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【仏が参戦】ブラウザのAI

ブラウザのFirefoxをつくるモジラと、フランスのミストラルAIが、9月16日に提携を発表しました。


FirefoxのAI機能「Smart Window」で、ミストラルのモデル「Mistral Small 4」が選べるようになります。


ただ、2社が同じ日に出した発表文を並べると、書いてある強さが違いました。原文から確かめます。


増えたのは、モデルの選択肢



モジラ側の発表文は、こうです。


「Mistral Small 4 が Firefox Smart Window ベータに加わり、米国とカナダの Smart Window 利用者にとって新しいAIモデルになる」


続く一文が大事でした。


「Smart Window ベータが使えるすべての市場で、Firefox の利用者はこれまでどおり他の多くのAIモデルからも選べる」


乗り換えではなく、選択肢が1つ増えた、という話です。


一方のミストラル側は「Smart Window は今やミストラルのモデルで動いている」と書いています。同じ日の、同じ提携。強い方だけを読むと、事実を取り違えます。


フランスが、北米の外では最初



もう一つの中身が、対象の地域です。


Smart Window はこれまで、米国とカナダで英語のベータとして配られていました。そこにフランスが加わります。


モジラのブログには9月16日付の追記が入りました。「Smart Window はフランスで提供を開始した。北米の外に出るのはこれが初めて」。フランスの人は、フランス語でベータを試せます。


この先については、モジラが「年内に欧州でさらに広げる計画」と書き、ミストラル側は英国とドイツを名前で挙げています。


選んだ決め手は、多言語の性能



なぜミストラルだったのか。モジラは理由を1つ書いています。


「Smart Window ベータでの性能を評価したうえで Mistral Small 4 を選んだ。多言語での性能も、その重要な一部だった」


2社は、多言語・多文化への調整を「あとから足す対応」ではなくモデルの中心的な性質として扱った、とも書いています。英語圏向けに作ったものを新しい市場へ持っていくのではなく、最初から地域の言語や方言で調整する、という考え方です。


フランス語対応が同じ日に出たのは、たまたまではなさそうです。


会話は、既定では保存されない



ミストラル側の発表文には、扱いの条件が書かれていました。


「会話はモジラのサーバーに既定では保存されない。ミストラルのようなパートナーはゼロデータ保持に同意している」


ゼロデータ保持は、渡した文章を相手側に残さないという取り決めです。


Smart Window そのものも、使うかどうかは任意です。いつ使うか、どの閲覧情報を渡すか、どのAIモデルを使うかを選べて、Firefox の「AIコントロール」から丸ごと切ることもできます。


ブラウザは一方通行の漏斗ではない



モジラのCEO、アンソニー・エンゾア=デメオ氏のコメントが、今回の狙いをそのまま言っています。


「ブラウザは一方通行の漏斗であってはいけない。インターネットを強くしたもの——探し、別の考えや技術に出会い、次にどこへ行くかを自分で決める自由——を守るべきだ」


モジラはいま、ブラウザ・検索エンジン・AIモデル・その周辺サービスを、ひと握りの閉じた会社が全部押さえる状態を警戒していると書いています。


ミストラルのCEO、アルチュール・メンシュ氏も「2つのオープンソース推進者が組んだ」と表現しました。


1週間前、30億ユーロを調達していた



ミストラルは9月9日、シリーズDで30億ユーロを調達したと発表しています。調達後の企業価値は210億ユーロ超で、欧州のテック企業による株式調達としては過去最大だと自社で説明しています。


9月16日17時の日銀公表レート(1ユーロ=178円97銭)で換算すると、調達額は約5,400億円、企業価値は約3.8兆円です。


リード投資家はサムスン電子。いまは20カ国で事業を持ち、125社を超える企業のAI導入を支えているとしています。


ブラウザを持たないAI会社が、独立したブラウザを通じて消費者に届く。その1週間後の一手でした。


読むときは、発表元を2つ開く



今回いちばん実用的だったのは、記事の中身より読み方のほうでした。


提携のニュースは、発表元が2社あります。2社は同じ出来事を、自分に都合のいい強さで書きます。片方だけ読むと、「Firefoxがミストラルに乗り換えた」という、どこにも書いていない話ができあがる。


僕はこの記事を書く前に、動画用の台本でまさにそれをやりました。ミストラル側の一文だけを訳して作り、モジラ側の発表を読んで作り直しています。


AIに要約させるときも同じで、渡すページを1枚にしないほうが安全です。


参考文献





この工場の作り方(仕組み全体)はこちらにまとめています → https://brain-market.com/u/ahoyu/a/bwUDM2UjMgoTZ

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