【せりふ三題噺】商店街の三すくみ
「氷屋ぁ、氷売ってくれぇ」
肉屋の声がする。氷屋は大型の保冷コンテナを積載したリヤカーを引き、肉屋の裏口にリヤカーを付ける。
氷屋は大型の氷塊を持ち上げ、肉屋の保存庫に持っていく。
「まいど、良い肉入ったか?肉屋」
「上モノの豚肉が手に入った。東国の黒豚っていうやつだ。今日捌く予定だ」
第二西暦6世紀、中央コロニーは避難民の集落ができている。
このエリアは過密により横面積が狭く、肉屋は在庫を地下保存庫に保管している。消費できる電力量も限られており、氷屋は食料品店では必須の仕事だ。
特にこの肉屋はウチを重宝してくれる。この客を逃がすわけにはいかない。
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「肉屋ぁ、肉売ってくれぇ」
料理屋の声がする。肉屋はいつもの豚肉セットを保冷コンテナに詰めて用意した。
「まいど、繁盛してるか?料理屋」
「南国料理が人気でな、やっぱこの時期は辛い物と豚肉料理に限るぜ。いつもありがとよ、肉屋の旦那」
このエリアで乾燥保存食ではなく新鮮な肉を仕入れているのはこの肉屋くらいだ。中でもこの料理屋はこのエリア一番の太客だ。この客を逃すわけにはいかない。
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「これはきついって」
大量に在庫を余らせるサンバルソースを目の前に、料理屋は呟いた。
「料理屋ぁ、サンバルソース売ってくれぇ」
氷屋の声がする。料理屋は南国の香辛料、サンバルソースを小皿に盛った。サンバルソースは七種類、七枚の小皿が卓に並べられた。
氷屋は懐から小瓶を取り出し、瓶から氷の精霊が表れた。
「しかし不思議なもんだ。氷の精霊ってんだから冷たい物を喰うのかと思ったが、辛い香辛料が好物なんてな」
氷の精霊が満足げにソースの辛味を吸い取る。真っ赤なソースは冷たい水に変わり、今にも凍てつきそうである。
南国の商人はこちらの足元を見てサンバルソースの発注単位を大きくし、一度に大量に入荷せざるを得ない。避難民のコロニーで辛い香辛料は売れ残る。その売れ残りを買ってくれるのがこの氷屋だ。
この氷屋がいなければ香辛料の在庫コストで店が傾く。この客を逃すわけにはいかない。
【お題】
■セリフ
「これはきついって」
■三題
・氷
・サンバルソース
・豚
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