プロベーション・レポート ~新入社員の四カ月~ 第五章5
第五章
第五話「日本のお米は世界一」
炊飯出向の間、朝のミーティングは須藤くんに任せることになった。
スプシとLINEの件は丸投げしてもいいらしい。
いやー助かる!ほんとに!
道連れが一人いるというのは本当に助かるのだ。
こんな地獄俺一人では耐えられねぇよぉ!!
ミーティングの事情は伝えてあったものの、急いで炊飯に向かうと炊飯部長はいなかった。
『すまないが朝から外回りに出ている。夕方には戻るから、それまで工場を視察するなどして改善案をまとめておいてくれると助かる。私が戻り次第打ち合わせをしたい。今日は残業になってしまうだろうがよろしく頼む。力を貸してくれ。』
と、えらい達筆の書き置きがあり、
なんでここの人たちは割とほとんどの人が電話してこないの?と首を傾げつつ工場に向かった。
工場内はもちろん防護服みたいな例のアレを着込んで消毒をしないと入れないので、やり方を聞こうと人を呼んだらやたらデカい人が来てくれた。
「新人のお前なんかに出来ることは何もないぞ。」
初手マウントを取られたので普通にイラついたが、名札を見るに工場長らしい。へぇ?
まぁとにかく一週間しか時間がないのでじっくり見てみたけど・・・こりゃ酷いね。
1・暗い
2・遅い
3・工場長キモい
これら三つが大体全部だったので、そこから変えていいだろう部分を抽出して、とにかくシンプルに進めることにした。
要は『明るく元気よく』である。
夕方に部長が戻ってきちゃうのなら昼休憩をまともに取ってる場合でもない。
バインダーだけ持ってうろちょろしつつ、一通りスタッフさんへのヒアリングを終えた頃合いでコーラ3本を装備し、喫煙所に陣取ることにした。
・・・けど野村さんめっちゃ喋るな。
「お前どうして炊飯なんかにおるんだ、営業クビか?」
失礼な。
「あーそうですー、一週間だけクビっすー。」
適当な相槌をこなしつつ、出来上がった改善プランを見せたら野村さんも爆笑していた。
そうだろう、俺だってこれはふざけてると思う。
でも一週間で出来ることなんてたかがしれてるし、どうにか速さと楽しささえ渡すことができればここはなんとでもなるはずだ。
夕方になり、外回りから戻った部長に、ついにあのふざけた現場改善プラン『一週間残業ゼロブートキャンプ』を見せる時が来てしまった。
ひとしきり野村さんと爆笑して内心ないない!と思っていたものなので、部長に否決されたらただただ肩身の狭い感じであと四日やり過ごせばいいだけだ。くらいの腹は括っている。
すると、部長の第一声は
「え?」
だった。
つられて俺も
「え?」
と言ってしまったのだが、よくよく聞いてみると要は部長的には動線改善だの作業効率の向上だののヒントというか、そういうのを俺に求めていたらしい。
なのだが、よりによって二課長に伝言ゲームなんか頼むもんだから?
俺のとこに話が来た時点で?
何故か一週間で炊飯工場の残業を減らせって話になっていたわけだな?
おのれ課長!!
「えぇと、まずいですか?」
「いや、正直なところ何が書いてあるのかさっぱり意味がわからないが、こっち側のみっちり書いてある視察の結果と併せて見るに、君が工場のことを真剣に見ていたことはわかる。
そして一週間で残業ゼロと書いてあるこの改善案も、それらをまとめたものなんだろう?」
「ええ、それはそうです。まあ飲食由来の、なんというか理屈はあっても最終的にノリと勢いでどうにかするっていうやつなんで。もちろん必要とあらばきちんと理屈も説明はできるのですが。」
「・・・理屈より先に一つ聞きたいんだが、本当に出来るのか?」
マジか、この人あれを見て乗り気なのか。
本当に驚いた。
だってあれガチで飲食っていうか前の会社でしか意味が通じないと思っていたんだから。
「あと四日ありますよね?めっちゃ簡単に言えばこの現場を明るく楽しくします。それだけで残業は無くせますし、やることをそれに絞ってますので四日あればどうにかなります。
まあ、たった四日で僕が出来るのなんて型を作るのが限界ですから、上手くいったとしても来週以降は部長やこちらの社員さん次第です。」
「よしわかった。小林くんよろしく頼む。」
マジかよ。
でもまあこれをやれと言われたら断れないよな。
・・・マジの得意分野だ。
「では早速ですが、明日の午前に部長と僕でみんなにお手本見せる予定なんで今から練習しましょうか!」
楽しくなってきたぜ!!
