【毎ショ】誘蛾なるアリア(410字)|迎え火オペラ
舞台では一人の少女が選択を迫られている。沈黙すら熱を帯び、俯いた少女が顔を上げてこちらを見る。オーケストラは彼女を鼓舞し、貴族の役者は彼女に立ち塞がる。
擦り減るほど演じられた一幕、手垢のついたアリア、誰もが知っているラストに、しかし胸が高鳴った。この壮大な劇場に観客は一人。
一階客席は全て撤去し、プレハブ小屋のように巨大な金網の箱が置いてあり、舞台を向く面だけが開いている。まるで巨大なネズミ捕りだ。
網の箱の中に椅子が一つ、椅子に座るように炎が宿っている。ある人物の魂を誘う、いわゆる迎え火である。
クライマックスだ。照明が彼女一人を絞り、余熱をまとう闇を生む。使い古された最後のセリフだ。
「神よ、あなたを恨みます」
ガシャン。何かが罠にかかったように網が下りた。迎え火が燃え盛り、罠に閉ざされる。少女は糸が切れたように、プツリと意識を失った。
少女は控室へ運ばれた。監督が炎に問う。
「これで成仏してくれるか?」
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