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ニュースがつながる「防衛産業の地政学」―国際情勢の裏側を、武器・お金・技術からやさしく読み解く「防衛産業の地政学 これからの世界情勢を読み解くための必須教養」を小学生でも分かるように説明します


防衛産業の地政学 

これからの世界情勢を読み解くための必須教養

著者 小野 圭司




はじめに

このnote記事は、無料部分の「小学生でもわかる解説」だけでも十分にご理解いただけます。

有料エリアには「音声考察(日本語版・英語版)」と本のエッセンスをより深く理解するための「大人向けの解説」を用意しております。

なお、この記事は無料・有料・音声考察のすべてにおいて、原著の引用は一切使用しておりません。すべて、私自身の言葉のみで構成したものです。



世界を守る「防衛産業」ってなんだろう?

みなさんは、「防衛産業」という言葉を聞いたことがありますか?

もしかしたら、テレビのニュースや新聞などで耳にしたことがあるかもしれませんね。

これは、国を守るための特別な道具、つまり戦闘機や戦車、船、ミサイル、そして兵士が着る防弾チョッキなどを作る会社や工場のことを指します。

警察官がパトカーを使い、消防士が消防車を使うように、国を守る自衛隊や軍隊にも、専用の特別な道具が必要です。

その特別な道具を作って、平和を守るお手伝いをしているのが防衛産業の役割なのです。

しかし、2022年の2月に、ロシアという国が隣のウクライナという国に攻撃を始めるという大きな事件が起きました。

この悲しい戦争は、私たちにとても大切で、そして恐ろしい事実を教えてくれました。

それは、いざ戦争が始まると、武器や大砲の弾が信じられないくらいの猛烈なスピードで使われてしまい、あっという間に足りなくなってしまうということです。

ウクライナを助けるために、アメリカやヨーロッパの国々は自分たちが持っているたくさんの武器や弾薬を送りました。

けれども、ウクライナが消費するペースがあまりにも早かったため、送る側のアメリカやヨーロッパの国々でさえも、自分たちの国を守るための在庫が少なくなってしまいました。

アメリカは足りなくなった弾を補うために、韓国から弾を買わなければならないほどでした。

平和な時には「こんなにたくさんの武器を作って倉庫に置いておく必要があるのかな」と思うかもしれません。

しかし、いざという時には、工場を昼も夜もフル回転させても、すぐには新しい武器を作ることができないのです。

戦争というのは、前線で命をかけて戦う兵士たちだけの戦いではありません。

その後ろで、どれだけ早く、どれだけたくさんの武器を作って届けることができるかという、防衛産業という工場や会社の戦いでもあるのです。

これから、世界の国々がどのように武器を作り、どんな問題を抱えているのか、一緒に詳しく見ていきましょう。


世界の国々が使っているお金と武器の作られ方。

世界各国の軍隊の大きさを比べるのに、一番わかりやすいのが「国防支出」という、国が防衛のために使っているお金の量を見ることです。

2023年のデータを見ると、世界で一番防衛にお金を使っているのはアメリカです。

日本円にすると約129兆円にもなります。

これは日本の国家予算全体よりも多い、とてつもない金額です。

アメリカが世界中に軍隊を置き、宇宙やインターネットの世界でも一番強い力を保とうとすると、これだけのお金が必要になるのです。

2位は中国、そして3位はロシアです。

ロシアはウクライナと戦争をしているため、急激に防衛のためのお金を増やしています。

また、お金の量だけでなく、国全体で稼いだお金のうち、どれくらいの割合を防衛に使っているかも重要です。

ウクライナは戦争中なので、自分たちの稼ぎの36パーセント以上も防衛に使っています。

これは、昔の日本が戦争をしていた時と同じか、それ以上のとても重い負担です。

逆に、サウジアラビアなどの国は、地下から石油がたくさん湧いてくるため、国民から集めた税金を使わなくても、防衛にたくさんのお金を使うことができます。

武器を作るのには高度な技術が必要です。

特に戦闘機などの航空機は作るのがとても難しく、アメリカ、フランス、ロシアなどの限られた国が、他の国にたくさん輸出しています。

高い性能の武器はどこの国も欲しがりますが、お金持ちの国しか買うことはできません。

ここで、世界を二つに分ける「規格」というルールの話をしましょう。

みなさんがゲームで遊ぶとき、違う会社のゲーム機のソフトは使えないですよね。

武器も同じで、世界には「NATO規格」というアメリカやヨーロッパのルールと、「旧ソ連規格」というロシアやその仲間のルールの二つがあります。

たとえば、大砲の弾の大きさが、NATO規格は155ミリ、旧ソ連規格は152ミリというように、ほんの少しだけ違います。

ウクライナはもともと旧ソ連規格の武器を使っていましたが、戦争が始まってアメリカなどからNATO規格の大砲をたくさんもらいました。

すると、自分たちが持っている弾を、もらった大砲で撃つことができないという問題が起きました。

ヨーロッパの国々はウクライナに1年間に100万発の弾薬を送ると約束しましたが、ヨーロッパ中の工場を合わせてもそんなにたくさん作ることはできず、弾薬を準備することの難しさが浮き彫りになりました。


世界で一番強いアメリカと、協力して頑張るヨーロッパ。

世界の防衛産業の中で、アメリカの会社は飛び抜けて巨大です。

たとえば「ロッキード・マーチン」という会社は世界最大の防衛関連企業で、最新のステルス戦闘機F-35などを作っています。

他にも飛行機で有名な「ボーイング」や、ミサイルやレーダーを作る「RTX」といった大きな会社がたくさんあります。

アメリカの会社がなぜこんなに大きいのかというと、現代の武器を作るのには、昔とは比べ物にならないくらいのお金と時間がかかるからです。

一つの戦闘機を作るのに何兆円もかかり、完成するまでに10年以上もかかります。

もし開発に失敗したら会社が潰れてしまうので、会社同士が合体して巨大になり、どんな失敗にも耐えられるようにしたのです。

一方、ヨーロッパの国々、たとえばイギリス、フランス、ドイツ、イタリアなどは、一つの国だけではアメリカの巨大な会社に勝つことができません。

そこでヨーロッパの国々は、複数の国で一緒にお金と技術を出し合って新しい武器を作る「国際共同開発」という方法を選ぶようになりました。

ユーロファイターという戦闘機は、イギリス、ドイツ、イタリア、スペインの4か国が協力して作りました。

しかし、みんなで協力して一つのものを作るのは、口で言うほど簡単なことではありません。

海に囲まれたイギリスと、陸続きのフランスやドイツでは、国を守るための戦い方が違うので、「こんな機能をつけてほしい」という希望がバラバラになります。

さらに、どの国も「自分たちの国の会社に、一番儲かる仕事を作らせてほしい」「うちの国のエンジンを使ってほしい」とワガママを言います。

その結果、話し合いに時間がかかりすぎて開発が遅れたり、お金が余計にかかったりしてしまいます。

実際、フランスは自分の国のエンジンを使うことに強くこだわって、ユーロファイターを作る仲間から途中で抜けてしまい、自分たちだけでラファールという別の戦闘機を作ってしまいました。

仲良く協力して一つのものを作るというのは、国同士であってもとても難しいことなのです。


新しい力!どんどん武器を作って売る韓国と中国。

ヨーロッパやアメリカだけでなく、アジアの国々もすごいスピードで力をつけています。

特に韓国は、今や世界中に武器を売る「武器輸出大国」になろうとしています。

韓国は昔、アメリカから技術を教えてもらって武器を作っていましたが、今では自分たちで立派な戦車や戦闘機を作れるようになりました。

韓国の強みは、国全体で武器を売り込む努力をしていることです。

大統領が自ら他の国にお願いに行き、トップセールスを行っています。

そして、お客さんである他の国の希望に合わせて、細かく武器を改造してあげるサービスを徹底しているため、とても人気があります。

その結果、東南アジアや中東だけでなく、ロシアの隣にあるヨーロッパのポーランドなどにも、戦車や自走砲、戦闘機をたくさん売ることに成功しました。

さらに、使い終わった古い船などを他の国に無料でプレゼントすることで、新しく武器を買ってもらうきっかけを作ったりもしています。

中国の成長もすさまじいものがあります。

昔はヨーロッパやアメリカから技術的に大きく遅れていましたが、国がお金持ちになるにつれて武器を作る力も急激に高まりました。

中国のすごいところは、「軍民融合」という考え方を持っていることです。

これは、普段私たちが使っている便利なパソコンやスマートフォン、インターネットなどの民間の技術を、そのまま軍隊の武器に応用するという作戦です。

中国政府の命令で、いくつもの巨大な国営の会社が作られ、最新のステルス戦闘機や、飛行機を乗せる巨大な船である空母、そして無人機などを次々と作っています。

中国の会社は、西側の国の自由な市場競争とは違い、国が丸抱えする仕組みで動いています。

これにより、民間と軍が一体となって技術を進歩させているため、アメリカも強く警戒するほど恐ろしい力を持っています。


ロシアの「こわれにくい」武器と世界の不思議な関係。

ロシアの武器は、アメリカやヨーロッパの武器とは少し違う特徴を持っています。

それは「無骨」であるということです。

見た目はおしゃれではないし、最新のコンピューターがたくさん入っているわけでもありませんが、とにかく頑丈でこわれにくいのです。

戦場という過酷な場所では、砂ぼこりが舞う砂漠や泥だらけの場所でも、確実に弾が撃てることが一番大切です。

また、作りが単純なので、初心者でもすぐに使い方を覚えることができます。

有名な「AK47」という自動小銃は、その頑丈さから、本物も偽物も含めて世界中で7000万丁以上が使われていると言われています。

アフリカや中東など、修理の工場が少なかったり、兵士の訓練が十分にできていなかったりする国では、ロシアの武器がとても好まれています。

しかし、ウクライナでの戦争が長引く中、ロシア自身も武器や弾薬が足りなくなり、過去に外国に輸出した部品を買い戻したり、北朝鮮やイランなどから輸入したりして、なんとかやりくりをしています。

また、イスラエルやインド、トルコのような国々も、新しい力として注目されています。

イスラエルは建国以来、周りの国と何度も戦争をしてきました。

お金や武器がなかった頃、敵が落としていったロシアの古い戦車を拾い、自分たちが使えるようにアメリカの規格に「改造(カスタマイズ)」して使ったのです。

今では、イスラエルは自分たちで新しい技術を開発し、とても強い防衛産業を持っています。

インドも、輸入に頼るだけでなく、自分たちの国で武器を作れるように会社を育てています。

トルコは、ウクライナの戦いで大活躍した無人機をたくさん作って、世界に輸出しています。


日本の防衛産業の今と、これからどうしていくべきか?

さて、私たちの国、日本はどうなっているのでしょうか?

日本にも、三菱重工業、川崎重工業、IHI、富士通といった、優れた技術を持つ会社がたくさんあります。

戦車や護衛艦、潜水艦、戦闘機などを作っていますが、実はこれらの会社にとって、防衛の仕事は全体の売り上げの1割にも満たないことがほとんどです。

本業は別の機械やシステムを作っていて、防衛の仕事は「副業」のようになっています。

さらに最近は、日本政府がアメリカから完成した高性能な武器を直接買う「FMS」という仕組みが増えました。

高性能な武器をすぐに手に入れられるメリットはありますが、そうすると日本の会社に仕事が回ってきません。

アメリカは大切な技術の設計図を教えてくれないので、日本の技術も育ちません。

防衛の仕事は儲からないし、いつ注文がなくなるかわからないため、リスクを嫌がって武器を作るのをやめてしまう日本の会社も増えています。

もし日本の会社が武器を作れなくなったら、外国から買った武器が壊れたときに修理をすることもできず、いざという時に国を守れなくなってしまいます。

一つの戦車を作るのには1300社もの小さな会社が関わっており、その会社が一つでも潰れてしまうと、完成しなくなってしまうのです。

過去に日本とアメリカでF-2という戦闘機を一緒に作ったときには、アメリカから大切な飛行のプログラムを教えてもらえず、日本が苦労して自分たちで時間をかけて開発したという悔しい経験もありました。

このままでは日本の防衛産業は消えてしまいます。

これを解決するため、日本政府は武器を外国に輸出するルールを新しくし、他の国と協力しやすくしました。

そして現在、日本はイギリス、イタリアと協力して「次期戦闘機」という次の世代の新しい戦闘機を一緒に作る計画を進めています。

これまで一人で作っていた日本が、経験豊富なヨーロッパの国と組むことで、新しい技術を学び、莫大なお金の負担も分け合うことができると期待されています。

イギリスやイタリアは強力な味方ですが、交渉のプロでもあるので、日本もしっかりと意見を言っていく必要があります。


未来の戦いは「ドローン」や「AI」、そして宇宙へ!

これからの未来、防衛産業や戦争のやり方はどう変わっていくのでしょうか。

これまでは、巨大な戦車や戦闘機、船を作る重工業が主役でした。

しかし今は、みなさんも知っている「無人機(ドローン)」が戦争の主役に変わりつつあります。

2019年には、イランの支援を受けたグループが、無人機を使ってサウジアラビアの石油施設を攻撃し、世界の石油の生産を大きく減らしてしまう事件がありました。

ウクライナの戦いでも、何億円もする巨大な戦車が、数万円で作られた小さなドローンにやられてしまうことが起きています。

おもちゃのラジコンのようなダンボール製のドローンに爆弾をつけて飛ばすなど、誰でも簡単に扱える武器になっているのです。

これは、中世の時代に、高い身分の騎士が、安い鉄砲を持った農民に負けてしまった歴史を思い出させます。

また、「人工知能(AI)」の進化も止まりません。

AIが敵の動きを予測したり、スマートフォンの顔認証のような技術を使って敵の兵士の顔を特定し、その情報を相手の家族に送って戦う気をなくさせたりしています。

膨大なデータを一瞬で計算し、どこを攻撃すればいいかをAIが教えてくれる時代です。

これからは、鉄や火薬の量ではなく、どれだけ賢いソフトウェアやプログラムを作れるかが勝負になります。

さらに、宇宙も新しい活動の場所として注目されています。

これまで宇宙開発は国がやるものでしたが、今は民間の会社が活躍しています。

イーロン・マスクという人が作った会社「スペースX」の人工衛星(スターリンク)は、ウクライナの戦場でインターネットをつなぐために大活躍しました。

これまでは武器作りとは関係なかったIT企業や、新しいアイデアを持った小さな会社が、防衛の最前線に立つ時代になっています。

これからの世界を平和にしていくためには、こうした世界の防衛の仕組みや、新しい技術がどう使われているのかについて、私たち一人一人がしっかりと関心を持って考えていくことが大切です。

決して、自分とは関係ない遠い世界の話だと思わずに、ニュースを見たり、本を読んだりして、社会がどう動いているのかを知り続けてほしいと思います。

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