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怪談 某商業施設の怪

今から書く内容は同じ商業施設で起こった事案であるが行った時代が違うため二部構成にする。

その①煙

私が二十代で就職活動時に体験した話だ。

会社での面談を終えて、気分転換に近くにあった商業施設へウィンドウショッピングでもしようと思い足を運ぶことにした。

会社から出て数分後。

商業施設の前にある横断歩道までやってきたが歩行者信号の色が赤だったため立ち止まり青になるのを待っていた際に妙な違和感を感じた。

商業施設の七階のフロアだろうか。

窓から複数名の男女が身を乗り出しはじめると次から次へと商業施設の近くにある商店街の屋根へと落ちていく。明らかに異常事態が起きているにも関わらず信号待ちをしている他の方々はただ信号が青になるのをぼんやりと見つめているだけだった。

どうして何も反応をしないのか疑問に思った瞬間に歩行者信号が青に変わり人々はいっせいに横断歩道を渡り始めた。私も商業施設の様子がどうしても気になるのでチラッと上を見上げながら歩くとまだ飛び降りを試みようとしている方々がいる。

横断歩道を渡り終え商業施設へと向かうのだが何故か近づけば近づこうとするとまるで火事場の近くにいるかのような白煙が辺り一帯をそれはまるで商業施設を覆い隠すかの如く目の前が全く見えなくなった。

人々は次から次へと商業施設へと足を運ぶのだが白煙に覆われてしまった以上、私はいまどこを歩いているのかが全くわからない。

その間にも商店街の屋根からは飛び降りを試みた方々だろうか。ドーン、ドーンと衝撃音が轟き始める。

せっかくここまで来たのだから、せめて何としてでも商業施設へ向かいたいと思ったときにたまたま中国からの観光客だろうか。大声で商業施設へと談笑しながら向かう姿が見えたので私は中国人観光客の後をついていく形で商業施設の前までようやく辿り着いた。

自動ドアが開き中へ入れたが白煙が辺り一帯を囲んでいて全く先が見えない。

それでも中国人観光客の後をおい最後の自動ドアが開いた瞬間に今度は白煙から黒煙が勢いよく流れ込むとその先が全く見えなくなり中国人観光客の姿すら見えなくなったので諦め家に帰ることにした。

後に分かったことだが、あのとき私が訪れようとしていた商業施設ではいっさい火事などは発生しておらず商業施設は通常通りの営業をしていた。私だけが今とは違う世界に飛ばされていたのかもしれない。

その②お姉さん

3年ほど前に体験した話だ。

商業施設の付近にある映画館じゃないと上映がされていない気になる映画の作品があったので映画が上映される前に次の怪談イベントで出演予定の演者がトレーディングカードを集めるのが趣味だったと気づき、演者がコレクションしているトレーディングカードを買うために商業施設へ向かうことにした。

前回は白煙に覆われて視界を奪われただけでなく、中に頑張って入ろうとしたら黒煙が勢いよく流れ込んできたがために中に入ることを諦めざるを得なかった。

今回も同じルートで横断歩道の前で赤信号だったので青信号になるまで待ち続けた。そして青信号になったと同時に横断歩道を渡り始めると、ふと商業施設を見上げてみるが何の違和感もなかった。

商業施設の入り口が見えてくるとやっとだが自力で商業施設の中に入ることが出来ると、さっそくトレーディングカードがどのフロアに販売されているのかを確認し始めると、七階のフロアで販売されていることがわかりエスカレーターを使い七階まで移動することにした。

目的地の七階のフロアまで辿り着くと、ふとフロア内を歩いているだけなのにまるで火事場の煙を吸い込んだかのような喉にやける痛みを感じ始めた。

余りにも痛みに我慢ができなくなり思わずトイレを探し、階段の近くにトイレがあるのでトイレへ行く。

すると一つ目のトイレに赤いワンピース姿の女性がトイレの便器の中に顔を突っ込んだ状態でうずくまっている様子を発見した。

私もしんどいが今まさに人が苦しんでいる姿を見て見殺しにすることは出来ないので、近くにいる店員に声をかけようとしたが忙しさあまりに声をかけられそうな店員はいなかった。

致し方なく自力で助けたいという気持ちからもう一度トイレに行くが、一つ目のトイレに居たはずの赤いワンピースの女性は既に居なくなっていた。

思わず我が目を疑いながらも、何かの錯覚にしては余りにもリアル過ぎたと思ったのでひょっとしたら酒を飲み過ぎてトイレで吐いていただけなのかもしれないと思うことにした。

トレーディングカード売り場を発見したので差し入れ用のトレーディングカードを買った後にどうしても気になるのでもう一度トイレへ行く。

喉のやけるような痛みは喋られない程悪化していた。

トイレに入ると三番目のトイレに緑のワンピースを着た女性がトイレの便器の中に顔を突っ込んだ状態でうずくまっている姿を発見し、たまらず女性の近くまでで一声をかけようとした。

しかし、女性は背後にいる私の存在にすら気付かなかったため救急車が必要だと感じて再びトイレを後にしてフロア内にいる店員へ声をかけようとしたがまたしても声をかけられずにいた。

だけどどうしてもトイレの女性の容体が気になるのでもう一度トイレへ行くが、三番目のトイレには緑のワンピースを着た女性の姿はなかった。

その後七階からひとフロア下の六階まで階段から下りた後にエスカレーターで一階まで移動して商業施設を後にした。果たして私が見てきた女性の方々は酔っぱらいだったのか、はたまたこの世の者ではなかったのか答えは分からない。

しかし、七階にいるだけで喉がやける痛みを感じてからはあの商業施設には二度と行かなくなった。

【怪談 某商業施設の怪 おわり】

まとめに入るまでに商業施設で何が起きたのかについて解説しよう。

千日前デパート火災

1972年5月13日に発生。戦後の日本のビル火災史上最も多くの犠牲者を出した事で有名。

死者118名、負傷者81名を出した千日前デパート火災の被害が甚大になってしまった最大の要因は緊急時における避難誘導の指導が従業員に対して行なわれていなかったためである。

前述した七階の窓から次から次へと人が飛び降りていくと書いたのはまさに火災が起きた際に行き場を失った客や従業員が窓から千日前のアーケードへと飛び降り一部は亡くなってしまっているのだ。

最後に私が見たトイレの女性についてだが、火災発生当時に従業員女性が持っていたハンカチにトイレの便器の中にある水を湿らせた状態で呼吸しやすいように七階のフロアから脱出することが出来た。

その女性を見た多くの方々は同じことをしたら我が命も助かるかもしれないと思い急いでトイレへ駆け込むが此処で雪崩込むようにトイレれ駆け込んでしまったがためにトイレの中で将棋倒しが起き下敷きとなり亡くなってしまった。

千日前デパートがなくなり、プランタンなんばへと変わるも怪異に纏わる話は尽きず、そして某家電量販店となった今でも心霊に纏わる話は火災事故が起きて54年の月日が経とうとしているが、決して忘れ去られてはいけない事案の一つだと思う。

火災が発生した5月13日の明日は母の日だった。

被害が大きかった七階のキャバレーには子育てに奔走しながらキャバレーの従業員として働く母もいた。

母の日が今年は5月10日とはやくはなるが、母の日がくるまでに起きてしまった大惨事として忘れるわけには行かないという気持ちで書くことにした。

亡くなられた方々に心から哀悼の意を捧げます。

合掌。

※画像は生成AIにより作成しました


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