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澪(みお)ーー心の音 9 ChatGPT共同制作



第九章 夏休みのハンコ


七月になると、教室の空気まで少し浮き足立っていた。 

「あと三日で夏休みだ!」

誰かがそう言うたびに、教室のあちこちから嬉しそうな声が上がる。

窓の外では、セミが元気よく鳴いていた。

夏がもうすぐそこまで来ていた。

先生から一枚の紙が配られる。

「夏休みの生活計画表」

私は鉛筆を握りしめ、一生懸命予定を書き込んだ。 

朝六時に起きる。

ラジオ体操へ行く。

宿題をする。

午後から遊ぶ。 

夜ご飯を食べたら、少しだけテレビを見て8時に寝る。

子どもながらに、
「今年の夏休みは、ちゃんと計画どおりに過ごそう。」

そう本気で思っていた。

でも、その計画は三日もしないうちに、どこかへ消えてしまった。


夏休みになると、毎朝首からカードをぶら下げて、美結(みゆ)と待ち合わせの公園へ向かう。 

ラジオから流れてくる音楽に合わせて体を動かす。 

眠そうな子。

真面目に体操をする子。

ふざけながら笑っている子。

みんなそれぞれだった。

体操が終わると、町内会のおじさんが机の前に座る。 

「はい、次。」

カードを差し出すと、
ポン。  

赤いハンコが一つ増える。

それだけなのに、宝物が増えたような気がして嬉しかった。

家へ帰ると、朝ご飯を食べるのもそこそこに外へ飛び出す。

「澪ーー!」 

美結が虫取り網を持って待っている。 

「湊、早く!」

弟の湊(みなと)も慌てて家から飛び出してきた。 

三人で裏山を駆け回る。

オニヤンマを追いかけ、
トノサマバッタを捕まえ、
汗だくになって笑い転げる。

秘密基地では、何時間いても飽きなかった。

夏の一日は、驚くほど早く過ぎていく。

夜になると、町内会の広場には赤い提灯が並んだ。


子ども盆踊りが始まる。
太鼓の音に合わせて輪になって踊る。

踊りが上手だったわけじゃない。

でも最終日にもらえるお絵かき帳が嬉しくて、毎日のように通っていた。

土曜日の夜だけは、もう一つ楽しみがあった。

晩ご飯を食べ終わると、家族みんなでテレビの前へ集まる。

『8時だョ!全員集合』


家中が笑い声でいっぱいになる。

父も母も、おばあちゃんも笑っている。

あの時間だけは、家族みんなが同じテレビを見て、同じところで笑っていた。 

今思えば、あれも幸せな時間だった。 

そういえば宿題もあった。

夏休みが始まる頃には、
「すぐ終わる。」

そう思っていたのに、気づけば遊ぶことばかり。

夏休みも終わりに近づくと、机の上には真っ白な宿題が山積みになっていた。

「澪、終わったのか?」

父が笑いながら聞く。

私は黙って首を横に振る。

自由研究もまだ何もしていなかった。

父は押し入れから厚紙を持ってきて、
「よし、一緒に作るか。」
と言った。

ハサミで切って、のりで貼って、色を塗る。

気がつくと、厚紙でできたロボットが机の上に立っていた。

学校へ持って行く時は、少しだけ誇らしかった。

父がほとんど作ってくれたことは、胸の中だけの秘密だった。

夏休みが終わる前になると、毎年思う。 

「来年こそは、宿題を早く終わらせよう。」

でも、その約束が守られたことは一度もなかった。

子どもって、そんなものなのかもしれない。 

ラジオ体操のハンコ。

虫取り。

秘密基地。

盆踊り。 

家族みんなで笑った土曜日の夜。

そして、最後に慌てて終わらせる宿題。

あの頃の夏休みは、毎日が冒険で、毎日が宝物だった。



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