地方移住について書いてみた 01
はじめに
私は3年前、群馬県高崎市の郊外にある妻の実家へ移住してきました。子供はいないので、初老の夫婦二人です。家賃が浮くこと。ガーデニングをしたいこと。それから、おそらく私のほうが先に逝くだろうから、少し内気なところのある妻を、今のうちに地元のコミュニティへ戻しておきたかったからです。
義両親は20年近く前に亡くなっています。家は築50年、そのうち空き家だった期間が約20年。いや、これが予想以上に老朽化しておりまして……。
おっと、物件選びについては、あとで詳しく書きます。ここで言っておきたいのは、私たちの場合、まったく縁のない土地へ飛び込んだわけではないということです。妻にとっては地元ですし、親戚もいます。そういう意味では、地方移住の語り手としては少し物足りないかもしれません。それでも、古びた家を直しながら暮らし、昔ながらの町内会に入り、地方特有の人間関係や行政の仕組みに触れてきました。地方移住を考えている方の参考になれば幸いです。
地方移住の現状
地方移住というと、大きくいくつかのパターンがあります。
都会を離れ、縁のない田舎へ移住して、のんびり老後を過ごす。
親の介護などをきっかけに故郷へ戻る。
子供を自然の多い環境で育てるために移住する。
この中で、テレビ番組などが好んで取り上げるのは、やはり最初のパターンでしょう。都会で長く働いた夫婦が、古民家を買う。畑を始める。薪ストーブを置く。近所の人から野菜をもらう。そんな映像です。ただ、テレビ番組は生活の全部を映しているわけではありません。テレビに映りたくてやってくるお客様やさくらもいるでしょう。
こちらには、役所関係の事情に詳しい従兄弟がいます。先日、彼からこんな話を聞きました。
人口減少が深刻なある町が、補助金を付けて移住者を募集した。町として本当に来てほしいのは、若い夫婦や子育て世代です。子供が生まれれば人口が増えますし、学校や地域活動も維持できます。ところが、実際に応募してくるのは、仕事を引退した夫婦が多い。さらに彼は言いました。
「それで、だいたいカフェをやるんだよな。でも、うまくいかないみたいだね」
私は薄い笑みを浮かべて聞いていましたが、正直言うと一瞬考えたプランです。サイフォンで淹れるコーヒー屋が少ないので、自宅を改装してできないだろうか、と。
しかしこのアイデアはリサーチする前に捨てました。現実が見えたからです。いままで夢見たことを全部やってきた果ての古屋ぐらしですから、流石に学びました。でも後悔はしてないんですよ。
カフェドリーム症候群
これは私が勝手に考えた言葉です。いつ頃からでしょう。人はカフェでコーヒーを買うだけではなく、「カフェでくつろいでいる自分」まで一緒に買うようになりました。
居心地のいい椅子。古い木のテーブル。少し変わった照明。丁寧に淹れたコーヒー。手作りのケーキ。窓の外には緑。
そして、その場所を所有する側になる夢もあります。田舎の古い家を改装して、小さなカフェを開く。自分の好きな家具を置く。得意な料理やスイーツを出す。常連客と話をする。時間がゆっくり流れていく。かなり幸せそうな映像です。一種の麻薬だと思います。
ただし、私はカフェが嫌いだからこんなことを言っているわけではありません。むしろ逆です。
私の実家は喫茶店でした。私自身も若い頃、有名な喫茶店でアルバイトをしていました。ホールもやりました。カウンターにも入りました。閉店後のレジ締めまでやりました。一時期はカフェ巡りも趣味でした。
だからこそ思うのです。カフェ経営は、客として座っていると憧れの仕事に見える。しかし、働く側に回ると、すぐに実情が判ります。仕入れがあります。光熱費があります。食材のロスがあります。ゴキブリやカメムシの駆除も必要です。暇な日もあります。保健所の検査もあります。
当然ですが、売上が足りなければ続きません。地方で店を開くとき、ときどき、「東京ほど家賃が高くないから、何とかなるだろう」という発想になりがちです。改装費用の回収も必要ですが、当面の固定費は低くできるかもしれません。しかし、そのかわり客の絶対数が少ない。都会なら店の前を毎日何千人も通る場所がありますが、地方では、そもそも人が歩いていません。
車でわざわざ来てもらう必要があります。しかも、一度来てもらえば終わりではありません。人口の少ない地域で商売を続けるには、同じ人に何度も来てもらわなければならない。これは意外と厳しい条件です。
もう一つ、少しだけ辛口のことを書きます。
「都会でそれなりに評価される店を作れば、地方ではもっと簡単に受け入れられる」そんな気持ちが、どこかにないでしょうか。無意識のうちに、
「この地域にはまだこういう店がないだろう」
「都会のセンスを持ち込めば喜ばれる」
と考えてしまうことはあると思います。
けれど、ネットにより全国均一の情報が得られる時代です。
地方のお客さんもシビアです。
お洒落だから通うわけではありません。
料理がおいしいか。
値段に納得できるか。
駐車場は使いやすいか。
店員は感じがいいか。
また行きたいと思えるか。
都会と基本的には同じです。むしろ人口が少ない分、一度悪い評判が立つと厳しいこともあります。田舎だから商売が簡単なのではありません。それに隠れカフェのような、知る人ぞ知る店がある場合があります。常連客以外の人には営業しているように見えない店があります。電話で注文しておいて、テイクアウトする方法も見かけますね。
私は、移住地は総合病院が近くにあることを条件として勧めたいので、その規模の市や町(人口5~7万と推測)ならば、パンとスイーツとハーブは新規参入が容易ではないと思います。
バターを使わない、キャロットケーキ系があるなら、私は通います。
ちょっと尻切れトンボのように終わりますが、第一回として、本当に言いたいことは、パートナーの夢を叶えたいという男性陣こそ、もっともっとシビアに考えて欲しいということです。リフォームは想像以上のお金が飛んでいきますから。そのあたりは次ぎの回で話します。
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