『(11)ふざけるな』
「ふざけるな」
私がすべてを話し終えると、先生は静かに、だけど確かにそう言った。
その一言に、胸がざわついた。
――やっぱり私は甘えてるんだ。
こんなことで辛いなんて言っちゃダメだった。
もっと頑張らなきゃいけなかった。
話さなきゃよかった――。
言葉が返ってくるまでの一瞬で、頭の中をそんな後悔がぐるぐると巡った。
でも次の瞬間、先生は無言でどこかに電話をかけ始めた。
その姿は、落ち着いているようで、どこか怒りを抑えているようにも見えた。
しばらくして電話を終えると、先生ははっきりと言った。
「あなたは悪くない。担任と、その園がおかしいんだよ。」
先生の声には、はっきりと怒りが込められていた。
“ふざけるな”は、私に向けられた言葉ではなかったんだ――。
それに気づいた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなって、肩の力が少しだけ抜けた気がした。
「ここまで、よく頑張ったね。これからのこと、一緒に考えていきましょう。」
そう言っている間に、研究室のドアがノックされ、進路指導の先生と、教育学科の学長が入ってきた。
先生は、私のためにすぐに動いてくれていたのだった。
進路指導の先生も、学長も、私を責めることは一切しなかった。
「辞めて、別の園に行きましょう。
そっちの方が絶対に、あなたにとっていい。」
その言葉は、雷のように私の中に響いた。
“辞める”という選択肢――
確かに、頭をよぎったことはあった。けれど、
「辞めたら迷惑をかけてしまうかな」
「こんなに早く辞めたら、根性がないと思われるかも」
そんな思いが先に立って、口に出すことも、考えることすらできずにいた。
でも、「辞めてもいい」と、はっきり言ってもらえたことで――
ああ、私は、ずっとこの言葉を待っていたんだ。
心の底から、そう思えた。
