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人生、何回転目で当たりますか。

人生、何回転目で当たりますか。

第2話 15歳。俺は高校に行かなかった。

15歳の春。

同級生たちは、新しい制服を着ていた。

俺は、作業着を着ていた。

高校には行かなかった。

正確に言えば、

「行けなかった」わけじゃない。

俺が行かなかった。

特別な夢があったわけでもない。

家が貧乏だったからでもない。

ただ、

勉強が嫌いだった。

学校も嫌いだった。

そして何より、

早く大人になりたかった。

中学3年の冬。

教室では毎日のように進路の話が飛び交っていた。

「どこ受けるん?」

「工業。」

「俺、商業。」

「制服かわいい高校どこやろ。」

みんな、

当たり前のように高校へ行く話をしていた。

俺には、

それがよく分からなかった。

また3年間、

朝起きて学校へ行って、

興味もない授業を受けて、

先生に怒られて。

それなら働いた方がいい。

金ももらえる。

好きなものも買える。

誰にも文句を言われない。

15歳の俺は、

本気でそう思っていた。

ある日の放課後。

担任に呼ばれた。

机の上には、

俺が提出した進路希望調査。

第一希望。

『就職』

先生が俺を見る。

「本当に高校行かんのか?」

「はい。」

「今からでも遅くないぞ。」

「別にいいっす。」

「働くって、お前が思っとるほど楽じゃないぞ。」

分かってる。

そう答えた。

もちろん、

何も分かっていなかった。

先生はしばらく黙ってから言った。

「あとで後悔しても、時間は戻らんぞ。」

その言葉だけは、

なぜか今でも覚えている。

でも当時の俺には、

何も響かなかった。

後悔?

するわけない。

むしろ、

高校へ行く友達より先に金を稼げる。

俺の方が一足先に、

大人になる。

そんなことすら思っていた。

そして卒業。

最後のホームルームが終わって、

教室で写真を撮った。

「また遊ぼうぜ。」

「おう。」

「仕事頑張れよ。」

「お前らも高校頑張れや。」

笑って別れた。

次の日から、

みんなの人生が少しずつ違う方向へ進み始めた。

そして春。

高校生になった友達が制服を着ている頃、

俺は新品の作業着に袖を通した。

鏡を見る。

悪くない。

むしろ、

少しかっこいいと思った。

学生じゃない。

今日から社会人。

15歳のガキが、

作業着を着ただけで大人になった気でいた。

初出勤。

朝は早かった。

眠い。

職場には、

知らない大人しかいない。

「おはようございます。」

自分では普通に言ったつもりだった。

「声ちっちゃいぞ。」

いきなり言われた。

「あ、おはようございます!」

周りが少し笑った。

恥ずかしかった。

仕事が始まった。

「それ取って。」

どれ?

「そこ置いといて。」

どこ?

知らない言葉が飛び交う。

何を聞けばいいのかすら分からない。

適当に動けば怒られる。

止まっていても怒られる。

昼になる頃には、

もう帰りたかった。

学校なら、

時計を見ながら授業が終わるのを待てばよかった。

仕事は違った。

自分が動かなければ、

何も進まない。

失敗すれば、

自分のせい。

誰も、

15歳だからと特別扱いしてくれなかった。

仕事が終わった頃には、

体中が痛かった。

家に帰って、

布団に倒れ込んだ。

そのとき初めて思った。

学校って、

楽だったんやな。

でも、

誰にも言わなかった。

自分で選んだ道だった。

「やっぱり高校行けばよかった」

なんて、

死んでも言いたくなかった。

だから次の日も起きた。

その次の日も。

怒られて、

覚えて、

また失敗して。

少しずつ仕事にも慣れていった。

そして、

初めての給料日が来た。

自分で働いて稼いだ金。

その数字を見た瞬間、

仕事の辛さなんて少しだけ忘れた。

「うわ、こんなにもらえるんや。」

嬉しかった。

高校へ行った友達が、

親から小遣いをもらっている。

俺は違う。

自分で稼いでいる。

それだけで、

自分の方が大人になったような気がした。

欲しかった服を買った。

友達と飯を食った。

財布も買った。

欲しいと思ったら買う。

金がなくなれば、

また働けばいい。

貯金なんて考えなかった。

来月も給料は入る。

だから、

全部使っても大丈夫。

この頃からだったと思う。

俺の中に、

ある考え方が染みついたのは。

金は、また入ってくる。

なくなっても、

次がある。

今月使ったなら、

来月稼げばいい。

未来の金を、

先に当てにする。

それが、

後になって俺を何度も苦しめることになる。

もちろん、

15歳の俺には分からない。

初めて自分で稼いだ金を握って、

ただ嬉しかった。

働く。

金が入る。

使う。

また働く。

単純だった。

それで人生は回っていくと思っていた。

そんな生活にも慣れ、

少し時間が経った頃。

仕事終わり。

少し年上の先輩が、

俺に声をかけた。

「今日、暇?」

「暇っすよ。」

「なら付き合え。」

「どこ行くんすか?」

先輩は車の鍵を回しながら、

何でもないことのように言った。

「パチンコ。」

俺は笑った。

「俺、やり方知らんすよ。」

「教えてやるって。」

このとき断っていたら、

俺の人生は少し違ったんだろうか。

たまに考える。

でも、

そんな「もしも」に意味はない。

俺はその車に乗った。

そしてその日、

働く以外の方法で金が増える瞬間を、初めて知った。

それが、

長い長いハズレの始まりだった。

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