魔女のハーブは、あんまり甘くない 5ー1 魔女と妖精の王女(1)
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
◯妖精の国(月が、のぼりはじめるころ)
テティス「どうぞ、中へ」
テティス、白い宮殿のなかを、進んでいく。
すこしうしろに、アカリとココが、つづく。
宮殿のなかの小さな妖精たちが、キラキラしながら、アカリたちを見ている。
テティス「・・ふふ。あなたたちに、興味が、いっぱいなんですわ」
テティス、歩きながら、声をだす。
アカリ「(そわそわして)な、なんか、不思議な気分・・」
ココ「ニャ」
ココ、なんだか嬉しそうに、ぴょんと、はねる。
アカリ「・・・・?」
テティス、ココを、ちらりと見ると、ほほえむ。
宮殿は、すべてクリスタルで輝いていて、きゅっきゅっと、足音が、大きくひびく。
アカリ、小さな妖精たちに手を振っていると、やがて、水晶できらめく、大きな広間にでた。
アカリ「・・・・」
アカリ、広間のかがやきに、しばらく、言葉をうしなう。
テティス「・・あちらに、この国の王女、レオーナさまが、います」
テティスが、広間の中央を見ながら、声をだす。
中央では、透き通る水晶のイスの上に、美しい金髪の少女が、座っていた。
アカリは、顔を見ようとしたが、少女は頭をさげていて、顔が見えない。
少女の、とがった耳が、金髪から、はみだしていた。
アカリ「・・・・?」
テティス「レ、レオーナさま・・?」
少女は、こくりこくりと、小さく頭を揺らしている。
テティス、さっと、ひいた表情になると、そろそろと、少女のそばにしゃがむ。
テティス「(小声で)お、起きてください。レオーナさま・・・・」
テティス、手をのばし、少女の肩を、ゆさゆさとゆらす。
ぴょこぴょこと、少女の耳が動く。
やがて、少女が、ゆっくりと顔をあげる。
アカリ、やや緊張の面持ち。
レオーナ「・・あれ、テティス? え、もう朝?」
レオーナ、指先で、まぶたをこすりながら、ふにゃふにゃした声。
アカリ「・・え?」
テティス「ま、また、ねぼけて・・。さっき、魔女さまがくると、伝えたじゃありませんか」
レオーナ、しばらくして、あー、と口をあける。
レオーナ「あ、ああ・・、そうだったわね。それで、その魔女さんは・・・・」
テティスが、アカリを指さす。
レオーナ、アカリと目があった瞬間、うそのように、きりっと、真顔になる。
かがやく藍色の大きな瞳を、アカリにむけ、天使のような笑みを、口元にうかべる。
アカリ、ぴんと、背筋がのびた。
レオーナ「魔女さま・・、アカリさんですね。聞いています。ようこそ、いらっしゃいました」
レオーナが、小さく口をひらくと、きん、と神秘的な音がひびく。
アカリ、ややひきつりながら、笑みをうかべる。
アカリ「は、はじめまして・・」
ココ、小さな目を、レオーナからはなさない。
アカリ「すごい・・、なんか、オーラのようなものが・・。まさに王女の笑みだね・・・・」
ココ、ちらりと、アカリを見る。
レオーナ「・・ねえ、テティス、眠気覚ましに、なにか、飲ませてくれない?」
レオーナ、テティスを見る。
テティス「・・あ、そうですね。ちょうど、このまえ採れた、新鮮なミネラルウォーターがございます」
テティス、壁についたガラスのトビラを開けて、グラスをだす。
レオーナ「・・いえ、わたくし、そちらのハーブがいいわ」
レオーナ、グラスの横にならべてあるハーブとティーポットを、指さして言う。
テティス「・・あ。ですがこれだと、すこし、お時間が、かかるかと・・・・」
テティス、苦笑いをうかべながら、答える。
アカリ「あ・・、わたしが、淹れましょうか?」
アカリが、テティスに、声をだす。
テティス「え、アカリさん・・・・?」
アカリ「わたし、得意なんです。あんまり甘くないですけど」
アカリが、ほほえむ。
テティス「・・ですが、いきなりこられた方に、淹れていただくのは・・・・」
テティスが、すこし迷っていると・・
ココ「ニャ」
ココが鳴き、レオーナが、目にとめる。
レオーナ「・・いいじゃない。淹れてもらいましょうよ」
テティス「(おどろいて)え、よろしいのですか? では・・・・」
アカリ、テティスのそばまで歩くと、グラスを受けとる。
アカリ「わあ、いい香りのするお水。どうやって、あっためればいいですか?」
テティス「はい、そちらの暖炉に、入れていただければ・・・・」
広間のすみに、水晶でできた、暖炉があった。
アカリ「へえ、おもしろい。すっごいキレイ」
アカリ、水晶の暖炉に、手をひろげる。
アカリ「・・あったかい。これなら、すぐにつくれます」
アカリ、ティーポットに、ミネラルウォーターを入れて暖炉にいれると、ハーブを手のひらに、すばやくまとめる。
テティス、アカリの手際のよさに、目をうばわれている表情。
レオーナ「・・・・」
レオーナの耳が、ぴょこぴょことゆれて、ココが、めずらしそうに見ている。
アカリ「・・さ、おまたせしました」
アカリ、クリスタルのティーカップにいれたハーブティーを、レオーナにさしだす。
レオーナ、両手でカップを持つと、ゆっくりと、息をすう。
レオーナ「なんて、いい香り・・・・」
そして、ハーブティーをそっと飲むと、はっと、おどろいた顔になる。
レオーナ「す、すごい。すばらしくおいしい・・。あんまり甘くなくて・・・・」
レオーナ、2口、3口とハーブティーを飲みつづける。
アカリ、嬉しそうな顔。
テティス、レオーナを見ながら、ごくっと、のどを鳴らす。
レオーナ「・・あら、テティス。あなたも飲む?」
レオーナ、ちらりと、テティスを見る。
テティス「・・ま、まさか。私は、けっこうです・・・・」
テティス、両手をふる。
レオーナ「んー、もういっぱい」
テティス、レオーナを、じっと見る。
レオーナ、ぺろりと舌をだす。
レオーナ「・・おかわり、いただいてよろしいでしょうか?」
レオーナ、純白のドレスから出た美しい足をそろえて、カップをさしだす。
ココ、なんだか、機嫌がよさそう。
◯ミサキのお店(昼ごろ)
セーラ「モモちゃん?」
モモが、イスから、ぴょんとおりると、セーラをちらりと見て、店の外へ歩いていく。
セーラ、しばらくモモを見ると、ホウキを手に、腰をあげる。
セーラ「・・ミサキちゃん、ちょっと、待っててくれる?」
セーラ、ミサキを見る。
ミサキ「・・あ、はい」
セーラが、モモをおって、お店の外に歩いていく。
すると、奥で、コトンと、小さな音が聞こえた。
ミサキ「・・・・?」
ミサキ、店の奥を見回すが、だれもいない。
ミサキ「気のせいかな・・・・?」
ミサキ、はっと目をとめる。
奥の棚が、すこし開いていた。
モモは、お店の裏の草原の小道を、すたすたと歩いていき、セーラは、ホウキをふりながら、ついていく。
草原のすみには、わき水でできた小川が、キラキラと、かがやいていた。
セーラ「ねー、どこいくの?」
モモが、草原のはしにならんだ木々のあいだに、入っていく。
セーラが小走りで木々のそばに行くと、うしろに、小さな泉が見えた。
セーラ、おどろいて、目をひらく。
セーラ「え、こんなとこに、泉があったんたんだ。小さいけど・・・・」
モモが、泉のそばを、前あしで、つついている。
セーラ「あれ? それ、さっきもやってたけど・・。なにかあるの?」
セーラ、泉をのぞきこむ。
泉にうつった自分の顔を見て「うーん、美魔女というのがピッタリかな」と、ひとりでつぶやく。
すると、セーラ、ぴたっとかたまる。
セーラ「うそ・・。なんか声が・・・・?」
セーラ、そっと、耳を泉に近づける。
セーラ「まさか、そんなこと・・・・」
セーラ、ひとさし指を、ゆっくりと泉につける。
すると、水面に、大きな輪っかが、ひろがっていく。
セーラ「・・わ、わわ?」
とつぜん、泉が光りだし、セーラは、泉のなかに、引きずりこまれていく。
セーラ「か、体が・・・・?」
すーっと、セーラの体が、泉のなかに消えた。
やがて、小さくゆれていた泉の水面が、おだやかになる。
モモ、しばらくすると「ニャ?」と鳴いて、首をかしげる。
◯ミサキのお店(昼ごろ)
ミサキ「・・あら、モモ?」
モモが、お店にもどってくると、イスに、ぴょんとジャンプする。
ミサキ「あれ? セーラさんは、どうしたの?」
ミサキがたずねると、モモ、イスの上に、くるまって眠りはじめる。
ミサキ「・・・・?」
ミサキ、手のひらに、ピンクのリボンをのせている。
おくの棚のとびらが、開いていた。
ミサキ「これって・・?」
ミサキ、指さきにリボンをからめると、棚を見る。
ミサキ「あそこに置いた記憶は、ないよね・・」
ミサキ、リボンを、顔に近づける。
ミサキ「・・でも、なんだか、とっても、なつかしい匂い・・・・」
ミサキが嬉しそうにしていると、イスのうえのモモの足もとまで、リボンのさきが、のびていた。
モモ「・・・・ニャオ?」
モモ、不思議そうな声を、だす。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

<5ー2に、つづく>
