変わりたいのに変われない」あなたへ―他人の評価と過去に縛られず、“今ここ”から人生を選び直す方法「嫌われる勇気」を小学生でも分かるように説明します
嫌われる勇気――自己啓発の源流「アドラー」の教え
著者 岸見 一郎
はじめに
このnote記事は、無料部分の「小学生でもわかる解説」だけでも十分にご理解いただけます。
有料エリアには「音声考察(日本語版・英語版)」と本のエッセンスをより深く理解するための「大人向けの解説」を用意しております。
なお、この記事は無料・有料・音声考察のすべてにおいて、原著の引用は一切使用しておりません。すべて、私自身の言葉のみで構成したものです。

今回は、ある一冊の本についてお話ししたいと思います。その本の名は『嫌われる勇気(きらわれるゆうき)』です。
タイトルを聞いて、「えっ、人に嫌われたいの?」とびっくりしたかもしれませんね。でも、この本に書かれているのは、わざと嫌われようとすることではありません。
「本当の自由を手に入れて、幸せに生きるためのヒント」がたくさん詰まっているのです。
この本は、人生に悩んでいる「青年」と、ちょっと変わった考え方を持つ「哲人(てつじん)」という先生の、対話(おしゃべり)で進んでいきます。
青年は、「世界は複雑で、悩みばかりだ」と思っていますが、哲人は「世界はシンプルだし、誰でも今日から幸せになれる」と言い切ります。
さて、どんなお話なのか、5つの夜に分かれた長い長い話し合いを、一緒にのぞいてみましょう。
第一の夜:過去の原因ではなく「今の目的」を見る
まず哲人は、みなさんがびっくりすることを言います。
「世界が複雑に見えるのは、君が『サングラス』をかけて世界を見ているからだ」と。もしサングラスを外せば、世界はシンプルでまぶしいくらいに見えるはずです。でも、多くの人は自分からサングラスをかけることを選んでしまっています。
ここで大事な話が出てきます。「人は変われるか?」という問題です。青年は「人は変われない」と言います。例えば、青年の友達に、部屋に引きこもって外に出られない人がいます。彼は過去にいじめられたり、親との関係が悪かったりして、それが「トラウマ(心の傷)」になっているから外に出られないのだ、と青年は考えます。
これを「原因論(げんいんろん)」と言います。「過去に〇〇があったから(原因)、今はだ(結果)」と考える方法です。
でも哲人は、これをきっぱり否定します。「トラウマなんて存在しない」と言うのです。 哲人はこう考えます。「彼は、不安だから外に出られないのではない。『外に出たくない』という目的(もくてき)が先にあって、そのために『不安』という感情を作り出しているのだ」と。
これを「目的論(もくてきろん)」と言います。 もし外に出れば、誰かに傷つけられるかもしれないし、恥をかくかもしれない。だから「外に出ない」という目的を達成するために、不安や恐怖という感情を利用しているのです。
「そんなの嘘だ!」と青年は怒ります。そこで哲人は「怒り」についても説明します。 ある日、青年がカフェでウェイターにコーヒーをこぼされました。青年はカッとなって大声で怒鳴りました。
青年は「怒りの感情に突き動かされた(自分では止められなかった)」と言いますが、哲人は違います。「君は、大声を出すために、怒りという感情を使ったのだ」と言うのです。 本当は言葉で注意すれば済む話です。でも、手っ取り早く相手を自分の言う通りにさせたかった(屈服させたかった)から、怒りという道具を取り出したのです。
その証拠に、お母さんが娘と大声で喧嘩していても、電話がかかってきて相手が担任の先生だと分かれば、すぐによそ行きの丁寧な声になりますよね? そして電話を切れば、また怒り出します。つまり、怒りは出し入れ可能な「道具」なんです。
大事なのは、「過去に何があったか」ではなく、「今、どういう意味づけをして、どう生きるか」です。井戸水の温度は一年中18度くらいで同じですが、夏に飲むと冷たく、冬に飲むと温かく感じますよね。事実は変えられませんが、どう感じるか(解釈)は自分で決められるのです。
第二の夜:すべての悩みは「対人関係」にある
次に哲人は、「人間の悩みは、すべて対人関係(人付き合い)の悩みである」と言い切ります。もし宇宙に自分一人しかいなければ、悩みなんてなくなります。孤独を感じるのも、周りに他人がいるからです。
ここで「劣等感(れっとうかん)」の話になります。劣等感とは、「自分は人より劣っている(ダメだ)」と感じることです。 実は、哲人は身長が155cmしかありません。
若い頃はもっと背が高くなりたいと悩んでいました。でも、ある友達に「背が高くなってどうするの? 君には人をくつろがせる才能があるんだよ」と言われて考えが変わりました。 大きな人は相手を威圧(怖がらせる)してしまうかもしれませんが、小柄な哲人なら相手も安心できます。
そう考えると、背が低いことは「短所」ではなく「長所」にもなるのです。 つまり、背が低いという事実が問題なのではなく、それを「他者と比較してダメだ」と思い込んでいる自分の心が問題なのです。
「優越性の追求(ゆうえつせいのついきゅう)」という言葉も出てきます。これは「もっと向上したい、良くなりたい」と思う気持ちのことで、誰にでもあります。それ自体は良いことです。
でも、それを「他人との競争」にしてしまうと苦しくなります。
「あの人に勝った、この人に負けた」と考えていると、周りの人がみんな「敵(てき)」に見えてきてしまいます。 そうではなく、「今の自分よりも前に進もう」とすることが大切です。周りの人は、競争相手ではなく、同じ平らな場所を歩いている「仲間(なかま)」なのです。
また、自分のことを自慢する人がいますよね?
実は、自慢する人は自分に自信がないんです。「自分は優れているんだ」とわざわざ言わないと、周りに認められないと思っているからです。これを「優越(ゆうえつ)コンプレックス」と言います。
逆に、「私はこんなに不幸なんだ」と自慢する人もいます。「不幸自慢」です。これは、不幸であることで人の同情を引き、特別扱いされようとする、弱さを武器にした作戦なのです。
第三の夜:他者の課題を切り捨てる
さて、ここからがこの本の核心、「課題の分離(かだいのぶんり)」という話です。
みなさんは親や先生に「勉強しなさい!」と怒られたことはありますか? 青年もそうでした。 でも哲人は言います。「勉強するかしないかは、子どもの課題であって、親の課題ではない」と。
どうやって「誰の課題か」を見分けるかというと、「その選択の結果、最終的に困るのは誰か?」を考えます。勉強しなくて困るのは、親ではなく子ども自身ですよね。だからこれは子どもの課題です。 他人の課題に土足で踏み込むことを「介入(かいにゅう)」と言います。親が「勉強しなさい」と命令するのは介入です。あらゆる対人関係のトラブルは、この介入から始まります。
「馬を水辺に連れていくことはできるが、水を飲ませることはできない」ということわざがあります。親や先生は、勉強できる環境を作ったり援助したりすることはできますが、無理やり勉強させることはできないのです。
そして、これは「承認欲求(しょうにんよっきゅう)」の話につながります。承認欲求とは「人に認められたい」「褒められたい」という気持ちです。 哲人は「承認欲求を否定せよ」と言います。
人に褒められるために生きていると、いつの間にか「他人の期待を満たすための人生」を生きることになってしまいます。それは自分に嘘をつく、不自由な生き方です。
自分の信じる道を選ぶこと、それは「自分の課題」です。その選択に対して、他人がどう思うか、嫌うかどうかは「他人の課題」です。自分にはどうすることもできません。
他人にどう思われるかを気にせず、自分の生き方を貫くこと。そのためには、他人から嫌われることを恐れてはいけません。 「自由とは、他者から嫌われることである」。
これが、この本のタイトルの意味なのです。わざと嫌われる悪いことをするわけではありません。誰からも嫌われないように八方美人で生きるのは不自由だ、という意味です。
第四の夜:世界の中心はどこにあるか
「課題の分離」をして、自分と他人を切り離すと、バラバラになってしまう気がしますよね? でも哲人は、その先に「共同体感覚(きょうどうたいかんかく)」というゴールがあると言います。 共同体感覚とは、「他者を仲間だと見なし、ここにいてもいいんだと感じられること」です。
自分にしか関心がない人(自己中心的な人)は、自分が「世界の中心」にいると思っています。
「みんなが私のために何かしてくれる」と思っているのです。 でも、世界地図を見てください。フランス中心の地図もあれば、中国中心の地図もあります。地球儀で見れば、どこも中心だし、どこも中心ではありません。 あなたは世界の中心ではありません。
共同体(みんな)の一部です。だから、「この人は私に何をしてくれるか?」ではなく、「私はこの人に何ができるか?」を考えなければなりません。
そして、もっと広い視野を持ちましょう。学校でいじめられて居場所がないと感じても、学校は小さなコップの中の嵐のようなものです。外にはもっと大きな世界が広がっています。「より大きな共同体の声」を聞くことが大切です。
ここで、人との接し方について大切なルールがあります。それは「褒めてはいけないし、叱ってもいけない」ということです。
「えっ、褒めるのはいいことじゃないの?」と思いますよね。 でも、「よくできたね」と褒めるのは、能力のある人が能力のない人に下す「評価」であり、上から目線の言葉です。
これは「縦(たて)の関係」です。 アドラー心理学では、すべての対人関係を「横(よこ)の関係」にします。同じではないけれど、対等な関係です。
横の関係では、褒めるのではなく「勇気づけ」を行います。 友達が手伝ってくれたら「ありがとう」「助かったよ」と言いますよね。これが横の関係の言葉です。 人は、褒められる(評価される)ためではなく、「私は誰かの役に立っている」と感じられた時に、自分の価値を実感し、勇気を持つことができるのです。これを「他者貢献(たしゃこうけん)」と言います。
「でも、寝たきりのおじいちゃんは、何もできないから役に立っていないのでは?」と青年は聞きます。 哲人は答えます。何かをする(行為)レベルではなく、ただそこにいる(存在)レベルで考えるのです。
もしあなたのお母さんが事故にあって意識不明になったら、生きていてくれるだけで嬉しいと思いますよね? 何もできなくても、存在しているだけで役に立っているし、価値があるのです。
まずは自分自身が「ここに存在しているだけで価値がある」と受け入れること(自己受容)、そして他人を無条件に信じること(他者信頼)、そして仲間に貢献すること(他者貢献)。この3つがセットになって、幸せを感じられるようになります。
第五の夜:「いま、ここ」を真剣に生きる
最後の夜、哲人は「人生の意味」について語ります。
多くの人は、人生を「線」のようなものだと考えています。過去から未来へと続く線路のようなものです。そして、「夢」や「目標」という山の頂上を目指して登っていくのが人生だと思っています。 でも、もし頂上に着く前に事故で死んでしまったら、その人生は失敗だったのでしょうか?
哲人は言います。人生は線のようには見えますが、実は小さな「点」の連続なのだと。これを「連続する刹那(せつな)」と呼びます。
人生は、ダンスのようなものです。ダンスを踊っている時、どこかに到着しようとは思わないですよね? 踊っている「今、この瞬間」を楽しむことが目的です。結果としてどこかにたどり着くことはあっても、目的地が大事なのではありません。
過去を振り返って悔やんだり、未来を心配したりするのは、人生という舞台全体に薄ぼんやりとした光を当てているからです。そうではなく、「今、ここ」に強烈なスポットライトを当ててください。
そうすれば、過去も未来も見えなくなります。 過去に何があったとしても、あなたの「今」には関係ありません。未来がどうなるかも、今考える問題ではありません。「今、ここ」を真剣に生きること(真剣にダンスすること)だけが大切なのです。
青年は最後に聞きます。「じゃあ、人生の意味とは何ですか?」 哲人は答えます。「一般的な人生の意味はない」と。 戦争や災害など、理不尽なことは起きます。そこに最初から決まった意味なんてありません。 でも、「人生の意味は、あなたが自分自身に与えるものだ」と哲人は言います。
世界がどんなにひどい状況でも、あなたが「世界は素晴らしい」「人々は仲間だ」という意味を与えることはできます。
迷った時のために、「導きの星」があります。
それは「他者貢献(たしゃこうけん)」です。 「私は誰かの役に立つんだ」という星を見上げていれば、どんなに嫌われても、何をしても自由です。どこへ向かっても構いません。 誰かと競争する必要もありません。
ただ、「今、ここ」を真剣に踊り続けていれば、いつか「誰もしらないどこか」にたどり着くはずです。
「世界を変えるのは、他の誰かではありません。あなたしかいないのです」。 10年前に知りたかったと嘆く青年に対し、哲人は「今知った、この瞬間が一番早かったのだ」と励まします。
こうして長い対話は終わりました。 青年はドアを開け、雪の積もった外に出ます。世界はシンプルで、輝いて見えました。青年は新しい一歩を踏み出す決意をしたのです。
まとめ
この本が教えてくれることを、もう一度簡単におさらいしましょう。
原因ではなく目的を見る: 「〇〇のせいでできない」と言い訳するのはやめよう。「やらない」と決めているのは自分自身です。
すべての悩みは対人関係: 人と比べるのをやめよう。みんなは敵じゃなくて仲間です。
課題の分離: 「勉強しなさい」と言われても、勉強するのは自分の課題。他人の評価を気にせず、自分の信じる道を行こう。
横の関係: 友達や家族と、上も下もない対等な関係を作ろう。褒められたいと思うより、「ありがとう」と言える人になろう。
今、ここを生きる: 過去や未来を気にしすぎず、今この瞬間を一生懸命楽しもう。
『嫌われる勇気』とは、決して意地悪になることではありません。 それは、「自分の人生を、自分の足で歩く勇気」のことです。
他人にどう思われるかよりも、自分がどうありたいかを大切にする。そうすれば、世界はもっとシンプルで、自由な場所になるはずです。
もしこれから先、人間関係で悩んだり、自分に自信がなくなったりした時は、この「哲人と青年の話」を思い出してみてください。きっと、前に進むための勇気が湧いてくるはずです。

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