「Wordで小説を書くの、そろそろ限界かも」と思ったら。長編を書く人ほど執筆アプリが便利だった話
「小説を書くならWordで十分」
私もずっとそう思っていた。
実際、短編を書いている間は特に困らなかった。
Wordを開いて、上から順番に本文を書く。推敲して、完成したら保存する。
これだけなら何の問題もない。
ところが、長編を書くようになってから少しずつ状況が変わってきた。
「あの設定、どこに書いたっけ?」
「あの人物が初めて出てきたの何章だっけ?」
「第3章の伏線を確認したいけど、今いるの第12章なんだよな……」
書くことそのものより、必要な情報を探す時間が増えてきた。
そこで執筆専用のアプリをいくつか試してみた。
正直なところ、最初は「Wordとそんなに変わる?」と思っていた。
でも実際に一本の小説を書くつもりで使ってみると、思っていた以上に違った。
この記事では、Wordなど一般的な文書作成ソフトから執筆専用アプリへ移行すると何が変わるのか、そしてどんな人なら導入する意味があるのかをまとめてみる。
Wordで小説を書いていて、一番つらくなったこと
Wordそのものが小説執筆に向いていないわけではない。
文章を書く、文字数を確認する、校正する、印刷する。
こうした機能は十分揃っている。
問題は、小説が長くなった時だった。
たとえば10万字の小説を書くとする。
第1章から第10章まであって、登場人物が何人もいる。
さらに、
キャラクター設定
時系列
世界観設定
プロット
伏線
調べた資料
没にした文章
思いついた台詞
なども管理し始める。
こうなると、「文章を書くためのファイル」だけでは足りなくなってくる。
「設定資料.docx」が増殖し始める
私の場合、最初は本文とは別に設定資料を作った。
本文.docx
人物設定.docx
プロット.docx
メモ.docx
くらいなら、まだ大丈夫。
ところが書いているうちに、
人物設定_修正版.docx
プロット_変更後.docx
メモ2.docx
使うかもしれない台詞.docx
時系列.xlsx
……と増えていく。
そしてある日、
「どれが最新なん?」
となる。
フォルダ分けすればある程度整理できるけれど、今度は本文を書きながら設定を確認するたびに別ファイルを開く必要がある。
ほんの数秒のこと。
でも、これが何十回、何百回と積み重なると意外と面倒だった。
長編では「書く」より「行き来」が増える
もう一つ困ったのが、本文の中を行ったり来たりすること。
短編ならスクロールすれば済む。
でも長編になると、
「5章で言わせた台詞を確認したい」
と思った時に、その場所まで移動するだけでも地味に手間がかかる。
確認したら、また元の場所へ戻る。
さらに人物設定を確認する。
また本文へ戻る。
資料を開く。
また本文へ。
この繰り返し。
一回一回は大したことがない。
でも創作中って、頭の中にある文章を逃がさないようにしながら書いている。
その途中で別のファイルを探したり、長い本文をスクロールしたりすると、せっかく乗っていた集中がぷつっと切れることがある。
私が欲しかったのは高機能な文章作成ソフトというより、
「小説を書く時に、余計なことを考えなくて済む環境」
だった。
執筆専用アプリを使って一番楽になったこと
そこで執筆用アプリをいくつか試してみた。
一番違いを感じたのは、
本文と、それ以外の情報を一ヶ所にまとめられること。
たとえば画面の左側に、
第1章
第2章
第3章
第4章
と章が並んでいる。
クリックすればすぐ移動できる。
さらに同じ場所に、
人物設定
世界観
プロット
資料
メモ
なども置ける。
「本文を書いている場所」と「小説について考えている場所」が一つになる。
これが思った以上に楽だった。
人物設定をすぐ確認できるのが便利
長編を書いていると、妙に細かいことを忘れる。
年齢。
誕生日。
身長。
家族構成。
目の色。
以前どんな呼び方をしていたか。
そして何より怖いのが、
「たぶんこうだった」
で書いてしまうこと。
後から読み返して、
「3章では兄がいるって書いてるのに、8章で一人っ子になってる」
なんてことが起こる。
執筆アプリで人物設定をまとめておけば、本文を書きながらすぐ確認できる。
創作中の脳みそを「覚えておくこと」に使わなくていい。
これはかなり助かった。
章ごとに分けられると推敲もしやすい
長編を一本の巨大なファイルとして扱わなくていいのも便利だった。
たとえば、
第1章 5,000字
第2章 7,000字
第3章 4,500字
のように分けて管理できる。
今日は第3章だけ直す。
明日は第7章。
そんな使い方がしやすい。
「10万字の原稿を推敲する」と考えると気が重いけれど、
「今日はこの5,000字だけ」
なら、かなり心理的な負担が違う。
小説そのものは一本でも、作業単位を小さくできる。
これは長編を書く人ほど恩恵を感じやすいと思う。
ただし「高機能=書きやすい」ではなかった
ここは実際に使ってみて意外だったところ。
機能一覧だけを見ると、
「できることが多いアプリほど便利そう」
と思う。
人物相関図が作れる。
時系列を管理できる。
プロットをカード形式で並べられる。
資料を保存できる。
文字数を分析できる。
目標文字数を設定できる。
確かに全部便利そう。
でも実際に小説を書いてみると、使わない機能が大量にあることも珍しくなかった。
むしろボタンや項目が増えすぎて、
「本文を書きたいだけなのに、なんか難しい」
となることもある。
これは意外と重要だった。
執筆アプリは「一番高機能なもの」を選ばなくていい
小説を書くスタイルは人によってかなり違う。
プロットを細かく作ってから書く人もいれば、ほとんど作らず本文を書き始める人もいる。
人物設定を詳細に作る人もいれば、必要最低限しか決めない人もいる。
PCだけで書く人。
スマホでも書く人。
自宅だけで書く人。
移動中にも書く人。
だから執筆アプリも、
「一番高機能なもの」ではなく「自分の書き方を邪魔しないもの」
を選んだ方がいいと思う。
私が執筆アプリを選ぶ時に見るポイント
いくつか試してみて、私は次のポイントを見るようになった。
1.章を分けて管理できるか
長編ならかなり重要。
本文を章・シーン単位で分割できて、すぐ移動できるものが使いやすかった。
2.人物・設定・資料をまとめられるか
別のWordファイルやメモ帳を大量に開かなくて済むだけでも楽になる。
3.自動保存があるか
創作者としては非常に大事。
集中している時ほど保存を忘れるので、ここはアプリに任せたい。
4.バックアップ・同期はどうなっているか
クラウド保存できるのか。
別端末から開けるのか。
データを書き出せるのか。
「アプリが使えなくなったら原稿まで取り出せない」という状態は避けたい。
5.Wordやテキスト形式へ書き出せるか
同人誌を作るなら、最終的に別のソフトで組版することもある。
そのため、完成した原稿を一般的な形式で書き出せるかは確認している。
6.スマホ・タブレットでも使えるか
外出中に思いついた文章をスマホから追記したい人には重要。
逆にPCでしか書かないなら、ここは重視しなくてもいい。
7.そして何より「書きやすいか」
結局これだった。
画面を開いて、
すぐ本文を書き始められる。
私はこれをかなり重視している。
Wordのままで十分な人もいる
もちろん、全員が執筆専用アプリへ乗り換える必要はない。
短編中心。
設定資料がほとんどない。
本文を最初から最後まで一本のファイルで管理したい。
すでにWordで何の不満もない。
そんな人なら、そのままでいいと思う。
WordにはWordの強みがあるし、使い慣れた道具というのは非常に強い。
新しいアプリの操作方法を覚える方が負担なら、乗り換える意味はあまりない。
逆に、
「書くこと以外の作業が面倒になってきた」
なら、一度試してみる価値がある。
執筆アプリを試すタイミングは「Wordが嫌になった時」ではない
私の場合、「Wordでは書けない」と思ったわけではなかった。
Wordでも書ける。
今でも書ける。
ただ、
もっと楽にできる部分が増えてきた。
それが執筆アプリを試した理由だった。
本文を書くこと自体は、どのアプリでもできる。
でも長編になるほど、
「文章を書く時間」以外の作業が増える。
設定を探す。
章を移動する。
プロットを確認する。
資料を見る。
文字数を確認する。
ファイルを整理する。
そうした小さな作業を減らしてくれるのが、執筆専用アプリの良さだと思う。
じゃあ、結局どの執筆アプリがいい?
ここが一番悩むところだと思う。
執筆アプリには、
シンプルに本文を書くことへ特化したもの。
長編管理に強いもの。
設定資料の管理に強いもの。
スマホとの同期が便利なもの。
買い切り型。
月額型。
無料で使えるもの。
かなりいろいろある。
そして実際に使ってみると、
機能表だけでは「自分に合うか」が分からない。
そこで私は、同じ条件でいくつかの執筆アプリを実際に使って比較してみた。
料金だけでなく、
長編の管理
人物設定
プロット管理
自動保存
クラウド同期
スマホ対応
データの書き出し
操作の分かりやすさ
「実際に本文を書き続けたいと思えるか」
まで見ている。
「Wordから乗り換えたいけれど、どれを選べばいいか分からない」という人は、こちらも参考にしてほしい。
道具を変える目的は「上手く書くため」ではなく「書くことに集中するため」
執筆アプリを使ったからといって、小説が上手くなるわけではない。
良い台詞を考えてくれるわけでもないし、物語の続きを勝手に書いてくれるわけでもない。
でも、
「あの設定どこだっけ」
「第3章まで戻らなきゃ」
「どのファイルが最新版だっけ」
そんな小さな中断を減らすことはできる。
私が執筆アプリを使って一番良かったと思ったのも、そこだった。
高機能だから便利なのではない。
書くこと以外を考える時間が減ったから、便利だった。
もし今、Wordで小説を書きながら、
「書けるんだけど、なんとなく面倒になってきた」
と感じているなら。
それはWordが限界なのではなく、作品の方が今までの執筆環境より大きくなったのかもしれない。
長い物語を書くために、道具の方を少しだけ変えてみる。
案外、それだけで続きを書くのが楽になる。
