魔女のハーブは、あんまり甘くない 5ー5 魔女と妖精の王女(5)
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◯レオーナの部屋(月が、どんどんのぼるころ)
レオーナの部屋の、まんなか。
水晶のテーブルのまわりを、アカリ、セーラ、レオーナの3人。
ココは、セーラの腕の中で、くるまっている。
アカリ「・・じゃあ、どのタイミングで、ここを出ればいいかな?」
アカリがたずねると、レオーナ、うーんと、すこし考える。
レオーナ「そ、そうですわね。やはり、みんなとはなれているときが、よろしいかと・・。それにテティスのチェックは、けっこうきびしいので・・」
セーラ「やっぱり、2人とも、本気なのね・・」
セーラ、ややあきれたように、ココの頭をなでる。
レオーナ「わたくし、ずっと、気になってたんですが・・・・」
レオーナ、セーラのほうを見る。
セーラ「・・・・?」
レオーナ「こちらの黒猫ちゃん、ココちゃんと、いうのですか?」
セーラ「・・ええ、あたしの猫だけど。かわいいでしょ?」
セーラ、眉をあげて、キラキラ顔になる。
レオーナ「ええ、あなたには、もったいないくらいの、かわいい猫ちゃん・・・・」
レオーナ、セーラとココを交互に見ながら、つぶやく。
セーラ「・・え、何かいった?」
セーラの眉が、きゅっとさがる。
アカリ「・・ま、まあ、それで、どうやって、出ればいいかな?」
アカリ、あわてて口を、はさむ。
レオーナ「・・そうですわね。やはり、そのホウキが、いいかと」
レオーナ、セーラのホウキを、見る。
セーラ「ふっふーん。やっぱり、あたしの力が不可欠ってわけか」
セーラ、ひとさし指を、鼻のしたにあてる。
レオーナ「はい。ですがそれよりも、そのココちゃんが・・・・」
セーラ、え? とゆがんだ顔。
アカリ「・・そうだ。それでね、さっき、泉のうえを歩いてて、びっくりしちゃった」
セーラ「(おどろいて)え、ココが?」
アカリ、こくりと、うなづく。
セーラ「そういえば、魔力を持った猫がいるって、ソアラおばあちゃんから、聞いたことあるけど・・・・」
セーラ、腕のなかの、ココを見る。
セーラ「まさか、モモちゃんだけじゃなくて、ココも・・・・?」
ココが、顔をあげ、ニャオと鳴く。
レオーナ「わたくし、この子は、もしかしたら・・・・」
アカリ「・・・・?」
アカリとセーラ、レオーナを見ていると、部屋のトビラが開いた。
新しいドレスを着た、テティスが立っていた。
テティス「・・あら、こんなところで、なにをなさっていたのですか?」
テティス、3人を見ていう。
レオーナ「・・いえ、なんでもないわ。なにか?」
テティス、こほんと、せきばらいをする。
テティス「レオーナさま、祈りの儀がひかえていますので、準備をしてくださいますか?」
レオーナ、あ、そうねと、口を動かす。
レオーナ「(笑顔で)ええ、もちろん、わかってるわ。すぐに行きますわ」
テティス、お願いしますと言って、戻っていく。
セーラ「・・祈りの儀って?」
レオーナ「はい・・、言うのを忘れてましたが、妖精たちみんなで、星に祈るのです」
アカリ「・・あの、射し込む光のこと?」
アカリ、地上から射し込んでいる光を、見ていう。
レオーナ「・・はい。あの星の光は、この国の生命の源。さしあげたペンダントも、もとは星の一部ですから」
アカリのペンダントが、小さく光る。
レオーナ「・・では、おふたりとも、着替えてくださいます?」
アカリ・セーラ「?」の表情。
レオーナ、おくのクローゼットから、金と銀にかがやいた、きらきらのドレスを、出してくる。
アカリとセーラ、目をまるくする。
セーラ「すごい・・、これなに?」
レオーナ、くすっと笑う。
レオーナ「・・このときのための特別なドレスですわ。わたくしも、人に見せるのは、はじめてですの」
ココも、興味ありげに、ドレスを見ている。
セーラ「じゃ、あたしは、金のドレスを・・・」
セーラが金のドレスに手をのばすと、レオーナ、さっとよける。
セーラ「え・・・・?」
レオーナ「いいえ」
レオーナ、首をふる。
セーラ「・・・・?」
レオーナ「・・こちらは、アカリさんに着てもらいますわ」
セーラ「・・え、なんで?」
セーラ、信じられないような顔。
レオーナ「こちらのサイズは、あなたには大きすぎます。ですから、銀のドレスを、着ていただきますわ」
セーラ「えー、なにそれ。ワケわかんないよー」
2人が、金のドレスをひっぱって、ぎゃいぎゃいさわぎだす。
アカリ「あー、もうなんで、こうなるのかしら。2人とも、ドレスが、ちぎれちゃうって・・」
アカリ、手で頭をおさえながら、2人を、とめにはいる。
ココ、あきれたように、「ニャ」と鳴く。
◯ミサキのお店(夕がたごろ)
青年、ティーカップをおくと、カウンターに銀貨をおく。
青年「・・ごちそうさまでした。とても、おいしかったです」
と笑顔をむける。
ミサキ、おどろいた顔。
ミサキ「え、こんなに・・。おおすぎます」
ミサキ、銀貨を見ながらいう。
青年「・・いいんです。こういうときのために持ち歩いてるんです。ふだんは、けっこうケチですから、大丈夫ですよ」
青年がいうと、ミサキ、くすっとふきだす。
ミサキ「いいんですか? じゃ、遠慮なく・・・」
ミサキ、銀貨を手に取る。
青年が、じゃと言って、トビラへ向かおうとすると、「ニャオ」と床から声。
モモが、ぴょんと、青年のそばに歩みよる。
青年、にこりと笑うと、モモの頭を、ゆっくりとなでる。
ミサキ「まあ、めずらしいです。その子、めったに、人には近づかないのに・・・・」
青年「・・へえ。ぼく、猫は大好きなんです。子どものころは、よくいっしょに寝てました」
青年は、モモから視線をあげると「あれ?」と、ミサキを見て、不思議な顔。
ミサキ「・・・・?」
青年「そのリボン、さっきのと、ちがいますか?」
青年、ミサキにたずねる。
ミサキ「え? 同じものですが・・・・」
ミサキ、髪をむすんだリボンを、指でさわる。
青年「そうですか? なんか、さっきと模様が違うような・・・・」
ミサキ「え・・・・?」
青年、小さく頭をさげると、店をでていく。
モモが、青年が見えなくなるまで、見送っていた。
ミサキ、かべの鏡を見る。
リボンが、オレンジになっていた。
ミサキ「どうして・・・・?」
窓の外に、うっすらと、月の輪郭が見え始めていた。
リボンから、小さい音がひびいた。
ミサキ「・・・・?」
◯城の外(満月がでるころ)
城の外にのびるクリスタルの道を、アカリたち3人と、ココが歩いている。
セーラ「あーもう、しかたないなあ。今回だけは、ガマンしてあげるから」
銀のドレスを着たセーラ、ぷくっとしている。
アカリ「まあまあ、次は、これ着ていいから・・・・」
金のドレスを着たアカリが、セーラをなだめる。
レオーナ「・・まあ、ぜいたくを言って。それは、この国でも、最高級のドレスですのよ」
ふーんと、セーラ、腕組みをする。
アカリ、やれやれ、と苦笑いをしていると、クリスタルの道が終わり、純白にかがやく広場にでた。
広場の入口では、ミレイユとソレイユが、笑顔をむけていた。
ミレイユ「ようこそ。もうみんな、そろってますよ」
ミレイユ、広場をゆびさす。
ソレイユ「・・さ、こちらへ」
ソレイユが、アカリを、手でうながす。
広場では、テティスが、深い青のドレスを着込んでいて、小さな妖精たちも、同じ色のドレスを着ている。
セーラ「なんか、あたしたちだけ、めだちすぎのような・・・・」
セーラ、銀のドレスにさわりながら、言う。
アカリたち、テティスと目をあわせると、広場のいちばん後ろの列に、ならぶ。
ミレイユたちは、テティスの横に、飛んでいく。
テティス「・・みんな、そろいましたね。じゃ、始めましょうか」
テティスと妖精たちは、地上からふりそそぐ光にむかって、両手を、ひろげはじめる。
レオーナ「・・ああやって、手をあげて、星の光を受けとり、感謝するのです」
レオーナが両手をひろげると、アカリとセーラも同じように、光にむかって両手をだす。
セーラ「これじゃ、みんなとはなれるどころか、いっしょだよー」
セーラが、小さな声をあげる。
レオーナ「・・いえ、逆にチャンスかもしれませんわ。うまくここを出れば、もう、だれもいないはずですから・・・・」
アカリ、こくりと、うなずく。
うしろには、だれもいないのを確かめる。
アカリ「大丈夫みたいね・・。じゃ、いいですか?」
セーラとレオーナ、アカリに目をあわせると、3人とも、そろりそろりと、うしろへさがる。
ココが、アカリの肩にぴょんとのる。
レオーナ「今です。音を立てないように走って」
レオーナが、するどく声をだす。
セーラ「け、けっこうむずかしいな、それって・・・・」
アカリ、セーラ、レオーナ、来た道にむかって、走り出す。
アカリ、振り向くが、妖精たちは、だれも気づいていない。
レオーナ「この道を渡ります、いそいで」
レオーナ、広場のわきの小さい道を指さして、その方向へ走っていき、アカリとセーラがすぐあとにつづく。
アカリたちの姿が、広場から消えていく。
やがて、広場では祈りが終わり、ざわざわと妖精たちが、しゃべりだす。
テティス「・・あら、レオーナさまは、どこです?」
最前列にいるテティスが、広場を見渡しながら声をだした。
ミレイユ「あれ? さっきまで、いたはずですが・・・・?」
きょろきょろしながら、ミレイユがこたえる。
ソレイユ「あ、レオーナさまは、またどこかで、お眠りになってるんですよ、きっとー」
ソレイユ、のんきな声をだす。
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<5ー6に、つづく>
