フラッシュバック〉
サークル部屋で離れて座る光也と達規。
光也N「そんな時にあいつと出会った」
光也、出番が終わり、客席から立って舞台
を見ている。
出囃子と共に舞台にウサギの着ぐるみを着
た真壁直也(20)が出てくる。
椅子に座り、頭部の着ぐるみを取り外し、
フリップ芸を披露する。
光也N「後の相方……真壁直也」
光也、素直にケラケラ笑う。
光也「(笑いながら)なにこれ」
〇(回想)京都のライブハウス 楽屋(夜)
芸人や学生が談笑。帰ろうとする光也。
光也「お疲れしたー」
真壁が急に光也に声をかける。真壁は独特
な話し方。
真壁「お疲れちゃー空いてます?」
光也「はい?」
真壁「んーこの後!ご飯とか?呑みとか?」
光也「(笑う)いいですよ、この辺知ってます?」真壁「任せてちゃーん」
光也、笑う。
〇(回想)中華料理屋(夜)
炒飯を食べる光也と真壁。
光也「バリ旨い最高」
真壁「やろーほんまオススメ」
光也N「真壁は、高校の頃から京都のライブハウ
スを回っては勝手に前座をするような変な奴や
ったけど、話しはおもろいし良い奴やった」
真壁「あんさ、ツッコミって誰参考にしてるん?」光也「誰も?知らん間に影響とかは受けてるかも
知らんけど」
真壁「ふーん」
光也「俺普段ボケやしな、今日はピンチヒッター
できただけやで」
真壁、急に立って水を零す。
真壁「(叫ぶ)どぅええええーーーうそでっしゃろーー?!!!」
光也「うるさいうるさいうるさい。あー零して」
光也、テーブルの水を拭く。
真壁「間(ま)、めっちゃ好きやったで、間!気持
ち良かったもん」
光也「へー嬉しい」
真壁「ほんまやって!向いてる!言われたことな
い?」
光也、嫌そうに。
光也「……あるよ、うんこみたいな同級生に」
真壁「そのうんこ正しい、正しいうんこ」
光也「(笑って)大人が何回うんこって言うねん」真壁「漫才するなら、佐久くんがええわ、佐久く
ん言いづら」
光也「えー京都かぁ」
真壁「俺が行くやん大阪ー」
真壁、ごちゃごちゃの鞄の中を探る。
真壁「これー……漫才するならこうするーって思っ
て書いたノートやねん」
真壁、ノートを取り出し光也に渡す。
光也「へー」
真壁「これ読んでみて。こうツッコんだらもっと
面白くなるなーっとかって考えてもうたら?連
絡ほしい」
光也「え?」
真壁、立ち上がり鞄とキャリーケースを手
に取る。
光也「え?」
真壁「ほな!トイレ行ってる間にお金払っといた
しー」
真壁、ツカツカと店をあとにする。
光也「えっ?!ちょっと待って!!なに?……え
ー」
光也、ボロボロのノートの表紙を見て天上
を見上げる。
光也「……はかられたんか……」
光也N「真壁が京大のかしこやと分かったんは、
だいぶ先のことやった」
〇(回想)光也の一人暮らしの部屋(夜)
スマホを触る光也。真壁から連絡の通知。
チャット画面には何往復かの楽し気なやり
取り。
真壁からの「不動産よく分からん明日来て」
の連絡に首をかしげる光也。
〇(回想)不動産屋
光也が入ってくる。
それに気づき、カウンターに座っている真
壁が手を上げる。
真壁「こっちー」
光也、席にかける。
光也「おつかれ、どうしたん?」
真壁「おつかれ。(店員に)この人です」
真壁、光也を指差す。
光也「えっ?」
店員「あ、同居人の方ですね?では身分証のご提
示をお願い致します。あとこちらにサインです
ね」
光也「はぁ?!」
真壁、光也の口を塞ぐ。
真壁「さくちゃん発作?!」
光也「(少し笑いながら)発作ちゃうわ。どういう
こと?」
真壁、真顔で。
真壁「ん?俺が大阪来る言うたやん?約束守った
んやからそっちも責任とらんと……一っ生な」
光也、ゾクリとして笑う。
光也「……やったるわ」
光也、免許証を出してカウンターに叩きつ
けサインを書き始める。
真壁「男やんかーええでー勢いや勢ーい」
〇(回想)光也と真壁の部屋(夜)
引っ越しが終わり片付いたリビングにのび
のびと座る光也と真壁。
光也「終わった!……腹減ったな、蕎麦食うか蕎
麦」
光也、立ち上がり、キッチンへ向かう。
真壁「ええやーん、用意してるん?」
光也「してるで」
真壁「さっすがー任せるわー」
冷蔵庫から材料を出す光也の後ろ姿に声を
かける真壁。
真壁「食い終わったらネタ作りできるな」
光也、手を止め、振り向かず微笑む。
光也「……せやな」
光也、冷蔵庫からネギを出す。
笑顔の真壁。
〇(回想)光也と真壁の部屋(夜)
スマホを三脚に置き、録画しながら漫才の
練習をする光也と真壁。
光也N「真壁は努力の天才やった」
コタツ机でネタを書く、真壁。
〇(回想)劇場 舞台(夕方)
光也N「1日中ネタを書いて、そしてとにかく場
数を踏ませてくれた」
漫才を披露する光也(21)と真壁(2
1)。
光也「ありがとうございますー奇人凡人と言いま
す宜しくお願いしまーす」
真壁「宜しくお願いしまーす、イケメンのほうが
佐久で、ワラジムシのほうが……!真壁や
で〜!」
光也「すんごい卑下するやん!ほんで俺のハード
ルをあげるな」
真壁「じゃあワラジムシの方が真壁でー、ヌタウ
ナギの方が佐久〜?」
光也「すっごいランクダウン」
光也N「やるだけじゃなく、プロの漫才も学生漫
才もいっぱい見に行った……達のも」
漫才を披露する達規(21)と山岸(2
1)。
光也と真壁は袖から達規と山岸の漫才を見
ている。
山岸「どうもータイパニーですー宜しくお願いします」
達規「お昼ってセックスに最適やんか?」
山岸「漫才はじまってすぐに言うことやないやろ」達規「今日のお客さんは俺等の名前より、セック
スに興味あるから」
山岸「お客さんのことをなんや思てんねん!たぶ
んそうやけど」
光也、ガハハと笑い、ポツリと。
光也「(小声)達のや」
真壁「今のツカミが?なんで分かるん?」
光也「……同級生やから」
また漫才に魅入る光也、横目で訝しげにそ
れを見る真壁。
〇(回想)光也と真壁の部屋(夜)数カ月後
1人帰ってきた光也、とんでもなく散らか
った部屋を唖然と見渡す。
真壁は無心でコタツ机でネタを書き続けて
いる。
光也「ほんま、どうやったら1日でこんな汚なん
ねん」
光也は、慣れた様子で手に持てそうなゴミ
を数個持ちキッチンへ。
光也がゴミを捨てると、後ろの真壁が口を
開く。
真壁「おつかれちゃー、代打のライブどうやっ
たぁ?おもろい奴おったぁ?」
光也、真壁に背を向けたまま。
光也「まぁまぁかな」
真壁「ほぉーん。同級生のは?タイパニーってコ
ンビの」
光也「……ぶっ飛んでたわ、相変わらず……おもろか
った」
真壁「ふーん……路線変えんまま行くんやな」
真壁少し考えたあと、シャーペンをパン
っ!と置く。
真壁「合わせたいネタあるから、今からやるで」
光也、くるっと振り返り笑顔。
光也「おう、任しとけ。形なるまでやろう」
真壁、立ちがり真っ直ぐ光也を見る。
真壁「ほんっま……書いたかいあるわ」
光也「俺にはこれしかできんから(小声)おもんな
いしさ」
真壁「俺の相方がおもんないわけないやろ」
光也、悲しげに。
光也「ありがとう」
真壁、溜息。
真壁「……やろか」
光也は真壁の元へ歩いていく、真壁はノート
を光也に渡す。二人は見つめ合い、芸人の目
になる。
〇光也の一人暮らしの部屋(朝)
T「3年後」
棚に無造作に置かれた写真。
光也N「大学在学中、努力して努力して努力し
て、俺等は学生のお笑い大会で3位を取ること
ができた……達等は優勝した」
写真には優勝カップと賞状を持った達規と
山岸、3位の賞状を持った光也と真壁、2
位の賞状を持った女性コンビ。
光也、でかける用意をしながら、時々ネタ
の台本をスマホで見て練習をしている。
光也「鞄パンパンやからや!……(溜息)アカンかな
ぁ」
首を捻る光也。
〇劇場 外 喫煙所
晴れた空に煙草の煙がのぼる。
光也N「学生のお笑い大会後、声をかけてもらっ
た事務所に入って俺等は芸人になった。長くな
ったけど、これが俺の全て」
吸い殻入れでタバコの火を消す光也。
劇場の中からドアを開け、芸人Aが光也を
呼ぶ。
芸人A「佐久ーもうそろそろ手売りいこー」
光也「うーい」
〇劇場 廊下
光也がドアを開け中に入ると、楽屋から出
てきた達規が立っている。
光也は目をあわせない。
達規の前を通り過ぎる光也、その後ろ姿を
見てしみじみと達規が呟く。
達規「今日もエロいな……」
〇劇場前 繁華街
光也と芸人Aはチケットを手に、道行く人
へ声をかける。
光也「夕方からライブします。良かったら来てく
ださい」
芸人A「お笑いのライブ、興味ない?」
光也「売れた?」
芸人A「ぼちぼち。まぁ俺顔良いから」
光也「ほんまにそれ大きいよなー」
芸人A「あのさ……なんでタイパニーの原崎とお前
って仲悪いん?」
光也「えっ?」
芸人A「いや、バレバレやで、お客さんにもたぶ
んバレてるし」
光也「えー……あー……同級生やねん」
芸人A「根深いやつ?」
光也「案外そうでもないけどな、もう今更難しい
わ」
光也、チケットを見て呟く。
光也「ちゃんとせななぁ」
〇劇場 舞台(夕方)
お笑いライブのトークコーナー。
達規、山岸、光也、真壁、他数組の芸人達
はパイプ椅子に座っている。
モニター画面には『相方のヤバイところ』
山岸は親指で隣の達規を指して。
山岸「こいつ金銭感覚がほんっまにヤバくて、今
の全財産千円ですよ千円!」
客席から、えーっという声。
山岸「あったらあっただけ使うし、俺に借金する
し」
先輩芸人「何に使うん?」
達規「競馬とか、あとよう分からんうちに牛丼屋
で二千円くらい使ったりします」
先輩芸人「分からんうちってなんやねん、お前の
意思で牛丼買うてんねん」
光也、達規を指さして。
光也「こいつ、ずっとおかしいですよ。高校ん時
なんですけど、スボンの裾を毎日少ーしづつ切
っていって、いつ先生に怒られるかっていうゲ
ームを1人でしてました」
先輩芸人「昔からヤバイやん!!」
達規「言うなや!!キモい思われるやろ!」
光也「お前ずっとキモいねん!!」
〇劇場 舞台(夜)
コーナーが終わり、達規と山岸は舞台で漫
才を披露している。光也と真壁はそれを楽
屋のモニターで見ている。
光也、沢山笑ったあと切なげにポツリと。光也「……いいなぁ」
真壁は心底嫌そうに光也を見る。
〇劇場 楽屋(夜)
帰る準備をしたり、ふざけあう芸人達。
光也、芸人Aと話している。
真壁、鞄を背負いながら。
真壁「佐久ー、話すでー」
光也「んー、外?」
真壁「おん」
光也と真壁、楽屋内の芸人達に挨拶し去
る。
〇公園(夜)
光也、ベンチに腰をおろし、先程のタイパ
ニーのネタを小声で口ずさむ。
光也「あいこでしょ、愛子でしょ?!」
光也、笑い、タバコに火をつける。
真壁立ったままそれを見ている。
真壁「好きやな」
光也「そうでもないで、そんな吸ってないやろ?」真壁「ちゃうよ、原崎よ」
光也「はぁ?」
真壁「お前ずーっと達ー、達ー言うて原崎の書く
ネタに夢中やん」
光也「夢中ちゃうわ、今ちょっと頭に残ったから
言うてただけやろ」
真壁「夢中やろ!アッホみたいに大学の頃からず
ーっと!!」
光也「喧嘩売ってんのか」
真壁「売っってる!!」
少し怯む光也。
真壁「目キラッキラさせてるやん、あいつらのネ
タに!!」
光也「な、なんやねん、突っかかんなよ!」
真壁、大声で叫ぶ。
真壁「突っかかるやろ!相方が他の芸人ばっかり
見てて気分いいわけないやろ!」
光也、驚き黙る。
真壁「ずーーっとさ!!俺の片思いなんか?!!
なぁ?!俺だけがお前の腕に惚れてるん
か?!!……5年も!!なぁ!!お前おもろする
ためにネタ書いて……!」
真壁、泣きそうな顔と震えた声で叫ぶ。
真壁「俺のネタだけみろやぁ!!!それができん
のなら解散じゃー!!!」
真壁、言い切って涙を零す。
光也、慌てて煙草の火を消し立ち上がる。
光也「ごめん、解散……ごめんごめん……違う」
真壁「なにがや……!」
光也、真壁の前まで歩いていくも顔が見れ
ない。
光也「達は違うねん……ほんまごめん……俺……」
光也、泣き顔でしゃがみ込む。
光也「ごめん……ネタ、書いてもらってんのに……
(泣き声)俺、おもろないのに……」
真壁、光也の前にしゃがむ。光也は泣いて
いる。
光也「俺な、ほんまは達に何回もコンビ、フラれ
てて……」
真壁「せやと思った……ほんで今も好きなんやろ」光也「うん……あいつずっとおもろくて……悔し
い……俺がおもんないから組んでもらえんかっ
た……ほんま悔しい」
真壁「お前はおもろいって」
光也「(泣いて)おもんない!!お前の書いたネタ
がおもろいだけで!!俺は全然」
真壁「(遮って)おもろいて!努力してるやん!……
俺も周りも知ってる……原崎がなんやねん!ずー
ーっと横におる俺がおもろい言うてんねん
!!!信じろやーー!!!」
光也、号泣してしまう。真壁は待ってい
る。少し落ち着いついた光也。
光也「そっか……ごめん……俺……めちゃくちゃ余所
見してたんやな」
二人は目を合わせる。
真壁「うん」
光也「……もうお前だけ見るから」
真壁「(溜息)ずっと一緒にさ、漫才やるには売れ
てウケ続けるしかないやん?やろ?」
光也「うん……」
真壁、からかうような笑顔で。
真壁「ほな、また一緒に住むか」
光也、涙をふきながら笑顔。
光也「それは嫌やわ」
二人は笑う。
〇漫才賞レース会場 舞台袖
T「3年後」
光也と、真壁の後ろ姿。
光也「いける」
真壁「五百回はしたネタや」
光也「面白くやらん方が難しいな」
二人はお互いの肩をポンポンと叩く。
〇漫才賞レース会場 舞台
華やかな舞台、出囃子が鳴り、光也と真壁
が登場し漫才をする。
光也「どうもー奇人凡人ですーよろしくお願いし
ます」
真壁「まあす!突然なんやけどさ?あのさ東京の
お土産〜とか大阪のお土産〜とかってあるやん
っか?」
光也「うん」
真壁「お土産〜ってさ」
光也「さっきからげ〜って何?げー〜て伸ばさん
ねん気持ち悪い」
真壁「俺お土産〜になりたいなぁーって」
光也「げーやめろ!ほんでお土産になるってなん
やねん」
真壁「もらったら誰でも嬉しくて?地方感あっ
て?当たり障りのない?俺じゃない?」
光也「当たり障りしかないねん!!!」
光也と真壁のネタが終わると、次に達規と
山岸が漫才をする。
出囃子と共に出る山岸。
山岸「タイパニーですよろしくお願いします。僕
が山岸といいまして」
達規、バイクに乗ってる動作で登場し、山
岸に強くぶつかる。
山岸「今、バイクで僕を跳ねたのが原崎ですー犯
罪じゃ犯罪」
達規「朗報、ここ法律適用されへんねん」
山岸「無法地帯や思てる?」
達規、ズボンを脱ぎながら
達規「ウケたらなんでもええとこやで」
山岸「優勝する気ないんか」
山岸、達規の頭を強めに叩く。
全ての漫才師達のネタが終わり、出演者が
舞台に並ぶ。ドラムロールが鳴る。
司会者「優勝は!」
ライトが光也と真壁を照らす。
司会者「奇人凡人です!!」
光也は泣き出し、二人は肩を組む。
光也、感想を聞かれて。
光也「真壁を信じてやってきたおかげです……ほん
まありがとう」
真壁も少し泣いてしまい、番組は終了す
る。
〇漫才賞レース会場 舞台裏
歩きながら電話をしている光也。
真壁、その隣でスマホを触る。
真壁「めっちゃお祝いの連絡きてるーありがたー」
光也が電話を切って前を見ると、達規と山
岸が二人で悪態をついている。
達規、光也に気ずき、嫌な顔。
光也はツカツカと達規に近づき、急に達規
の胸元を掴むと耳元で囁く。
光也「辛気臭いな。好きな奴が優勝したんやか
ら、もっと喜べや」
真壁、光也の肩を引っ張って。
真壁「いらんことすんな。ごめんやでー山岸」
山岸「えっ」
光也、達規から手を離し、真壁と共に楽屋
に入っていく。
山岸「大丈夫か?」
達規、下唇を噛んでから。
達規「俺は小さい男や……」
少し心配そうな山岸。
達規、囁かれた耳元を触って、わざと明る
く。
達規「ま!囁きというおかずも増えたし、ええ
か!」
山岸、ハハハ!と笑って。
山岸「無理すんなよ!アホ」
少し照れる達規。
〇劇場 楽屋(夜)
ライブ終わり、芸人達が各々過ごしてい
る。
光也、達規は離れて別の芸人と話す。
普段は来ない大御所の芸人、町田がやって
くると、皆立ち上がり挨拶。
町田「おつかれ、呑みに行ける奴皆おいでや、六
屋で呑むしな。後で後藤もタイセイも来るわ」
沸き立つ楽屋。大勢が参加することに。
〇居酒屋 六屋(夜)
芸人で溢れかえり、ガヤガヤと楽しい様子
の店内。町田が光也を呼ぶ。町田の隣にい
た芸人Aは違う所へ。光也は
町田と達規の間に座る形になる。
町田「優勝おめでとう。形になったな」
光也「ありがとうございます」
町田「奇凡(略称)は平場もいけるから、もっと
テレビも増えるやろしな、頑張りや」
町田は、反対の芸人と話しはじめる。
光也は隣の達規を見ようともせず席を立と
うとする。
達規は慌てて光也の服を掴み話しかける。達規「あの時のネタあるやん!!優勝したや
つ!!」
光也「……はあ」
達規「……面白かった。高校から見てきて一番」
光也、驚き目を見開くが静かに。
光也「……そうか」
芸人A、戻ってきて無理矢理、光也と達規
の間に座る。
芸人A「めっずらし、喋ってるやん、仲直りした
ん?」
黙る光也と達規。
芸人A「ちゃうん?(光也に)ほな仲直りしたく
なるくらいおもろい事教えてあげよか?」
達規、焦り素早く芸人Aの口を塞ぐ。
達規「うわぁぁ!アカンっ!!アレやろ?!ほん
まアカンで!」
光也、力で達規を芸人Aから剥がす。
光也「なになになに?!聞きたい!」
達規「やめろ!!!」
芸人A「こいつ家でラブドールと暮らしてんねん
けど」
光也「へっ、キモ」
達規、絶句。
芸人A「(笑いを堪えて)に、人形以外抱いたこと
ないねんて」
光也、芸人A爆笑。
達規「うーーーーさいっっあく」
光也、ひいひい笑いながら。
光也「キモ過ぎる……お腹痛い、面白い」
達規「暮らしてるとかじゃなくて、持ってるだけ
やねんて!あーー!!」
達規、床に横たわり頭を抱える。
光也「お前が持ってるだけでなんかキモいねんっ
て」
笑い泣きした涙を拭く光也を達規は横たわ
りながら見る。
〇飲み屋街 路上(夜)
2次会に向かうメンバーと
帰るメンバーで別れている。
酔っ払いながら歩く光也と隣にいる達規。
光也「食うた呑んだ!いっぱい褒められた!最っ
高やな」
達規「ほんま最高やで……みっちゃんと普通に話せ
るし」
達規は光也を見る。
光也「……またそんな目で……(溜息)話すだけで
満足なんか?」
達規「何?2軒目?」
二人は足を止め、見合う。
光也「違うやん」
達規「何?」
光也「童貞卒業させたろか?」
達規「童貞……えっ」
〇達規の部屋(朝)
ベッドで寝ている光也と達規。
達規、飛び起き、光也を見て叫ぶ。
光也起きる。
光也「うるさい」
達規「ご、ごめん」
光也、達規に身体を向け、寝ぼけ眼で話
す。
光也「お前さ」
達規「うん」
光也「昨日めっちゃ必死やったな(思い出し笑
い )火事くらい慌ててた」
達規「しゃあないやろ」
光也、カラカラ笑う。
光也「めっちゃ嫌やったから、次は落ち着いてや
れよ」
光也、反対側を向く。
達規「ああ、次……次ーー?!!!!」
光也「うるさい!!!」
〇達規の部屋(朝)
達規、歯磨きをしながら洗面所から
出てくる。光也、ベッドの上でラブドール
と肩を組んでいる。
達規、むせる。
達規「なな、なんで?!なんである場所分かった
ん?!」
光也「(笑いを堪えて)こ、この人が噂の同居
人?」
達規「いや、だから持ってるだけで暮らしてへん
て!」
光也「紹介して、名前は?」
達規「……みっちゃん」
光也「最悪」
光也、素早く窓を開けてラブドールを外に投げようとする。慌てて駆け寄る達規。
達規「アカン!!やめろ!これはしゃあないねん
て!」
光也「何がしゃあないねん!キモ過ぎる!!」
達規「しゃあないねんて!……俺……みっちゃんでし
か勃たへんねん」
光也、驚愕の表情。
光也「えっ……えっ?!」
〇達規の部屋(夜)
T「一ヶ月後」
光也、テレビを見る達規に手作りの大きな
おにぎりを1つ手渡す。達規、一口光也に
食べさせ、それを食べはじめる。光也は嫌
な顔。ご機嫌にゆらゆら揺れる達規を見て
光也は少し笑ってしまう。
光也「ほんまキモいねんって」
〇達規の部屋(夜)
芸人仲間とたこ焼きパーティーをしている
達規と光也。大盛り上がり。皆、満腹に。
達規はざっと立ち上がって。
達規「よし、セックスしたいからもうそろそろ帰
ってくれ」
光也、達規の頭を叩く。
芸人A「今から女くんの?ラブドールがある部屋
に?」
皆、笑う。
仲間が帰り、静まる部屋。
達規、ベッドに座りスマホをいじる光也の
横に座り自然にキス。
光也「慣れたな……下手やけど」
達規「伸びしろしかないやろ」
二人は笑い、もう一度キス。
〇達規の部屋(夜)
T「二ヶ月後」
パンツ1枚でベッドにいる光也と達規。
光也「うしっ」
光也、ベッドから降りズボンを履き、タバ
コを手に取りキッチンへ。換気扇の下でタ
バコを吸いながら何でもないように話す。
光也「あのさ俺等、拠点東京になるから」
達規「は?聞いてないねんけど」
光也「うん、言ってない」
達規「……」
光也「こんな仲なって勿体ないけどな、お前とは
サヨナラや」
小さく笑い、鼻歌を歌いだす光也。
達規、ベッドから降り光也の前に立つ。
達規「サヨナラってなんやねん。俺等だって東京
の劇場もたまに行くし、みっちゃんも大阪来る
やろ……なんでサヨナ」
達規の顔にタバコの煙をかける光也。
光也「サヨナラや……悔しかったら追いかけてこ
い」
光也、タバコの火を消して、達規の顔を見
る。
睨む達規。
達規「一回も越されたことないわ」
笑う光也。
光也は服を着て鞄を持ち、家を出る。
〇東京の劇場 舞台(昼)
東京の劇場メンバーに囲まれ、どこかぎこ
ちない光也と真壁の様子。
〇テレビ局 会議室
達規と山岸が打ち合わせ待ちで、資料を前
に座っている。
山岸「お前最近競馬してないな」
達規「やめた。ラブドールも捨てたしな、真面目
にお笑いやんねん」
山岸「えー……怖ぁ……」
達規「新しいネタまた書いてん、送るから見て」
達規、スマホでネタを送る。
山岸、スマホで確認して、ハハハと笑う。
達規「好きやろ?!お前好きやと思った!」
山岸「(ニヤニヤ)ここ…」
山岸、スマホで書き直して見せる。
それを見た達規はゲラゲラ笑って。
達規「おもろいわ。こんなん誰も笑わんくても俺
だけ笑ってる自信あるわ」
山岸「いつもやんけ」
達規「ほんま一生俺にだけ向けてボケてくれ」
山岸、少しだけ驚いたあと。
山岸「……おお、葬式でもピンネタしたるわ」
達規、楽しげに笑う。
山岸はそれを見て溜息。
山岸「足並み揃えるんやったら、俺も走らなアカ
ンな」
〇劇場・廊下・公園・家
達規と山岸が何度も場所を変え、汗をかき
漫才の練習をするモンタージュ。
〇テレビ局 スタジオ収録
バラエティ番組で奇人凡人が奮闘する様
子。
〇劇場 楽屋前 廊下
達規と山岸が激しく喧嘩しながらネタ合わ
せ。
〇光也の部屋(夜)
テレビ画面には達規と山岸。それを見る光
也。達規と山岸の頭上には紙吹雪が舞い降
りる。
〇東京の劇場 舞台 (夕方)
タイパニーの東京進出記念ライブ
出囃子と共に、舞台に達規と山岸が出てく
る。
山岸「どうもー」
達規「すー」
山岸は客席を見渡して。
山岸「いやーありがたいことに立ち見までぎっし
りですね」
達規「財布がいーっぱい!」
山岸、達規の肩を叩く。
山岸「最っっ悪な始め方すなよ!」
客席から笑い声。
山岸「あはは、ちゃうで」
客席から賞レース優勝の祝いの声がかか
る。
客A「優勝おめでとうー」
他の客数名からも祝いの声。
山岸「ありがとうございますー」
達規「この客入りは賞のおかげもあるんかな」
山岸「な、東京所属になっての初イベントで……こ
んなねぇ」
達規「売れたんちゃう?」
山岸「(笑って)自分で言うな!」
達規「そんな俺らにたかる蝿みたいな奴らが、今
日はきてまして」
山岸「おこぼれにたかる奴等ですね」
達規「こいつらでーす!蝿〜」
呼ばれ、出囃子と共に光也と真壁、他二組
のコンビが出てくる。
真壁「誰が蝿なぁーん!」
芸人A「ゲストや、ゲスト!」
光也はツカツカと無言で達規に近づくと達
規の頭をガバッ!と持ち唐突にキス。
客席からファンの叫び声、舞台上の出演者
も驚く。
達規は目を皿のようにして光也を見つめ
る。
唇と手を離した光也は軽く微笑んで。
光也「おめでとうな」
達規、腰を抜かす。
山岸はそんな達規を見て大喜び。
山岸「わー!!見て!見て!めっちゃ珍しい!!変なリアクションしてる〜!!」
真壁は山岸を見て。
真壁「歪んでんなぁ〜」
〇飲み屋街 路上(夜)
打ち上げに向かうメンバー達。
達規と、光也は二人で並び、集団から少し
遅れて歩く。
光也「……今日は真壁の奢りやて」
達規「一銭もないから助かる」
光也「競馬やめたんやろ?金どこに消えてんね
ん、怖いわぁ」
達規、急に立ち止まる。
光也も足を止めて達規を見る。
光也「どうした?」
達規「今日キスしてくれたやん、あれ一生抜ける
わ」
光也「キっモ!」
達規「追いつくーの答えやろ?賞とかしょうもな
いけどな」
光也「珍し、おもんない事言ってる」
達規「(溜息)今からもっっとおもんない事言うからな」
光也、達規に身体を向ける。
光也「何?今更コンビ組んでくれって?」
達規「アホか……ちゃんと言わせろ」
達規、少し緊張して。
達規「あー……好きや。一生好きやと思う。ケツ、
顔、 手、全部やな、全部好きで困ってる。高校
からずっと。可哀想やろ?やから毎日キスさせ
てくれ、抱かせてくれ。どうにか……俺のもん
になってほしい」
少しの間。
光也「……無理やな」
達規「はぁ?」
光也「覚えてへんのか。好きなタイプは『俺より
面白い子』や……(泣き声)でなおせ」
達規、大慌て。
達規「まままま、マジで?!ほんまに言うて
る?!ほんっまに?!あんな告白したのに?!
嘘や?!」
光也、ハハハ!と笑って。
光也「嘘や……可哀想やからな、付き合うよ」
達規、息をのんだあと大声で。
達規「わあああああ!!!!やったああああ
あ!!!!!」
光也「うるさいうるさいうるさい、迷惑やから」達規「よっしゃあ!!!もう全っ然!!この前の
賞より嬉しい!!」
光也「そんなわけないやろ」
達規「みっちゃんおもろいからさ、諦めてコンビ
組もうかと思った事もあったけどな……ほん
ま……組まんで良かった」
達規、笑顔。
〈フラッシュバック〉
高校時代の達規の笑顔。
光也、少し驚いている。
達規「いえー!人の金でめっちゃ呑も!」
達規、前方にいる山岸、真壁の所へ走って
いく。
〈フラッシュバック〉
高校時代の達規を見ている時の光也。
光也、達規の後ろ姿を見ながら。
光也「お互い不器用やったな……(間)あーアホらし!!」
光也、笑って前方の山岸、真壁、達規の所
へ駆けていく。飲み屋街の中の光也、達
規、真壁、山岸の後ろ姿。
〈了〉
読んでくださりありがとうございました。
