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コーディングAIエージェントブームは終わった

まさしくそうだと感じたyoutube動画があったので、記事で紹介します。


チャンネル: Newbee テクノロジーメディア(約55分、2026年8月17日公開) ゲスト: 牛尾剛氏(米マイクロソフト Azure Functions プロダクトチーム シニアソフトウェアエンジニア。著書『世界一流エンジニアの思考法』12万部超、新著『部下としてのAI 世界一流エンジニアの進化術』)

現場のクラウドエンジニアである牛尾氏が、シアトルでの実務経験をもとに、AIエージェント活用の「熱狂」がひと段落した後にエンジニアが本当に磨くべき力について語った回です。

1. 「コーディングエージェントブームは終わった」の真意

牛尾氏が「終わった」と言うのは、技術そのものではなく「エージェントを手当たり次第に使おうとする熱」のことです。数か月前から職場でその変化を感じているといいます。LLM やエージェントがどういうもので、どこに限界があるかが一巡して見えてきたことで、業界全体が「とにかくAIを使おう」というモードから「ビジネス成果(アウトカム)につなげよう」というモードに移行した、という認識です。

特に問題視されているのが、開発者が自分のPC上でコーディングエージェントを何本も並列に走らせる使い方です。自動化の起点を個人のPCや個人の権限に置くと、サプライチェーン攻撃や権限乱用のセキュリティリスクが生じ、さらに各自がバラバラに使うと知識や成果が個人に閉じて組織の学習が積み上がりません。本番運用や組織的な自動化はクラウド側で設計し直すべきだ、というのが牛尾氏の立場です。

2. 本格運用している現場の実例(障害対応)

牛尾氏のチームでは、システム障害(インシデント)対応にエージェントを本格運用しています。従来は原因調査(RCA:Root Cause Analysis)に1件あたり最低2時間かかっていたものを、いまはエージェントが障害受付をきっかけにログを調べ、原因候補を提示し、その場で直せるものは対応、それ以外は人へ引き継ぐ設計にしています。精度は「完全に正しい判断が約50%」「部分的に正しいが約30%」で、合わせて8割は役立つ水準とのことです。

重要なのは、最終判断は常に人が確認する「ヒューマン・イン・ザ・ループ」設計であること、そして解決結果と見立てを後から突き合わせて正否を評価し、間違っていればエージェントの定義を直す学習の循環(フィードバックループ)を回している点です。かつてコーディングエージェントで作り込んだ資産を、クラウドサービス(SRE Agent)側の性能が上がったことで再びクラウドへ「戻した」という運用の変遷も語られています。

3. 鍵は「アセット(資産)を貯める」こと

牛尾氏が繰り返し強調するのが、人間が言語化した「アセット」こそが資産になるという発想です。LLM の性能がどれだけ上がっても、各社固有の知識や社内にしかない情報をAIが勝手に学習してくれることはありません。だからこそ、どのツールをどう使うかという「スキルの定義」、任せてよい範囲や制約という「エージェントの定義」、業務の標準的な進め方を、人間が言葉にして残す作業が欠かせないと説きます。

無計画に走らせ続けるとトークン(使った分だけ課金される処理単位)を浪費し、投資対効果が悪化します。そのためチームでは、AIにまず段取り(計画)だけを立てさせ、実行はクラウドの仕組みに任せ、AIには「計画」と「最後のまとめ」だけを担わせる設計へ進んでいるといいます。

4. 「並列で回す人」ほど伸びない/「本体力」の話(動画の核心)

この動画のハイライトです。エージェントを並列でたくさん回す人ほど、長期的には伸びにくいと牛尾氏は指摘します。並列で小さな作業を大量にさばく仕事は自動化との相性がよく、いずれ誰でも(機械でも)こなせるようになるため、見かけの生産性は上がっても本人の理解や基礎力は伸びないからです。本当に価値の高い仕事ほど難度が高く、長時間の集中と深い思考を要し、そもそも何本も並行して回すこと自体が成り立たないといいます。

ここで牛尾氏が持ち出すのが「本体力」という概念です。エージェントを使いこなす技術自体は短期間で身につき、いまや「文房具」に近い。本当に重要なのは、コードやシステムを理解し、正しい設計や判断を下せる人間側の実力(=本体力)だという主張です。仕組みが生産性を上げるのは「使う人間が優秀な場合」に限られ、そうでなければ「10倍のスピードでゴミが量産される」だけ。AIが仕事を100倍にしてくれても、元になる自分の理解や判断がマイナスなら、100倍してもマイナスのまま、という比喩が印象的です。

具体的な時間の使い方として、以前は1日8時間をアウトプットに充てていたが、AIで4時間に短縮できるなら残りの4時間は本を読み、人と議論し、一次情報に触れる時間に回すほうがよい、と提案しています。

5. 「部下としてのAI、上司としての人間」

新著のタイトルどおり、牛尾氏はエージェントを「知識も計算力もあるが、詰めが甘く抜けが多い"アホな優秀な部下"」と表現します。指示があいまいだとズレた成果物を堂々と出し、テストを実行していないのに「できました」と報告することもある。だからこそ、正しく指示し、確認し、やり直させる「上司としての人間」の力が決定的に重要になる、という結論です。

6. 激しく同意した私なりのまとめ

「上司としての人間」の力、これは必ず必要になるビジネススキルです。逆にこれを持たない人は、「上司になれない人間」となります。

DXの名のもとにAIを導入。これだけでは後者にまわってしまいます。

人は、DXで目指すゴールが何なのかを明確に示し、それに向けてAIに何を任せて何をアウトプットさせるのか、更に上司となる人間は結果を判断をし、誤っていればAIを修正できるループ能力を持つ必要があります。

牛尾さんは「AIに丸投げする人は伸びない」と言いました。これは人間の上下関係でも同じです。ループは部下に任せて、自分は判断だけすればいい——そう思っているアナタ。その「ループを回せる部下」は、たいてい判断もできる人です。つまり、判断しかしないアナタのほうが先に要らなくなる。まだ遅くはありません。自分なりに勉強することをお勧めします。


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