不健康でいさせてよ#青ブラ文学部
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いつも素敵なお題をありがとうございます😊
不健康でいさせてよ
総文字1360
いつもの研修医シリーズのお二人です😊
「健康の概念について少し神経質になってきたな」
「生活習慣病が増えているからじゃないですか? 内科の高嶺先生が最近高度肥満の子どもがかなりのペースで増えてきてるとか。不眠症外来に訪れる高校生も多いですし……」
「堅祐はどうして病気になるかわかるか?」
マヤさんの質問は答えが難しい。一般論で考えると、糖尿病は遺伝的要因と、子どもが選択して好き嫌いを増やした中で栄養が偏ったりしてなる場合の二択が殆どだ。不眠症は携帯が盛んになり、ブルーレイ中毒と頭に常に興奮作用のある刺激が行くからじゃないのか。
「自業自得じゃないですかね」
「そうだな、それも答えのひとつだ。ただ、こころの病気は自業自得だけでは片付けられない」
そうだ、俺は外科医を目指している。だから、ついつい画像から見えるものを治療するのが専門となるし、そこに目が傾いてしまう。
マヤさんはメンタルカウンセリングの資格を持っており、彼がそれをひけらかしたことなんて一度もないけど、見えない部分への繊細な対応力が強い。
「こころの病気ってものは自分の負の部分から積み重なって作り上げられるものだけど、ちょっとした外部の刺激で一気にそれが爆発するんだ。誰だって病気になりたくてなったわけじゃない。でも、あのひと病気で可哀想だなんて言われたくないんだ」
確かにそうかもしれない。わたしは病気ですと肩肘張って歩いているとあいつは頭がおかしいんじゃないかと健常人に言われるし、かと言ってそれを包み隠そうとするとヒソヒソと悪口のようにあの人病気だから寄らない方がいいなんて言われてしまう。
「つまり、自分と外部が病気を作り上げているんですか?」
「そうだね。100%ってものはないと思っている。自分だけが全て悪いわけでもないし、ついつい他人のせいにしたくなるかもしれないけど、それも間違っている。ただ、辛い時に正論を言っても誰にも届かないだろう?」
俺は今まで一度も病気になったことがないので返答に困った。でも、大好きなマヤさんは健康な身体であったにも関わらず、叔父夫婦の借金を肩代わりする為に左の腎臓を摘出している。もっと違う人生があったはずなのに、彼は望まずに不健康に陥った。
「……不健康でいいじゃないですか」
俺の発言が意外だったのか、マヤさんは珍しく驚いたように目を丸めていた。
「五体満足とか、こころが幸せとか、内臓が元気とか、そりゃあ一般論で考えたらいいことですよ。でも不健康の何が悪いんですかね。健康でいることが正義なのはおかしいと思います」
「医者が言う言葉とは思えないな」
苦笑するマヤさんも俺と同じ考え方なのは知っている。だからほんの少し嬉しそうに口角をあげたのだろう。
「医療従事者の不摂生だな」
「……マヤさん、もしかしてジンを飲みたい口実でこの話をしたんですか?」
「さあな。──花巻先生からご許可をいただいたので、これで心置きなく不健康に過ごしますよ。ありがとうございます」
「えっ、ちょ、ちょっと……!」
都合の良い時だけ俺を花巻先生と呼ぶマヤさん。マヤさんには健康でいて欲しいけど、それは単なる俺の我儘であって、彼は彼の生き方を全うする。それがこころの幸せなのかな。
