古事記の神話 #025(藤沢 衛彦)
二十五 少彦名命
大国主神が、出雲の御大の御崎に御在でのときに、海上から加賀芋の殻を割つて、作つた船に乗り、火取蛾の皮を、丸剝ぎに剥いだのを、衣服に着て、地方へやつて来る神がある。で、何といふ神かとたづねても返事しない。また、お伴の神達に聞いても、皆知らないといつた。そこで、蟾蜍が、
「これは、久延毘古が、屹度存じて居りませう」
といつた。早速、久延毘古を召んで、たづねられた時に、久延毘古は、
「これは、神産巣日神の御子の、少名毘古那神でお在でなされます」
とお答へ申した。それで、神産巣日神に申上げると、
「これは実際自分の子である。わが子が沢山ある中に、わが手の間から、漏つた子である。汝は、葦原色許男と兄弟となつて、その国の経営をなし就げよ」
と仰せられた。それよりして、大穴牟遅神と、少名毘古那との、二柱の神が相並んで、此国の経営をなされた。そして後に、その少名毘古那神は、常世国(底依国の転じたるにて、絶遠なるをいふ。遥かに離れて、往来しがたく、不死不変の国なり)にお渡りなされた。それで、その少名毘古那神を、少名毘古那神だと、あらはし白した久延毘古は、今に山田の案山子のことであつて、此神は、足は歩行が出来ないが、天下のことは、何でも知れる神である。
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