創作物語『夜店は続くよ、どこまでも』 シロクマ文芸部
夜店から聴こえてくる、この音楽はなんでしょう。
チヅルがひょこっとベビーカステラの屋台を覗いてみると、お姉さんの後ろに置いてあるスピーカーからその音楽は流れているようです。
どこかで聴いたことのあるような、懐かしい音楽です。
けれども、チヅルはいつどこで知った曲か思い出せません。
しばらく屋台の前で立ち尽くしてしまいました。
「おじょうちゃん、どのベビーカステラにする?」
迷っていると勘違いされたのでしょう。
チヅルはベビーカステラを買う気はさらさらありませんでしたが、お姉さんのはつらつとした笑顔を見たら、なにも買わないのもなんだか申し訳なくなり、10個入り500円のプレーン味を指差しました。
結局、どこで聴いた曲かは思い出せませんでしたが、チヅルはベビーカステラを受け取ると、屋台をあとにしました。
4年前の夏休みに来たのが最後の、おばあちゃんの家の近くの夏祭りです。
今年5年生になるチヅルは、初めてこの地に1人で来てみましたが、立ち並ぶ色とりどりの夜店、楽しそうな家族連れ。
知っているはずの風景は、一人だとその賑やかさとは裏腹に、どこか物悲しさを覚えました。
パクっ
ベビーカステラのカップの蓋を開け、一つ口に放り込んでみました。
ペタペタと指に砂糖がつく感覚を覚え、ティッシュを持ってくるんだった、とチヅルは指のやり場に困りながら思いました。
しかしその少し余ったるい、柔らかなカステラが、チヅルを少しだけ安心させました。
夜店がどこまで続いてるか、確かめに行こう。
チヅルはもう一つベビーカステラを口へ放り込むと、先ほどよりも軽い足取りで、人混みの中へ溶けていきました。
おしまい
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久しぶりに小牧幸助さまの企画に参加させていただきました。
読んでいただきありがとうございました🌱
あむの
