魔女のハーブは、あんまり甘くない 2ー4 夢見る魔女(4)
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"A cozy fantasy story of a witch, her bitter herbs, and the gentle secrets they hold."
◯街はずれの丘(お昼のころ)
丘の上で、空を見つめるミサキ。
心地よい風が吹き、さらさらと草のなびく音。
ミサキ「アイちゃん…」
ミサキ、空にむかって、つぶやく。
しばらくの間、静かに雲が流れていたが、と つぜん、空に、小さなつぶが見えた。
ミサキ「……?」
やがて、つぶは、だんだん大きくなり、空か ら、なにかが降ってきた。
ミサキ「…え?」
それは、人の形をしているのがわかると、ミ サキは、あわてて、その場から、はなれる。
ミサキ「わ、わっ…!」
大きな音とともに、丘の上に、人がおりた。
ミサキ、振り向くと、丘の上に、少女が立っ ていた。
セーラ「…こんにちは」
しばらくすると、ミサキ、ハッとする。
ミサキ「あ、あなたは、この前、カウンターにいた…」
セーラ「ええ、セーラっていうの」
セーラ、にこりと笑う。
セーラ「この前は、宿を紹介してくれて、どうもありがとう。ほんとに、助かりました」
ミサキ「(両手をひろげて)い、いえ、そんな」
ミサキ、うわずった声を、あげる。
セーラ、ホウキを、手に持つ。
セーラ「言ってた通り、宿のひげのおじいさんも、とってもいい人だったし、アカリちゃんも、よろこんでました」
セーラの言葉に、ミサキは、ほほえむ。
ミサキ「あ、それは、よかったです。それで、お友だちのかたは?」
セーラ「ああ、アカリちゃんね。あの子、今、ココといっしょに、街を散策してるわ」
セーラ、眼下にひろがる街を、ながめる。
セーラ「ふたりとも、この街が、とっても気に入ったみたいで、ぜんぶ、見て回りたいって」
ミサキ「(笑って)よかった。この街を好きになってくれて。それで、セーラさんは、今日、なにを?」
セーラ、こほんと、小さくせきばらいをする。
セーラ「…あたし、じつは、魔女なの」
ミサキ「え?」
ミサキ、ぽかんと、する。
セーラ「ふふ、いきなりそんなこと言われても困るよね。これ、見ててね」
セーラ、ホウキにまたがると、ホウキの先 が、ゆっくりと浮く。
やがて、セーラのつまさきが地面からはなれ ると、セーラの体が、空にむかって飛ぶ。
ミサキ「わ、わあ……!」
雲のじゅうたんの中で、セーラのシルエット が、右へ左へと動くのが見える。
セーラ、空を何度か旋回すると、ゆっくりと 丘に、おりてくる。
セーラ、ホウキを手に持って、ミサキを見 る。
セーラ「ふふ、どう?」
ミサキ、大きく息をはく。
ミサキ「す、すごい、魔女さんって、本当のいたんですね」
ミサキ、顔をあかくして、セーラを見る。
セーラ「へへ、そうなのよ。(真剣な顔になって)それで、その石なんだけど…」
セーラ、ミサキの胸のペンダントを、見る。
ミサキ「…?」
セーラ「それは、魔女の石ね」
ミサキ、ペンダントを指さす。
ミサキ「魔女の…、石?」
セーラ「この前、あなたのお店で見たときから気になってたんだけど。まあ、すごーく簡単に言うと、それで、魔法を使うことができるのよ」
ミサキ「魔法って…、あ」
ミサキ、夢の中の出来事が、フラッシュバッ クする。
セーラ「え、どうかした?」
ミサキ「え、ええ。もしかしたら、この石で、不思議な夢を見たことが……」
セーラ、腕を組む。
セーラ「やっぱり。なら、あなたも、魔女の力があるってことね」
ミサキ「(おどろいて)わ、わたしに? そんな…」
セーラ、ホウキを、ミサキにさしだす。
セーラ「これ、持ってみて」
ミサキ、だまって、ホウキを手にする。
セーラ「それに、乗ってみて」
ミサキ、ちょっと、おどろく。
ミサキ「…こ、こうですか?」
ミサキ、足を上げ、ホウキにまたがると、ホ ウキが、地面から、小さく浮く。
ミサキ「う、ういてる…?」
ミサキ、きょろきょろと、あたりを見回す。
セーラ、笑みを、うかべる。
セーラ「ほら、魔女の力が、あるのよ」
だが、ホウキは、すぐにふらふらと傾き、地 面に落ちる。
ミサキ「いったあ…」
ミサキ、腰に手をあてる。
セーラ「ふふ、アカリちゃんと、いい勝負ね」
セーラ、落ちたホウキを、ひろう。
セーラ「あたし、海のむこうの街で育ったんだけど、おばあちゃんが魔女でね。魔法も、おばあちゃんから教わったの」
ミサキ「おばあさまも…」
ミサキ、地面に座ったまま、つぶやく。
セーラ「でね、おばあちゃん、いつも言ってたわ。魔女は、人を助けるものだって」
セーラ、じっと、空を見る。
セーラ「魔女って聞くと、怖がる人もいるみたいだけど、ゼッタイそんなことないわ」
空の雲のうごきが、はやくなっている。
セーラ「魔女は、正しい存在だって、あたしが証明してみせる」
セーラは、えへんと、腰に手をあてミサキを 見る。
セーラ「だから、ミサキちゃんも、たくさん魔法を覚えて、あたしを手伝ってね」
セーラ、ミサキの手をにぎり、地面から起こ す。
ミサキ「は、はい。もちろん…!」
ミサキ、手で、背中についた草を、はらう。
ミサキ「(小声で)あれ、なんか、うまくのせられたような…」
セーラ、ホウキを立てると、一度せきばら い。
セーラ「それでね。ミサキちゃんのハーブティー、飲ませてもらっていいかな?」
ミサキ「はい?」
丘に吹く風が、強くなり始めていた。
○ミサキの店(夕がたごろ)
セーラ、カウンターに座り、透明なティーカ ッ プをゆっくり口にはこぶと、満足そうに微 笑む。
セーラ「んー、おいしい。なんか、すっごい元気になる」
ミサキ、小さく笑う。
ミサキ「ローズマリーに、手をくわえたんです。酸味を、ちょっと強くしました」
セーラ、感心した顔。
セーラ「じゃ、ミサキちゃんの、オリジナルってとこね」
ミサキ、指先で、頬をかく。
セーラ「それに、ミサキちゃんは、お医者さんだねって、この前、言われてたね」
ミサキ、おばさんの顔が、フラッシュバック する。
ミサキ「あ、ああ、そうですね。でも、わたしに、そんな力がるわけ…」
セーラ「それは、どうかなー」
セーラ、大きな声を、だす。
ミサキ「え…?」
セーラ「なんか、ミサキちゃん見てるとね、不思議な力を、感じるんだよねー」
セーラ、ティーカップをおく。
セーラ「じゃなかったら、空に浮かんだりは、できないんだよねー」
ミサキ「…」
モモ「ニャオ」
とつぜん、床から声がして、セーラがおどろ いて視線を下に落とす。
セーラ「お、おお。キミは?」
ミサキ、くすっと笑う。
ミサキ「わたしの猫で、モモっていいます」
モモ、セーラの足もとに、ちょこんと座る。
セーラ「へえ、賢そう。ココより若いかな?」
ミサキ「すごく、人懐っこいんですよ。でも、ボーイフレンドばっかり、つくって」
ミサキ、苦笑いをする。
セーラ「(笑って)ふふーん。キミとは、気が合いそうだね。一度、ココに会ってみない?」
セーラ、モモの頭を、指先でなでる。
モモ、気持ちよさそうに、目をつむる。
セーラ「ね、あの子の、この街の、最初のともだちになってよ」
モモ、ゆっくり目を開けると、ぴょんとカウ ンターに飛び乗り、セーラの方を向いて眠り はじめる。
セーラ「あれ、OKってことかな?」
ミサキとセーラ、目をあわせて笑う。
窓の外を見ると、夜の空が顔を見せている。
ミサキの胸のペンダントが、小さく光った。
ミサキ「…?」
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<2ー5へ、つづく>
