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子どものSOSは、「助けて」とは限らない――学校へ行けなくなる前に見えていた「いつもと違う」

「学校に行きたくない」

子どもがそう言ってくれれば、私たち大人は、
「何かあったのかな」
と考えることができます。

けれど、子どものSOSは、いつも「助けて」という言葉になって現れるとは限りません。

振り返ってみると、
あのとき、すでに小さな変化は始まっていた。
長く子どもたちと関わってきた中で、そう感じたことが何度もあります。

1学期とは違って見えた、ある生徒

40年間、中学校で子どもたちと関わってきた中で、今でも印象に残っている生徒がいます。

1学期、その子は学校行事にも部活動にも、張り切って取り組んでいました。

ところが2学期になって、様子が変わりました。
教室にいても、見るからに覇気がない。
以前に比べて、言葉数も少なくなりました。

「何かあったのかな」
気になって、様子を見ていました。

その後、テストで思うような点数が取れなかったことを一つのきっかけに、その子は学校へ来ることが難しくなっていきました。

ただ、ここで大切にしたいのは、
「テストが原因で不登校になった」と単純に考えないことです。

これは、あくまで一人の生徒の例です。
子どもの心や行動が変わっていく背景は、一人ひとり違います。
友達との関係かもしれない。
勉強かもしれない。
先生との関係かもしれない。
部活動かもしれない。

家庭での出来事や、睡眠、体調などが影響していることもあります。
そして、いくつものことが重なっている場合もあります。
だからこそ、原因を一つに決めつけるのではなく、

「この子に今、何が起きているのだろう」
と見ていくことが大切なのだと思います。

学校だから見える「いつもと違う」

学校で子どもたちを見ていると、小さな変化が見えることがあります。

よくしゃべっていた子が、しゃべらなくなる。
声をかけても、不愛想な返事が増える。
友達のグループに入らなくなる。
休み時間に一人でいることが増える。
以前は積極的だった活動に参加しなくなる。
表情が乏しくなる。
忘れ物や提出物の遅れが増える。
もちろん、一つの行動だけを見て、
「この子は不登校になる」
と判断することはできません。

思春期です。
機嫌の悪い日も、一人でいたい日もあるでしょう。

だからこそ、
「今、何をしているか」だけでなく、「以前と何が変わったか」を見る。

私は、この視点を大切にしてきました。

家庭だから見える「いつもと違う」

一方、先生には見えなくても、親御さんだから気づける変化があります。

朝、起きられなくなった。
食欲が落ちた。
「頭が痛い」「お腹が痛い」が増えた。
帰宅するとすぐ横になる。
以前よりイライラする。
学校の話をすると表情が曇る。
日曜日の夜になると元気がなくなる。
好きだったことをしなくなった。

そんな変化を見ると、親御さんは、
「学校で何かあったの?」
「友達とうまくいっていないの?」
と理由を知りたくなると思います。

心配だからこそ、原因を見つけて何とかしてあげたい。

それは自然な気持ちです。

けれど、子ども自身にも、
「どうして苦しいのか、自分でも分からない」
ということがあります。

だから、
「どうして?」と聞くより先に、「いつもと何か違うかな」と見てみる。

それも一つの支援です。

家庭と学校の「気づき」をつなぐ

家庭では、
「最近、朝起きるのがつらそうです」

学校では、
「そういえば最近、休み時間に一人でいることが増えています」

それぞれ単独では、小さな変化かもしれません。

でも、二つの情報をつなぐことで、
「この子、少し疲れているのかもしれない」
と見えてくることがあります。

だから、まだ不登校になっていなくても、
「こんなことで相談していいのかな」
と思わなくていいのです。

「最近、少し様子が違うんです」
その一言から始めてもいいと思います。

学校だけ、家庭だけで抱えない

そして、学校と家庭だけで解決しようとしなくてもいいのです。

子どもの状態によっては、
スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカー、教育相談機関、福祉機関、医療機関などの力が必要になることもあります。

大切なのは、
「どこが解決するか」ではなく、「この子に今、どんな支えが必要なのか」を一緒に考えること。

家庭で見えた姿。
学校で見えた姿。
関係機関で見えた姿。
必要に応じて医療から見た状態。

それぞれの情報や専門性をつなぐことで、子どもの姿がより立体的に見えてくることがあります。

文部科学省も、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーを活用した教育相談体制の充実を進めています。

「いつもと違う」に気づくところから

子どもはいつも、
「つらい」
「助けて」
と上手に言えるわけではありません。

しゃべらなくなる。
不愛想になる。
一人になる。
朝起きられなくなる。
何もしたくなくなる。

それが必ずSOSだと決めつける必要はありません。

でも、
「あれ? いつもと違うな」

そう感じたら、少しだけ子どもに意識を向けてみてください。

私が不登校支援で大切にしているSTOPメソッドでは、これを

T ― Tune In
と表しています。

子どもの気持ちを大人が勝手に決めることではありません。

表情、行動、言葉、生活の変化を丁寧に見る。

そして、
一人で判断せず、必要な人と「気づき」をつないでいく。

そこから支援は始まるのだと思います。

一人で抱え込まないでください

「誰かに相談したい」
「学校以外にも相談できるところを知りたい」
そう思ったときは、一人で抱え込まないでください。

文部科学省では、子どもや親御さんが利用できる相談窓口を案内しています。「24時間子供SOSダイヤル」は24時間・年中無休の全国統一窓口です。

文部科学省「不安や悩みがあったら話してみよう」・相談窓口

また、私も「心の相談室 こころの巣」で、不登校・行き渋りなどについて親御さんのお話を伺っています。

「こんなことを相談していいのかな」
という段階でも大丈夫です。

子どものSOSも、親御さんの不安も、一人で抱えなくていい。

必要な人とつながることも、支援の大切な一歩だと思っています。

心の相談室「こころの巣」

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