深夜の麦茶 ショートショート シロクマ文芸部 お題「熱帯夜」
なんとなく息苦しくて、目が覚めた。暑いのか苦しいのか、よくわからなかった。
冷感マットというものを敷いて、窓は全開にして眠っていた。気持ち良く眠りに落ちたような気がしていたのに、冷感マットはすっかり温かくなっていた。
部屋の飾り棚に置いてある温度計を確かめると、29度を指していた。ああ、冷感マットが温まってしまうわけだ。
私はのろのろ歩いて、キッチンへ向かった。
冷蔵庫からペットボトルの水を取り出し、グラスに半分ほど注ぐと、一気に飲み干した。
おいしくもないし、まずくもない。
2年前の夏までは、常に麦茶を常備していた。大好きだったあの人が麦茶を好んだから。
直接的な原因があったわけではない、と今でも思う。
ただ、あの人も私も少しずつ変化していくし、成長もしていく。そして離れる時期が来ただけ。
そんな曖昧なまま、あの人は出ていった。
はっきりわかっているのは、私は2年経っても全然立ち直れていないし、一生、立ち直りたくもない、と思っていること。毎日何度もあの人を思い出し、今でも涙が溢れること。それだけ。
もう一杯、グラスに水を注いだ。
透明の液体を眺めて、思った。
麦茶を買ったら、私は終わる、と。
息苦しいのは、きっとこの暑い暑い空気のせい。ほかの理由じゃない。
そう決めて、エアコンのリモコンを手にした。
