第7話「歩けないけど、前に進める」/RE:silience
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「下半身はもう動かないって、先生に言われました」
原田友梨(はらだ ゆり)28歳。元・ツアー添乗員。
旅行が大好きで、日本中を飛び回っていた彼女は、ある登山ツアーの下見中に崖から転落し、胸椎損傷で両下肢麻痺となった。
事故の瞬間の記憶はほとんどなかったが、ベッドで目を覚ましたとき、彼女の人生の“足元”は崩れ去っていた。
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「車椅子生活、って……。じゃあ、私はもう旅に出られないってことですよね」
リハビリ初日にそう呟いた彼女の目は、どこか焦点を失っていた。
作業療法士・朝倉遥は静かに、彼女の履歴書を見つめていた。
全国各地のスタンプで埋め尽くされた旅の記録と、無数の笑顔のスナップ写真。
「歩けないこと」が、彼女のすべてを否定しているように見えた。
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だが、数週間後。
彼女の変化は突然だった。
「朝倉さん、ノートパソコン貸してもらえませんか?ブログを再開しようと思って」
「旅ブログですか?」
「……“歩けない旅人の視点”って、意外とニーズあるかもって思って」
彼女の指先が動き始めた。
ブログのタイトルは、『車椅子で、行けるところまで。』
文章は正直だった。
悔しさ、諦め、でも、ちょっとだけ未来への好奇心。
その文体はどこか軽やかで、前向きで、何より“旅人の目線”を忘れていなかった。
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朝倉は思った。
この人は、足で旅していたんじゃない。心で旅をしていたんだ。
だから、脚が動かなくても、彼女の“人生の航路”は続くのだと。
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ある日、彼女が言った。
「リハビリの目標、決めました。自分の車椅子で、“一人旅”に出ること」
「どこへ行くんですか?」
「北海道。昔、添乗で行った礼文島。あそこだけは、自分の足で見たって、言いたいから」
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退院後、彼女は旅に出た。
ブログは今や月間10万人が読む人気サイトに。
「車椅子でも泊まりやすいホテル」
「段差のない観光地」
「現地の人がくれた優しさ」――
それは、歩く人には見えない景色の記録だった。
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そして、礼文島の港で撮られた1枚の写真。
潮風に吹かれながら、笑顔で腕を広げた彼女の横には、こう書かれていた。
『私は、歩けない。でも、進める。』
朝倉遥は、その写真を病院のリハビリ室の壁に貼った。
毎日誰かが通るその場所に。
立てなくてもいい。歩けなくてもいい。
“進む意思”がある限り、人は前に進めるのだ――。
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