魔女のハーブは、あんまり甘くない 2ー5 夢見る魔女(5)
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
◯星の世界(不思議のころ)
ミサキは、目を、さました。
ゆっくり体を起こすと、ミサキは自分が夜空 の中に、いるのに気づいた。
まわりには、たくさんの星が、またたいてい る。
ミサキ「ここは…」
ミサキ、はっと後ろを振り向くと、ミオが立 っていた。
ミサキ「…お、お姉ちゃん?」
ミオ、にこりと笑う。
ミオ「また、会えたわね。ミサキ」
ミサキ、足をのばし、夜空の中で立った。
足の裏に、ひんやりとした感覚が走った。
ミオ「わたしといっしょに、こない?」
ミオ、長い黒髪を、指先で、なでる 。
ミサキ「こないって、どこへ?」
ミオ「星の世界よ。わたしのいる世界…」
ミサキ、だまって、ミオを見つめる。
ミオ「みんないるわ。お父さんも、みんなも。今すぐ、いらっしゃいよ」
ミオ、夜空の向こうをさす。
ミサキ、口を開くが、言葉が出ない。
ミオ「大丈夫よ。怖くないわ。肉体は消えるけど、魂は、星の世界へと導かれるから」
ミサキ、胸のペンダントを見て、ほほえむ。
ミサキ「この石で…」
ミオ「ええ。その石は、わたしたちの魂をつないでくれるみたいね。わたしも、それは知らなかった」
ミサキ「魔女の石…」
ミオ「え?」
夜空のむこうに、流れ星が見えた。
ミオ「ほら、聞こえるでしょ、みんなの声が」
ミサキ、耳をすますと、優しげな声が聞こえ てくる。
ミサキ、大きく目を開ける。
ミサキ「みんなが、あそこに…?」
ミオ、小さく、ほほえむ。
ミオ「みんな、あなたに、会いたがってるわ、ね?」
ミオ、そばに歩み寄り、左手でミサキの手を そっとにぎると、右手で、ミサキのほおを、 ゆっくりとなでる。
ミサキ「……」
ミサキ、だんだんと、意識がなくなっていく のを感じる。
そのとき、遠くから、音が聞こえたきた。
ー星の世界ではない音。
なにかを、たたくような音。
ミサキ、はっと目を覚ます。
見慣れた天井の花の模様と、棚の小さなオル ゴール。
下の方から、ひびく音。
電話が鳴っているのが、聞こえた。
かりかりと音がしたので、ミサキ、部屋のお くを見ると、モモが、ドアにつめをたててい た。
ミサキ「モモ…?」
モモ、なにかを言いたそうな目で、ミサキを見 る。
ミサキ「…?」
ミサキ、ベッドから出てドアを開けると、階 段を、ゆっくりと降りる。
モモも、あとから、ついてくる。
1階の居間に出ると、電話が鳴っている。
ミサキは、そっと受話器を取る。
ミサキ「…も、もしもし」
しばらくの沈黙。
アイ「ミサキ…」
アイの小さな声が、受話器から聞こえてき た。
ミサキ、目を開く。
ミサキ「…ア、アイちゃん?」
モモ、ピンと耳をたてる。
ミサキ「アイちゃんなの? 」
アイ「ごめんね、こんな、夜遅く…」
ミサキ「ううん、別に、どうかしたの?」
アイの息をする小さな音が、受話器から聞こ えてきた。
アイ「いや、ちょっと…。あんたの声、聞きたくなっちゃってさ」
ミサキ「…」
ミサキ、受話器を、つよくにぎる。
アイ「やっぱり、一人は、さみしいよね…」
ミサキ「え…?」
とつぜん、電話が切れる。
ミサキ、受話器をにぎったまま、その場を動 かない。
モモ、ゆっくり歩み寄ると、ミサキの手を小 さくなめる。
ミサキ「うん、大丈夫だよね…」
ミサキ、モモのあたまを、そっと指でなで た。
窓の外をみると、星が、またたいていた。
ミサキ「星の世界が、あそこに…?」
○丘の上(夜のころ)
ミサキ、夜の道を、一人で歩いていた。
夜空には、星がきらめいている。
ミサキ「お姉ちゃん…」
ミサキ、小さくつぶやくと、胸のペンダント が光りだした。
すると、ペンダントから、小さな光のすじが 丘の向こうに、のびていった。
ミサキ「なにかが、あるの…?」
ミサキ、丘をのぼっていくと、だれかがいる のが、ぼんやりと見えた。
ミサキ「アイちゃん…?」
ミサキ、おどろいて走ると、丘のてっぺんの 白い岩の上に、少女がいた。
ミサキ「ちがう…?」
ポニーテールに、大きな青い目の少女。
少女、ミサキを見ると、にこりとする。
少女「こんばんは」
少女が、ミサキにいう。
ミサキ「こ、こんばんわ…」
ミサキ、小さく声をだす。
少女、岩の上で、うーんと、足をのばす。
ミサキ「ここで、なにを、してるんです…?」
少女「星と、話してたんです」
少女、夜空を見ながら、言う。
ミサキ「星と…?」
ミサキ、夜空を見ると、星がいままで見たこ とがないほどに、きらめいているのがわかっ た。
ミサキ「すごい、あんなに…」
ミサキ、星に、つぶやく。
少女「今夜は、星が、みんな元気みたいです」
ミサキ「……?」
少女「あ、もう時間、いかなきゃ」
少女、岩の上から、ぴょんと地面におりる と、ミサキに、小さく頭をさげる。
少女「じゃ、また」
ミサキ「ええ、また…」
少女、丘を、足早に降りていく。
ミサキ、小さくなっていく少女の姿を見てい ると、夜空の星が、ほとんど、なくなってい るのに気づいた。
ミサキ「……?」
とつぜん、ミサキの胸のペンダントから、光 のすじが、丘のむこうにみえる森のなかにの びていく。
ミサキ「むこうに…?」
ミサキは、森のなかへはいると、木々のあい だを進んでいく。
やがて、目の前がひらけると、大きな泉があ らわれた。
ミサキ「え、こんなとこに、泉が?」
月からさす光で、泉の表面が、ゆらゆらと光 っている。
ミサキ「きれい…」
ミサキ、泉のそばを、ゆっくりと歩く。
泉にながれてくる、ほのかな水の流れに、ミ サキは耳をすませた。
だが、しばらくすると、木々の奥から、何か 音がした。
ミサキ「…?」
ミサキ、泉からはなれ、木のうしろに身をか くす。
ミサキ「(小声で)どうして? この場所に、こんな時間にくる人なんて…」
ミサキ、木のうしろから泉を見ると、少女ら しき人影を見た。
ミサキ「あれ?」
泉のそばには、見覚えのある背の高い少女 と、そばには、小さな黒猫がいた。
少女は、泉に手を入れて、喜んでいる。
ミサキ「あの人、たしか、セーラさんといっしょにいた…」
ミサキ、セーラと、もう一人の少女がカウン ターにいた光景が、フラッシュバックする。
アカリ、泉の水をつけたゆびさきを、ココに さしだす。
ココ、小さく匂いをかぐと、小さな舌を出 して、アカリのゆびさきをなめる。
アカリ、グーサインを、ココに出す。
ミサキ、しばらく、アカリの横顔を見ている と、はっとする。
ミサキ「お姉ちゃん…」
アカリとココ、泉からはなれると、木々の 中に消えていく。
ミサキ、首をふる。
ミサキ「しっかりね、ミサキ…」
ミサキ、夜空に、つぶやく。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

<2ー6へ、つづく>
