七夕の歩幅#毎週ショートショートnote【ショートショート】
何軒かのシャッターが閉じたままのアーケード。色褪せた笹が静かに揺れている。
繋いだ右手が、ぐいと前へ引っ張られた。
去年までは私の靴の先ばかりを追いかけていた小さなスニーカーが、今は私の影を追い越してアスファルトを力強く蹴っていく。
去年は「だっこ」と両手を広げてきた。今年は彼の手が笹の葉に届く。
「パパ、ここ、つける」
「パパ、ここにつけて、だよ。に!」
「うん、パパ、ここつけて、に!」
彼は真剣な顔で笹の葉と私を交互に見る。
「違う違う。パパ、ここにつけて」
「パパ、ここにつけて」
私は息子と一緒に作った短冊を笹の葉に結んだ。
立ち上がるとアーケードの向こうに富士山が見えた。あの山の向こうには、しばらく帰っていない私の実家がある。
空き店舗のガラスに貼られたテナント募集の紙を、風に揺れる短冊がパタパタと叩いた。
息子の、心細そうに揺れる小さな肩を引き寄せる。その小さな肩甲骨をそっと撫でた。
一年に一度しか会えない星たちの真下。私は息子の新しい歩幅に合わせて、富士山の方角へと爪先を向けた。
【長編作品もよろしくお願いします】
