凹み。
それはとても不思議な凹みであった。
やわらかいのに固く、
硬いのに柔軟で、
触れると
ふに、
としっとりとして優しい感触なのに、
それでいてカタチは頑として変わらない。
無味無臭で、無色。
如何とも表現し難い色合いで、
この世のどこにでもありそうなのに、
どこにもないような、
ありふれたもののようで、
知らないような、
人人の記憶には共通して知覚されているのに、
思い出そうとすると
つるり
と逃げてあさってへ。
眉間からこめかみあたり、
海馬をひと回りして、
しゅんっ
掴めなくなるその手前、
なんとか”それ”を留めようと、
一瞬のひらめきに名前をつけ、
足かせをつけることに成功する。
そうだ、
瑞々しい女の肌のような色なのだ。
なんとも据わりよく、
なんとも得難く、
なんともうつつの間いのような、
うっとりと頬を寄せて埋もれてしまう。
けれどもその凹みは、
やわらかいのはまたたく間、
触れた途端に頑なに強張ってしまうのだ。
けれども時間が経つと、
その凹みはまたたく間、
しっとりとした柔らかさで、
撫でてくれる。
なんとも不思議な凹みである。
私はその凹みにはまっているのだ。
何年も、何年も。
いや、もしかすると、
またたく間
かもしれない。
浮遊感と接地感を行き来するチリのように、
永く、
妄りに、
ふわふわと。
私はその凹みにはまったまま、
動けないでいる。
