自分を『進級』させる春|「日本語ボランティア」という新しい地図を広げて
四月ー。
街の空気が入れ替わり、雨を含んだ土の匂いがしっとりと漂い始めるー。
どこか懐かしく、心の端が震えるようなこの香りに触れると、あの頃の情景が鮮やかに蘇ります。
かつてー。
担任として教壇に立っていた頃、春は「まっさら」になる怒濤の季節でした。
運動部員の賑やかな足音をBGMに、ジャージ姿で校内を駆け回る、
片付け、準備、また片付けのループ。
その目まぐるしさとともに、心に沈んでいた失敗や後悔さえも、新しい始まりへと塗り替えてくれる「救いの時間」でもありました。
そうして、あの慌ただしさを卒業した今ー。
暮らしに「スタートライン」はどこにもなく、いたって穏やかな時間が流れては消えていきます。
嵐のない春は贅沢で、けれど少し手持ち無沙汰でくすぐったい。
今日は、今の私が感じている「春の景色」を、そっとお届けしたいと思います。
春凪に、母の祈りをのせて

今の私の春は、凪そのもの。
担任としての重圧もなく、砂浜でひとり、のんびり貝殻でも拾っているような気分です。
でも、ふと横を見ると、そこには
「新しいクラス、誰と一緒かな!」
と落ち着かない息子たちの姿。
以前は「はい、前向いて!」と整列させていた側の私が、今は
「お願い、相性の良い先生に当たって……!」
と祈るような気持ちで、彼らのドキドキを分かち合っています。
チョークの粉で白くなった指先も、配るべき教科書もないけれど、手元には名前を書き込むべき新しいノートと、保護者としての「未知の緊張感」。
かつてのドタバタ劇を「贅沢なスパイス」だったと懐かしさで胸がいっぱいになるのは、教卓の向こう側にあった、親たちの温かな(そしてちょっぴり必死な)眼差しに、ようやく私が追いついたからなのでしょう。
慌ただしさを手放した今だからこそ持てる、この「ゆったりと見守る」
心の深呼吸。
それが、息子たちの「新しい一歩」をより愛おしく、眩しく見せてくれているのかもしれません。
自分を「進級」させる、春の企み

息子たちのワクワクに便乗して、私もこっそり「自分自身の進級」を企んでいます。
以前から準備を進めてきた、日本語教師ボランティア。
これまでは「教えるプロ」として、分厚い指導書を片手に教壇に君臨(?)してきましたが、これからは地域で暮らす外国の方々の、一番身近な伴走者です。
手元のテキストを開けば、そこにはかつての職員室にはなかった、自由で柔らかな空気が流れています。
「教えるプロ」という肩書きを一度脱ぎ捨てて、まっさらな気持ちで向き合う一歩。
誰かに決められた進級ではなく、自分で選んだ新しい一歩。
この春、私はもう一度、体温が宿る「言葉の世界」へ。
自分自身を強引に進級させてみるつもりです。
「教壇」を降りて見つけた、「新しい春」の景色

これまでは、生徒の行く先を照らすことに、がむしゃらで濃密な春でした。
けれど今、手元にあるのは教科書ではなく、誰かの人生に寄り添いながら、共に見つめる新しい景色。
真っ青な空をそのまま手渡されたかのような、心細さと隣り合わせの、驚くほど広い自由ー。
頼るべき指導書もレールもない白紙の地図を前に、途方に暮れるような不安もあります。
そして、不安と背中合わせに、
『もっと「新しい言葉」に出会いたい!』
という静かな熱が、胸の奥でパチパチとはぜるのを感じています。
この先にどんな「宝物」が待っているのかー。
慌ただしい日々を卒業した先に待っていた景色。
それは、誰かに用意された場所ではなく、自分の意志で選び取った温かな「言葉」との再会でした。
そんな『新入生』のような心の高鳴りを、今はただ大切に抱きしめていたいー。
今年の春は、そんな一歩から始めてみようと思います。

今回の記事を素敵に彩ってくださったのは、みれのスクラップさんのイラストです♡
幻想的で美しい地球の色彩が、この記事に温かな命を吹き込んでくれました。
素晴らしい作品との出会いに感謝を込めて。
最後まで読んでいただき、とても嬉しいです♪
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あなたの温かい気持を、未来への確かなエールに変えて、これからも書き続けます。