書くことがない、雨の日に。分かってくれる誰かに届け、と思いを込めて。|エッセイ
今日は特に書くことがない。
だけど今日は、やけに筆が乗る。
誰かに伝える内容がない日に限って、筆が乗る。
秋雨前線の影響で、私の住む地域も今日は豪雨だ。
いや、雷も鳴っているから、雷雨だ。
正直に言います。
私はこれくらい思いっきり雨が降ってくれると、なんだか嬉しくなる。
テンションが上がる、という感じじゃない。
静かな喜び。
低気圧ゆえのやる気のなさと、「今日は買い出しは諦めて家の中に引きこもること」が、合法的に許される。
なんなら、有り合わせの材料だけで今晩の夕食が作れるなら、「それは専業主婦のプロだ」と言うことを立証できるチャンスでもある。
それなら特に出かける予定もなくなったし、カッパのフードを目深に被ってもびしゃびしゃになってしまう顔を、覗き込んでまで挨拶してくるママ友はいないだろう。
よし。
朝一の化粧といった面倒な工程も間引ける。
そんな今日という日に、私は静かにワクワクする。
実は、雨の日にワクワクしていたのは、私だけじゃなかった。
年長の息子を自転車に乗せ、ピカッと光る向こうの空を横目に、ビビりながら自転車を走らせる。
息子が一生懸命、私に何か話しかけている。
雨よけカバーのせいでうまく聞き取れないのだが、雷雨で途切れ途切れになる息子の声を繋ぎ合わせ、解読する。
要するに、
「今日は最高の日」
らしい。
だって外遊びがなくなるんだもん。
一日中、工作ができるんだもん。
息子にとっても、やりたいことを、やりたいだけできる合法的な日ということだ。
私だけじゃない。
家族の誰かも機嫌がいいと、なんだか嬉しくなる。

さぁ、浮いた時間で今日は何しようか。
息子を送り届け、ワクワクしながら、家に向かって漕ぎ出す。
途中、傘を差してゆっくり歩いて登園する年少さんの親子とすれ違った。
長女が幼稚園の時の、同級生のお母さんだ。
クラスが違ったので、あまりちゃんと話したことはない。
でも、歩きと自転車でも、しっかり目を合わせて挨拶をしてくれるこのお母さんのことが、私は好きだった。
私が「いってらっしゃい」と言うと、
「いってきます!」
と返ってくる。
いつもの一瞬の挨拶。
今日も爽やかだなぁ。
でも今日は、ちょっと特別だった。
いつもの挨拶の後に、
「気をつけてね!」
と重ねてくれた。
……それが、嬉しくて。
「ありがとう!」
と、ついて出ていた。
あれ。
「気をつけてね」とかけてくれた言葉も嬉しかった。
だけど、自分が発した「ありがとう!」が、
もっと心地よく感じたことにびっくりした。
雨のせい?
雨粒に反響して、私に返ってきたの?
すごく不思議な感覚になった。
この感覚は、書かずにいられないと思った。
今日の浮いた時間は、真っ先にnoteに使うことにした。
そして今、こうして書いている。
私が感じた、小さく震える感動を、誰かに共有できる場所があること。
きっと、「へぇー。」で終わるエピソード。
誰もわかってくれないかもしれない。
でも、もしかしたら分かってくれる人がいるかもしれない場所。
その存在が、私にとって、とてもとても
ありがたい。
そんなことを考えながら、
こういう日に一番、
専業主婦でいれることに感謝する。
noteをここまで書きながら、本当は、冒頭はこんな風に始めないといけないかな……と思っていた。
「昨今の豪雨の影響で、被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。」
そう、書くべきとは思う。
雷雨にワクワクしている場合じゃない。
だけど、インフルエンサーでもない私は、そんな定型文には慣れていない。
自分の言葉じゃない言葉は、書けない。
定型文と書いてしまっているあたり、心がこもっていない前提なのである。
会ったことのない方々に送る、私からのエールは……
どうか、自分ごととして早めの避難をしてください。
命があれば。
命さえあれば、何度だってやり直せます。
だから、その命と大切な家族のために、万が一が我が身に起こると思って、行動してください。
被災された方々には、微力ながら、募金という機会で応援させてください。
だから、どうか、皆様が一日でも健やかな日常を取り戻せますように。
そして、皆様の経験を真摯に受け止め、明日は我が身であることを肝に銘じて。
今から、半分になったガソリン入れてきます。
ふぅ。
結局定型文みたいになってしまったけど、
AIに相談してない、正真正銘の私の言葉が書けました。
大変不謹慎なこととは重々存じますが、
ここは私のフィールドなので。
私のエッセイなので。
また本文に戻ります。
そうそう、話は脱線しました。
専業主婦でいさせてもらえることのありがたさを実感し、言霊の力を体感した今日の私は、何かが違う。
それを日常に落とし込みたくなった。
夫の出勤は、家族の中で一番遅い。
夫婦だけなのが気恥ずかしいのか、いってらっしゃいと声をかけても、いつも目も合わせず、
「いってきまーす」
と、背中で返事をする。
そっけないことにはもう慣れたが、
まぁ、もうちょっとなんかあってもいいよな。
とは、今でも思う。
言霊、言霊……
そうだ。
今日は、いってらっしゃいの後に、ひと言追加した。
「雷に打たれんとってね。」
そしたら、
「おっけーい」
と返ってきた。

