【短編】今日の1冊
依頼して描いていただいたイラストへの感謝を込めて、イラストから短編を書き下ろしてみました。
今回は海老が好き様から頂いたイラストを基に書き下ろしています。
今日の1冊
淹れ立てのコーヒーが湯気を上らせながら、ゆっくりとテーブルに置かれる。お気に入りのアーカンゲル豆が醸し出す香りは、ミィナ・サルヴィアラーネ・ラヴァルテンシュレーヴェンの嗅覚を心地よく刺激し、横から生える耳がピクンと跳ねる。
「コーヒーはこれで良し。今日は何を読もうかなと……」
背中の翼をパタパタと動かしながら、ミィナは本棚の前で本の背表紙をぐるぐると見回していく。この本棚にある本たちは、彼女が特に気に入っている物ばかりだった。
コーヒー片手に本を読む午後の休息時間――それは彼女にとって至福の時でもあった。
できるならずっとこうしていたいとさえ思うひとときだが、この時間を維持するためには今抱えている仕事を終わらせなくてはならない。故にこの時間を維持することは仕事のモチベーション維持にも貢献していた。
悩んだ末に、ミィナは今日最初に読む本を選び、本棚から引き出す。そして愛用のソファに腰掛けて、栞を挟んだページを開いた。
「えーと……黒世紀中期におけるラーマディアの歴史について――」
前回の内容を思い出しながら、ミィナはページを捲っていく。時折湯気が本に当たらないようにしながら、コーヒーも少しずつ消費していった。
「へぇ……これは新しい見解ね。私も考えつかなかったわ……」
ミィナは今読んでいる歴史書から新しい知識を得ると、いつも身に着けている手帳にそれを書き記す。新しい知識はなるべく早めに記録して次の仕事に活かす為だった。
「うーん、これは通説通りな気がする……流石に推論が飛躍しすぎかな?」
内容について自身の見解を独り言ちながら、彼女は本を読み進める。この時間こそ、ミィナが最も幸せに感じる時のひとつだった。
彼女にとって本は自分の一部であり、同時に愛すべき存在だった。本は彼女とともにあり、彼女は本とともにある。
そんな自分だけの幸せな時間にのめり込み、気づいた時には窓から差し込んでいた陽射しはいつの間にか夕闇に染まっていた。
「あっ! もうこんな時間!?」
小休止のつもりだったのに、気づけば数時間も経っていることに気づき慌てて仕事に戻ろうとする。
「あうぅ……この仕事もう時間が無いのに……」
ミィナは急いで本を戻し、いつの間にか空になっていたコーヒーカップを片付けてから、書きかけの本を綴る仕事へと戻るのだった――。
今回描いていただいたイラスト

イラストを見てやはり思ったのは、「ミィナは本とコーヒーが一番似合う」です。
本を書いていたり、銃剣格闘したりする姿も好きですが、やはり自分が一番好きなのは本を読む姿です。それにコーヒーのアクセントがあれば尚良しといったところでしょうか。今回はそんな姿を見れるとても素敵なイラストを頂きました。
改めて、イラストを描いていただいた海老が好き様に感謝いたします。
【見出し画像】
イラスト:海老が好き様【@yield_hshs 】
