昨日の店主【シロクマ文芸部】ショートショート
夜店から人が消える。
祭りの間、あの夜店だけは、店主がいつも入れ替わるという噂があった。
友達の間では有名な話だ。
「お前、聞いてこいよ」
ジャンケンで負けた光雄は、渋々その店へ向かった。
「すみません。一つください」
「ありがとうございます」
品物を受け取り、光雄は勇気を出して尋ねた。
「昨日、ここで売ってた人は、どうしたんですか?」
店主は少し黙ると、にやりと笑った。
「いないよ」
「いない?」
「ああ。昨日は売り上げが悪かったからね」
光雄が首をかしげると、店主は静かに言った。
「それに、あんたは俺に聞いてくれた」
「え?」
「これで俺は帰れる」
その瞬間、店主の姿がふっと消えた。
次の日から、俺はこの夜店の店主になっていた。
いつまでやれるのかは、わからない。
小牧幸助さんの『夜店から』から始まるお題に参加させていただきました。
いつもありがとうございます。
#シロクマ文芸部 #夜店から
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