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【ひとり旅日記 Day.3 後編】憧れの東洋文庫ミュージアムへ

ひとり旅3日目、後半の記録です。(2回に分けたのに長いです…)

前編はこちら↓



東洋文庫ミュージアム

三菱一号館美術館と静嘉堂文庫美術館を巡った後、東京駅でどうにかこうにかランチにありついて、山手線で駒込へ向かいます。

余談ですが、旅行の後たまたま目にしたYouTubeのショート動画で、日本の鉄道についてインタビューを受けたパキスタン出身・日本在住の男性が
「日本の電車、停まる駅多すぎ。山手線でも、駒込なんて誰が使ってるの?」
と、ピンポイントにまあまあひどいことを言っていて、思わず笑ってしまいました(笑)

でも、地方から旅行に来て、わざわざ駒込に行くわたしのような人間もいるんですよ!


そのお目当ての東洋文庫ミュージアムは、駒込駅から徒歩8分と書かれていましたが、反対側の出口から出てしまったために12~3分かかりました。(常に駅の出口を間違える人)



東洋文庫は三菱の三代目社長・岩崎久彌によって1924年に創設された、東洋全域の歴史と文化に関する研究機関。そして東洋学の面白さをより多くの人に知ってもらうべく、2011年に開館したのが東洋文庫ミュージアムです。


一番有名なのは、2階に上がってすぐのところにあるモリソン書庫でしょう。



この空間に約2万4000冊の古書があるそう。


洋書です


モリソンは、ロンドン・タイムズの北京特派員を務め、中国を中心としたアジアに関する貴重な文献を数多く収集したオーストラリア出身のジャーナリスト兼冒険家。彼が20年にわたって収集した中国関連の書籍コレクションを、岩崎久彌が一括購入して日本で最初の東洋学研究図書館である東洋文庫が設立されました。
つまりこの本棚に並べられているのは、原点となるコレクション。

とにかく圧巻です。

モノクロで撮ると迫力が増す




本って美しい



しばらくこの本棚の前でうっとりし、写真を撮り、そして展示を全部見終わった後にもまたここに戻ってきてうっとりしていました。

本好き(眺めるのが好き)な方には超・おすすめスポットです。

この書庫を通り過ぎると、展示室。
様々なジャンルの貴重な本があれこれ展示されていました。


『シャクンタラー』って恋愛モノだったのか…


この装丁の美しさ…!


一方こちらは…

写本チベット大蔵経


ダライ・ラマ13世から河口慧海に下賜され、
その後東洋文庫に寄贈されたもの


河口慧海(日本人として初めてチベットの首都ラサへ入境した明治~昭和期の黄檗宗の僧侶、仏教学者、探検家)の『チベット旅行記』は、学生の頃からずっと読もう読もうと思い続けて早や四半世紀…
ここでこの本に出会ってしまったということは、もう四の五の言わずに読めということですね、はい、読みます!


江戸時代のブックカバー
おしゃれ!


ほとんど捨てられたらしいけれど
残してくれていた人がいてよかった
他のページも見てみたい


コレクション展示の後、企画展に進みます。


現在開催されているのが「怖い」本展(2026年6月3日~9月23日)。
ホラー系が苦手なので少しひるみましたが、概要はこんな感じ。

時代や地域を越えて、恐ろしい事実を知らせるため、教訓とするため、時には、ぞっとする感じを楽しむため、数多くの「怖い」本が書かれてきました。そのような資料をひも解くと、普遍的な怖い本だけではなく、昔は怖くなかったが今考えると怖い本や、今は怖くない本など、「怖い」という感覚は時代と共に変化していることが見えてきます。本展では、「怖い」という言葉から連想される様々なテーマで資料を展示します。恐ろしい死後の世界や、災いを引き起こす人ならざるものたち、悪人と呼ばれる人々、さらに、人が起こした事件や刑罰まで......。怖さを感じさせる要因は時代や地域ごとに移り変わってきました。人々が怖さと向き合い、乗り越えてきた歴史に触れて、改めて「怖い」を考えていただければ幸いです。

「怖い」本展 展示概要より


定番の『往生要集』
”地獄”の概念を日本人に植え付けた本


わたしの少し前で見て回っている大学生くらいの若い男女がいました。

彼らが、実にミュージアムを楽しんでいたんです。

会話から察するに東洋史専攻とかではなさそう。
でも、1点1点立ち止まって、お互いに「これってこういうこと?」「こうじゃない?」と考察を述べあったりして、かなり時間をかけて熱心に見入っていました。



たとえば、妖狐である玉藻の前が正体を現した場面を描いた本の前では
「玉藻って、呪術廻戦に出てきた!」
「え~、そうなの?」
なんて話をしていて、今時だなぁと。わたしらの時代は玉藻と言えば地獄先生ぬ~べ~でしたからね。


若い男女の会話、実に微笑ましく、ミュージアムを満喫しているなぁ、と思うのですが…

いかんせん声がデカい!
ここは居酒屋か?というくらい、デカい。

たぶんシンプルに地声が大きいタイプなんでしょう。

きっと悪気はないし、むしろミュージアムを正しく楽しんでるんだから、温かく見守りたいと思うのですが、部屋中に響き渡るくらいの音量で活発に会話していて全く集中できない…

係の方が近くにいれば注意してくれたかもしれませんが…
わたし含め周りの大人たちも誰も注意はしませんでした。

だって、誰よりもミュージアムを満喫しているのがわかるから!

いいぞ、若者たち、将来有望だぞ!と応援する気持ちと、
でもせめて音量を半分くらいにしてくれんかね…とお願いする気持ちが半々。


彼らとなるべくバッティングしないように回っていたので、順番はぐちゃぐちゃになってしまいましたが、わたしも若者に負けじとしっかり楽しみました。


国吉の怖い絵
鬼婆伝説をもとに描かれた作品
妊婦の腹に包丁を突き立てる鬼婆、怖…!


これも国芳
《源頼光公館土蜘蛛作妖怪図》


もともとは朝廷に服従しない民を「土蜘蛛」と呼んでいたのが、時代が下ると妖怪の姿で描かれるようになったそう。
これもまた、妖怪の一側面。

妖怪は日本だけに留まりません。

東南アジアの妖怪・飛頭蛮


10代の頃に読んだ『創竜伝』(田中芳樹)に出てきたやつ!
マレーシアの妖怪だったかな?首から内臓をぶら下げて飛ぶというグロテスクさ。日本のろくろ首は、首が伸びるだけの平和(?)な妖怪でほんとよかった。


『閲微草堂筆記』1816年
『聊斎志異』をベースにした志怪小説


本の奥にあるのが、本に書かれている鎰鬼(首くくり幽霊)の絵。首を吊って亡くなった女の幽霊が、女性に憑りついて首を吊らせようとしている、という図です。

この絵は『点石斎画報』の中の一コマ。

『点石斎画報』
1884-1898年 上海刊


『点石斎画報』はイギリス人のメイジャー兄弟によって清朝末期の上海で刊行された絵入り新聞。当時の時事から民俗まで、様々な内容が取り扱われています。

実はこの新聞、わたしが卒論のテーマにしようとしていた題材なんです。結局別のテーマにしましたが(だって先生に「え~?それにすんの?やめといたら~?」って言われちゃったし)、ちょっと思い入れのあるものだったので、こんなところで再会するとは!と密かに興奮。


さて、「怖い」を扱った様々な本が紹介されていますが、やはり忘れてはいけないのが人間の怖さ、残忍さ


新井白石『読史余論』


新井白石が、織田信長=残忍というイメージを作った人なんですね。


その流れで『明史』の中で明の太祖・朱元璋の残忍さを書いた箇所も展示されていました。
中国における正史は次代の王朝が作るものなので(つまり明を滅ぼした清が作る)数字は盛っていると思いますが、朱元璋は明を建国後、血縁者以外を次々に粛清しその数は十万人に及んだ、と書かれています。


《アヘン吸飲者とばくち打ち》1842年


1842年というとアヘン戦争が終結した年。
描いたのはイギリス海軍の画家だそうです。自国が持ち込んだアヘンのせいで多くの中国人が廃人になっていく様を、どんな気持ちで描いたんでしょうか。


他にも中国(清代)の拷問の様子を描いたイギリスの絵図や、17世紀にリスボンで発行された『日本殉教精華』、石川五右衛門の釜茹でなど、残酷な刑罰についての史料も多数。
人間って怖い。


そして怖いものと言えば、天災

映画「すずめの戸締り」にも出てきた要石



要石も大ナマズも、どちらも地震の恐ろしさを伝える絵です。
災害の多い日本列島にあっても、やはり地震は「怖い」ものの象徴ということ。
そしてまさかこの旅の終盤に、熊本であんな大地震が起きるなんて…


カフェへと続く、知恵の小径

見終わったのは3時半くらいだったので、併設のカフェでお茶をすることに。

ミュージアムからカフェへと続く回廊が素敵でした。



右側に並ぶ黒い柱一つ一つに、アジア各国の言語で格言みたいなことが書かれています。

ヒンディー語
非暴力不服従を掲げたガンディーの言葉


カンボジア語


ペルシャ語


改めて、アジアの言語には様々な文字がありますね。

ベトナム語はアルファベット表記


わたしの心をくすぐってやまない西夏文字

西夏はタングート族が
中国西北部(現在の寧夏回族自治区)に
建てた王朝(1038年 - 1227年)


テュルク語(ウイグル文字)


ラオス語
”シンサイ”というのはラオス文学の
最高傑作とされる抒情詩、
そしてその主人公の名前


サンスクリット語
日本(仏教)でもなじみのある梵字


ナシ語(トンパ文字)
象形文字がクセになるかわいさ
でもいいこと言ってる


ビルマ語
Cの字が組み合わさってるみたいで
かわいい


モンゴル語は縦書き
現在のモンゴルではキリル文字表記
中国の内モンゴル自治区ではモンゴル文字


東洋学の研究機関に付属しているミュージアムに掲出されているだけあって、言葉や学問にまつわる格言が多い。

そんな中でも、今のわたしに一番刺さったのは、これ。


タミル語
南インドやスリランカで使われている言語
この言葉に、ちょっと背筋が伸びました


こんな感じで、写真を撮ったり意味を考察したりしていたので、なかなかカフェにたどり着きません(笑)


オリエント・カフェでひと息

10分以上かかってどうにか入店。
やっとひと息つけます。


ミュージアムカフェって、基本お高いですよね…
ケーキセットを諦めてドリンクのみにしました。


カフェラテ880円(クッキー1枚付き)


それにしても、1日に3館はなかなかハード(頭と感受性がパンクしそう)だったな…としみじみ振り返りながら中庭を眺めていると、雨が降り出してきました。

あっという間に土砂降り


天気予報で夕立が降るとは言っていたけれど、ここまでとは!
アプリで雨雲レーダーを見るとしばらくこの状態が続きそう。

カフェは夜まで営業していますが、ミュージアムは5時閉館。
まだグッズも見ていないし荷物もロッカーに預けたままなので、4時半くらいにカフェを出てミュージアムへ戻りました。


ミュージアムショップをじっくり見て回り、小冊子2冊とポストカードを購入。

小冊子500円は本当にありがたい
過去展の小冊子も買ってしまった


まだ外は土砂降りで、ロビーには雨宿りしている人たちが多数。

当日中の再入場は可能ということだったので、チケットを見せて展示室への再入場の希望を伝えます。

「あと5分ほどしかありませんけど…」
と言われましたが、
「5分以内に出ますので」
と伝え、再入場。


入ってすぐのところにあるアジア各国の絵本が置かれたコーナー、気になっていたんですよね。

そこで見つけた本。




宮崎駿の漫画『シュナの旅』の元になった物語で、読んでみたいと思っていた本!
とにかく爆速で読みました。


旅から帰って久々に再読


ほかにも気になる絵本はたくさんありましたが、その1冊だけどうにか読み終えて4時58分に退出。


本のミュージアム、楽しすぎました!
これからは文学館・資料館などを積極的に訪れてみたいなと思いました。



3館を1日で回ったのはたぶん初めてですが、体力以上に頭と情緒がついていかない。
ぐったり疲れましたが、東京最終日はとても充実した1日になりました。


さて、4日目は朝から新幹線で移動です。


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