目が疲れている人ほど、呼吸が浅くなっている?― 眼精疲労を“目だけ”で考えない身体の見方 ―
「最近、目が疲れるんですよね」
「夕方になると目の奥が重いです」
「パソコンを見ていると、だんだん頭まで痛くなってきます」
仕事でパソコンを使う方や、スマホを見る時間が長い方から、こうした話を聞くことは少なくありません。
そんなとき、多くの人がまず考えるのは、
目を休ませる。
目薬を使う。
ホットアイマスクをする。
画面から目を離す。
といった、「目に対するケア」ではないでしょうか。
もちろん、これらも大切です。

ただ、身体をもう少し広く見てみると、
「目が疲れている」という現象は、本当に目だけで起きているのか?
という疑問が出てきます。
実際、デジタル機器による眼精疲労、いわゆるDigital Eye Strainでは、目の乾燥やかすみ、痛みだけでなく、首や肩の痛み、頭痛、全身的な疲労なども一緒に起こることが知られています。近年のレビューでも、眼表面、まばたき、ピント調節、姿勢や筋骨格系、認知負荷など、複数の要素が関係する問題として整理されています。
だから僕は、眼精疲労を考えるとき、
「目を見る」のではなく、「目を使っている身体全体を見る」
ことが重要だと考えています。
目が疲れるとき、身体では何が起きているのか
たとえば、パソコンで資料を作っている場面を想像してみてください。
座って、画面をじっと見る。
細かい文字を読む。
何十分も同じ距離にピントを合わせる。
集中するほど、まばたきも少なくなる。
研究でも、デジタル画面の使用時にはまばたきの頻度や完全性が低下し、それが目の乾燥や不快感につながることが報告されています。
さらに、集中してくると、
顔が少しずつ画面に近づく。
頭が前に出る。
首が動かなくなる。
肩も少し上がる。
背中が丸くなる。
こうした姿勢になっている人も多いのではないでしょうか。
つまり、画面を見続けているときに固定されているのは、
目だけではありません。
視線。
頭。
首。
肩。
胸郭。
身体のいろいろな場所が、同時に「固定」されていきます。
近距離での視覚作業による目の不快感と、首・肩の不快感には関連があることも報告されています。
「視線が止まる」と、身体も止まっていく
ここが、僕が眼精疲労を見るときに大事にしているポイントです。
目というのは、本来ものすごく動いています。
遠くを見る。
近くを見る。
左右を見る。
人を見る。
景色を見る。
歩きながら周囲を見る。
視線が変われば、頭も動きます。
頭が動けば、首や背骨も動きます。
身体は本来、
視線と一緒に動いている。
ところが、パソコンやスマートフォンでは、
「30〜50cm先の小さな範囲」
を長時間見続けます。
すると、
視線が固定される。
↓
頭も固定される。
↓
首や肩も固定される。
↓
胸郭の動きも小さくなる。
ということが起こりやすくなります。
眼精疲労を「目だけの問題」と考えると、このつながりが見えなくなります。
そこで出てくるのが「呼吸」です
呼吸は、肺だけで行われているわけではありません。
肋骨が動く。
胸郭が広がる。
横隔膜が動く。
腹部も動く。
背中も動く。
つまり、呼吸とは、
身体全体の動きを伴う運動です。
ところが、長時間のデスクワークで、
頭が前に出て、
首・肩が固まり、
胸郭まで動きにくくなった状態では、
呼吸も浅くなりやすくなります。
ここで大切なのは、
「呼吸が浅いから眼精疲労になる」
と単純に考えないことです。
僕はむしろ、
目の疲れと浅い呼吸は、同じ
“集中・緊張し続けて固定された身体”
に同時に現れているのではないか
と考える方が自然だと思っています。
集中・緊張しているとき、自分の呼吸を覚えていますか?
少し思い出してみてください。
パソコンで締切間近の資料を作っているとき。
スマートフォンで細かい文章を読んでいるとき。
動画編集をしているとき。
数字を確認しているとき。
気がついたら、
肩に力が入っていた。
眉間にしわが寄っていた。
歯を食いしばっていた。
息を止めるように作業していた。
そんな経験はないでしょうか。
人は集中すると、
「見ること」
「考えること」
「動かないこと」
に身体のリソースを使います。
視野も狭くなり、
身体の動きも小さくなり、
呼吸への意識もなくなっていく。
だから僕は、
眼精疲労という現象の背景には、
単なる「目の使いすぎ」だけではなく、
身体全体が“集中モードから抜けられなくなっている状態”
が隠れていることもあるのではないかと考えています。
目を休ませても、またすぐ疲れる理由
「ホットアイマスクをすると楽になるんですけど、仕事を始めるとまたすぐ疲れます」
という人もいます。
これはある意味、当然かもしれません。
目だけ休ませても、
画面に戻った瞬間、
視線が固定される。
↓
頭が前に出る。
↓
首・肩が固まる。
↓
胸郭が動かなくなる。
↓
また同じ身体の使い方に戻る。
からです。
つまり、
症状が出ている場所と、症状を作っている条件が同じとは限らない。
ここが身体を見るうえで、とても重要なところです。
肩が痛いから肩だけを見る。
腰が痛いから腰だけを見る。
目が疲れるから目だけを見る。
もちろん症状がある場所を確認することは必要です。
ただ、それだけでは
「なぜそこに負担が集まったのか」
までは分からないことがあります。
眼精疲労を身体全体から見るとこうなる
一度、流れとして整理してみます。
スマホ・PCなどの近距離作業
↓
視線を近くに固定する
↓
ピント調節・眼球運動・まばたきへの負荷が増える
↓
集中して頭・首も固定される
↓
首・肩の緊張が増える
↓
胸郭の動きも小さくなる
↓
呼吸運動も小さくなりやすい
↓
身体全体が“休む方向”へ切り替わりにくくなる
↓
そのまま再び画面を見る
↓
疲労が積み重なる
こう考えると、
「眼精疲労=目を温めればOK」
という話ではなくなってきます。
近年のデジタル眼精疲労の研究でも、単一の原因ではなく、眼表面・ピント調節・筋骨格負荷・認知負荷・画面環境などを含めて評価し、それぞれに合った介入を考える方向性が示されています。
だから、目から呼吸までつなげて見る
僕が身体を見るときには、
目 → 視線 → 頭・首 → 胸郭 → 呼吸
という流れを確認することがあります。
たとえば、
遠くを見てもらう。
左右を見てもらう。
首を動かしてもらう。
背骨を動かしてもらう。
胸郭の広がりを確認する。
呼吸したときに、どこが動いているかを見る。
こうしていくと、
「目が疲れている」
という一つの悩みの背景に、
その人特有の身体の使い方が見えてくることがあります。
だから、眼精疲労へのアプローチも、
目を閉じる。
まばたきを増やす。
画面から離れる。
だけではなく、
立ち上がる。
歩く。
遠くを見る。
首を動かす。
背骨を動かす。
胸郭を動かす。
呼吸する。
といった、
身体全体をもう一度動かすこと
まで含めて考えていいのではないかと思います。
定期的に画面から離れることや作業環境を整えることは、デジタル眼精疲労への一般的な対策としても推奨されています。
目を休めるのではなく、「身体を休められる状態」に戻す
眼精疲労があると、
どうしても「目をどうにかしよう」と考えます。
でも、その人の身体を見ていくと、
目だけではなく、
首も、
肩も、
背中も、
呼吸も、
ずっと頑張っていた。
ということがあります。
もしかすると必要なのは、
目を休ませることだけではなく、身体全体を“休められる状態”に戻すこと
なのかもしれません。
そして、これは眼精疲労だけの話ではありません。
肩こりも。
腰痛も。
頭痛も。
疲労感も。
睡眠の悩みも。
身体に起きている一つの現象だけを見るのではなく、
「その前後で何が起きているのか」
「何と何がつながっているのか」
を見ていく。
それだけで、身体の見え方は大きく変わります。
「目が疲れる」の奥にあるものを見る
もし今日、
パソコンやスマートフォンを使っていて、
「目が疲れたな」
と思ったら、
一度、目以外にも意識を向けてみてください。
今、どこを見ていますか?
頭は前に出ていませんか?
肩に力が入っていませんか?
胸や背中は動いていますか?
そして、
今、どんな呼吸をしていますか?
目の疲れは、
身体から届いている一つのサインなのかもしれません。
症状がある場所だけを見るのではなく、
身体全体のつながりから読み解いていく。
僕は、そんな身体の見方を大切にしています。
目だけを休ませるのではなく、
目も、首も、胸郭も、呼吸も。
もう一度、身体全体が動ける状態へ。
眼精疲労をきっかけに、
自分の身体の使い方を見直してみるのも、一つの方法だと思います。
※目の痛み、急な視力低下、視野の異常、強い充血などがある場合や、症状が長く続く場合は、セルフケアだけで済ませず眼科などの医療機関にご相談ください。
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